資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行う
入出金予定の一覧から月次の資金繰り表を組み立て、「入金が1か月遅れたら」「大型支払が重なったら」といったシナリオをAIに試算させる方法です。前提の設定と資金判断は人が行います。
1. 現場の課題
財務(出納)の仕事で最も神経を使うのが、「来月・再来月の残高が足りるか」です。売掛金の入金予定、買掛金・給与・税金・借入返済の支払予定はそれぞれ別の資料にあり、毎月それらをExcelに集めて資金繰り表を組み立て直しています。さらに経営層からは「大口の入金が遅れたらどうなる」「設備投資を前倒ししたら」といった仮定の質問が来ますが、そのたびに表を作り直すのは時間がかかり、前提の置き方も担当者次第になりがちです。
2. AIに任せること/人が判断すること
- 入出金予定の一覧を、月別・区分別(営業収入、営業支出、税金、財務収支)の資金繰り表の型に集計する
- 指定したシナリオ(入金遅延、支払の前倒し、借入の実行)を前提として反映し、月末残高の推移を再計算する
- 残高が最低必要額を下回る月と、その要因を一覧にする
- 経営層向けの説明文(前提・結果・留意点)の下書き
- 入金・支払の予定日と金額の確度(回収遅延の可能性など)
- シナリオの前提そのもの(どの仮定を置くか)
- 最低必要残高の水準と、資金調達の要否・手段
- 銀行・経営層への報告内容と承認
入出金の予定そのものと、資金調達の判断。予定はAIではなく営業・購買・人事の各部門に当たります。また、固定的な入出金(借入の返済、リース料、社会保険料など、金額と時期が決まっているもの)は、AIではなくExcelの数式で組んだほうが確実です。AIを使うのは、シナリオの置き方の相談と、前提を変えたときの影響の整理です。
3. 進め方
- 入出金予定を1枚のExcelにまとめます(列:予定日/区分/相手先/金額/確度)。実際の取引先名・金額は社外秘のため、会社が認めたAI環境で行うか、相手先を記号化し金額を丸めます(共通ルール参照)。
- 下のプロンプトで、資金繰り表の型への集計と、シナリオ試算を依頼します。Excelを添付できる環境なら添付し、できなければ表を貼り付けます。
- 結果の表を元データと突き合わせ、前提が意図どおりに反映されているかを確認します。資金判断(借入の実行など)は人が行い、経営層への報告文はAIの下書きを修正して使います。
出力のイメージ(シナリオBの抜粋)
| (千円) | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 |
|---|---|---|---|---|
| 前月繰越 | 120,000 | 98,000 | 61,000 | 44,000 |
| 営業収入 | 80,000 | 75,000 | 95,000 | 110,000 |
| 営業支出+人件費 | −92,000 | −90,000 | −94,000 | −91,000 |
| 税金・設備投資・財務収支 | −10,000 | −22,000 | −18,000 | −5,000 |
| 翌月繰越 | 98,000 | 61,000 | 44,000 ▼ | 58,000 |
※ 説明用の架空の数値です。「▼」は最低必要残高(50,000千円)を下回る月を示します。
4. 期待できる効果
入出金予定から資金繰り表への組み替えが自動になり、更新のたびに表を作り直す時間がなくなります。シナリオの前提が文章で明示されるため、経営層との議論が「前提の置き方」に集中でき、担当者による試算のばらつきも減ります。残高不足の月が早く分かるので、借入枠の確保や支払条件の交渉に時間の余裕が生まれます。
- 自社の資金繰り表の項目を、「金額と時期が決まっているもの」と「予測が必要なもの」に分ける
- 予測が必要なものについて、誰に確認すれば精度が上がるかを書き出す
- AIに、悪いほうに振れた場合の前提を3つ挙げさせ、自社で起こりうるものを選ぶ
5. 注意点
6. 難易度を上げる場合
★★★:会計ソフトの債権・債務データと銀行の入出金明細を毎週取り込み、資金繰り表と3シナリオを自動更新する処理をClaude Code/Pythonで組むと、週次の資金会議の準備がほぼなくなります。逆に★に下げるなら、Excelの表をチャットに貼り付けて「この表を月別に集計して」と頼むだけでも、組み替えの手間は省けます。