資金繰り・財務 › 資金繰り表活用案

資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行う

入出金予定の一覧から月次の資金繰り表を組み立て、「入金が1か月遅れたら」「大型支払が重なったら」といったシナリオをAIに試算させる方法です。前提の設定と資金判断は人が行います。

AI操作難易度★★☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具Excel+チャット型AI

1. 現場の課題

財務(出納)の仕事で最も神経を使うのが、「来月・再来月の残高が足りるか」です。売掛金の入金予定、買掛金・給与・税金・借入返済の支払予定はそれぞれ別の資料にあり、毎月それらをExcelに集めて資金繰り表を組み立て直しています。さらに経営層からは「大口の入金が遅れたらどうなる」「設備投資を前倒ししたら」といった仮定の質問が来ますが、そのたびに表を作り直すのは時間がかかり、前提の置き方も担当者次第になりがちです。

2. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 入出金予定の一覧を、月別・区分別(営業収入、営業支出、税金、財務収支)の資金繰り表の型に集計する
  • 指定したシナリオ(入金遅延、支払の前倒し、借入の実行)を前提として反映し、月末残高の推移を再計算する
  • 残高が最低必要額を下回る月と、その要因を一覧にする
  • 経営層向けの説明文(前提・結果・留意点)の下書き
人が判断する
  • 入金・支払の予定日と金額の確度(回収遅延の可能性など)
  • シナリオの前提そのもの(どの仮定を置くか)
  • 最低必要残高の水準と、資金調達の要否・手段
  • 銀行・経営層への報告内容と承認
ここはAIを使わない

入出金の予定そのものと、資金調達の判断。予定はAIではなく営業・購買・人事の各部門に当たります。また、固定的な入出金(借入の返済、リース料、社会保険料など、金額と時期が決まっているもの)は、AIではなくExcelの数式で組んだほうが確実です。AIを使うのは、シナリオの置き方の相談と、前提を変えたときの影響の整理です。

3. 進め方

  1. 入出金予定を1枚のExcelにまとめます(列:予定日/区分/相手先/金額/確度)。実際の取引先名・金額は社外秘のため、会社が認めたAI環境で行うか、相手先を記号化し金額を丸めます(共通ルール参照)。
  2. 下のプロンプトで、資金繰り表の型への集計と、シナリオ試算を依頼します。Excelを添付できる環境なら添付し、できなければ表を貼り付けます。
  3. 結果の表を元データと突き合わせ、前提が意図どおりに反映されているかを確認します。資金判断(借入の実行など)は人が行い、経営層への報告文はAIの下書きを修正して使います。
用語:CSV/Excelの添付——チャット型AIの多くはExcelファイルを添付して集計させることができます。ただし数式は再現されず「値」で計算されることが多いので、結果をExcelに戻すときは数式を自分で組み直すか、AIに数式つきで出力するよう頼みます。用語集
プロンプト例(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 以下は、財務担当者が月次の資金繰り表を作成し、経営会議で資金の見通しを説明するための試算です。読み手は経理財務責任者と経営層です。 【入力】 添付の「入出金予定.xlsx」(列:予定日/区分(営業収入・営業支出・人件費・税金・設備投資・借入返済・借入実行)/相手先(記号)/金額(千円)/確度(高・中・低)) 期首(当月初)の現預金残高:120,000千円 最低必要残高の目安:50,000千円 【依頼】 1. 向こう6か月の月次資金繰り表を作ってください(行:前月繰越/営業収入/営業支出/人件費/税金/設備投資/財務収支/当月収支/翌月繰越) 2. 次の3つのシナリオで翌月繰越の推移を再計算し、最低必要残高を下回る月があれば示してください A. 基本(予定どおり) B. 確度「低」の入金がすべて1か月遅れる C. Bに加えて、設備投資が1か月前倒しになる 3. 各シナリオの結果を「前提/結果/留意点」の3行で説明する文を下書きしてください 【出力の型】 ・表は千円単位、月ごとの列。シナリオごとに別表 ・計算の前提(何をどう動かしたか)を表の下に明記 【禁止事項】 ・入力にない入出金を追加しない ・資金調達の要否や手段について結論を書かない(「〜の場合、〜千円不足する」という事実の提示にとどめる)

出力のイメージ(シナリオBの抜粋)

(千円)10月11月12月1月
前月繰越120,00098,00061,00044,000
営業収入80,00075,00095,000110,000
営業支出+人件費−92,000−90,000−94,000−91,000
税金・設備投資・財務収支−10,000−22,000−18,000−5,000
翌月繰越98,00061,00044,000 ▼58,000

※ 説明用の架空の数値です。「▼」は最低必要残高(50,000千円)を下回る月を示します。

4. 期待できる効果

入出金予定から資金繰り表への組み替えが自動になり、更新のたびに表を作り直す時間がなくなります。シナリオの前提が文章で明示されるため、経営層との議論が「前提の置き方」に集中でき、担当者による試算のばらつきも減ります。残高不足の月が早く分かるので、借入枠の確保や支払条件の交渉に時間の余裕が生まれます。

明日の仕事で試すこと
  • 自社の資金繰り表の項目を、「金額と時期が決まっているもの」と「予測が必要なもの」に分ける
  • 予測が必要なものについて、誰に確認すれば精度が上がるかを書き出す
  • AIに、悪いほうに振れた場合の前提を3つ挙げさせ、自社で起こりうるものを選ぶ

5. 注意点

AIの計算結果は必ず検算します。月の集計や繰越の連鎖で計算を誤ることがあります。少なくとも「期首残高+当月収支=翌月繰越」の関係と、区分ごとの合計を元データと突き合わせてください。可能ならExcelの数式で組み直します。
入金の確度はAIには分かりません。どの入金が遅れそうか、どの支払が動かせないかは、取引先との関係や契約を知る人が判断します。確度の列を人が埋めてから渡すことが、この活用例の要です。
資金調達の判断は人が行います。借入の要否・時期・手段は会社の財務方針と銀行との関係で決まります。AIには「不足額と時期」の提示までにとどめ、結論は書かせません。
入出金予定は機密性の高い情報です。取引先名や実額を外部のAIに入れる場合は、会社の共通ルールに従い、記号化・丸めを行ってください。

6. 難易度を上げる場合

★★★:会計ソフトの債権・債務データと銀行の入出金明細を毎週取り込み、資金繰り表と3シナリオを自動更新する処理をClaude Code/Pythonで組むと、週次の資金会議の準備がほぼなくなります。逆に★に下げるなら、Excelの表をチャットに貼り付けて「この表を月別に集計して」と頼むだけでも、組み替えの手間は省けます。