各活用例ページの「注意点」は、ここに書いた3つの前提のうえに成り立っています。活用例を試す前に一度目を通してください。
経理財務の情報の多くは、社外に出れば損害につながるものです。未公表の決算数値、取引先名や契約条件、個人情報(給与・マイナンバーなど)は、会社が認めたAI環境以外に入力しないのが原則です。
実務上の目安は次の3段階です。そのまま渡してよいものは、会計基準・法令の条文、公表済みの有価証券報告書、社内で一般化した業務手順など、社外の人が見ても困らない情報。加工すれば渡せるものは、取引先名をA社・B社に置き換えた取引の概要、金額の桁を丸めた数値など。原則渡さないものは、未公表数値の生データ、個人情報、契約書の原本です。
利用するサービスについては、入力内容がAIの学習に使われない設定(オプトアウト)になっているか、法人契約か個人契約かを確認してください。法人向けプランは一般に学習に使わない契約になっていることが多いですが、契約書と管理画面で実際に確認することが大切です。
Claude CodeやPythonを使う活用例では、「自分のパソコンで動くから、データは外に出ない」と説明されることがあります。この説明は、半分しか合っていません。2つの場面を分けて考える必要があります。
| 場面 | データはどこへ行くか |
|---|---|
| AIにデータを渡して処理してもらう | 渡したデータはAIに送信される |
| AIが作ったプログラムを、AIなしで実行する | データは自分のパソコンの中だけで処理され、AIには送られない |
業務で毎月動かすのは下の段です。しかしプログラムを作る段階では、多くの場合、上の段が起きています。列名を見せた、サンプル行を貼った、エラーメッセージをそのまま貼った ― これらはすべて送信です。エラーメッセージには、取引先名や金額が含まれていることがよくあります。そこで、次の4つを守ってください。
エラーメッセージをAIに貼るときも同じです。貼る前に、取引先名と金額の部分を伏せてください。
AIは、もっともらしい文章を作ることが得意な一方で、存在しない条文番号や、実際とは違う数字を自信ありげに書くことがあります(これをハルシネーションと呼びます)。経理財務では、数字と根拠がすべてですから、AIの出力は常に「下書き」として扱い、次の3点は必ず人が原本と照合します。
このサイトの各活用例では、「AIに任せること」と「人が判断すること」を必ず分けて書いています。境界を曖昧にしないことが、実務でAIを安全に使う一番の近道です。
AIを業務に組み込むなら、「誰が・何のために・どのAIを・どう使ってよいか」を社内ルールとして決め、利用した記録を残します。特に決算・開示に関わる作業では、AIに渡した指示文(プロンプト)と得られた出力を保存し、人がどこを修正したかが追えるようにしておくと、内部統制(J-SOX)や監査法人への説明が容易になります。
AIを使ったこと自体を隠す必要はありません。むしろ「AIで下書きし、人が原本と照合し、上長が承認した」という流れを文書化しておくことが、統制として評価されます。
このページは2026年9月時点の考え方をまとめたものです。AIサービスの利用規約や政府ガイドラインは変わりやすいため、半年に一度を目安に見直します。改訂内容は更新履歴に記載します。