年次決算・開示 › 固定資産・減損活用案

減損の兆候チェックリストを作り、判定の記録を残す

「減損の兆候があるか」を毎期同じ観点で点検するためのチェックリストをAIに作らせ、資産グループごとの判定と記録は人が行う方法です。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★★☆ 使う道具チャット型AI

1. 現場の課題

減損会計は「兆候の把握 → 認識の判定 → 測定」の順で進みますが、最初の「兆候があるか」の点検が形式的になりがちです。基準が例示する兆候は4つ(営業損益・キャッシュ・フローの継続的なマイナス、使用範囲・方法の変化、経営環境の著しい悪化、市場価格の著しい下落)ですが、資産グループごとに毎期同じ観点で点検し、その記録を残している会社は多くありません。監査法人からは「兆候なしと判断した根拠」を求められ、記録がないと後から説明に苦労します。

2. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 基準・適用指針の兆候の例示を、自社の資産グループに当てはめた点検項目に書き換える
  • 点検項目ごとに「確認する資料」「判定の目安(おおむね過去2期、50%程度以上など)」を添える
  • 記録用のチェック表(資産グループ×点検項目)の雛形を作る
  • 前期の記録と比べて変化のあった項目を洗い出す
人が判断する
  • 資産のグルーピング(どの単位で判定するか)
  • 各点検項目の事実確認(営業損益の実績、遊休化の有無、市場価格の把握)
  • 兆候の有無の判定と、判定理由の記載
  • 兆候ありの場合の認識の判定・測定(割引前将来キャッシュ・フローの見積りなど)
ここはAIを使わない

兆候があるかどうかの判定そのもの。資産のグルーピングも、事業の実態を知っている人でないと決められません。AIに任せるのは、チェックすべき観点を漏れなく並べることと、確認に必要な資料を一覧にすることです。「兆候なし」という結論をAIに書かせないでください。

3. 進め方

  1. 自社の資産グループの一覧(事業・拠点などの単位)と、各グループの主な資産の種類を用意します。金額は不要です。
  2. 下のプロンプトで、資産グループの性質に合わせた点検項目とチェック表の雛形を作らせます。
  3. チェック表に沿って人が事実を確認し、兆候の有無と理由を記入します。適用指針の該当項を原文で確認し、監査法人への説明資料として保存します。
用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。金額や見積りを渡さず、「点検の観点」を整えることに使うので、機密の心配が少ない入口の活用例です。用語集
プロンプト例(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 以下は、日本基準を適用する会社の経理部が、四半期・年度決算で固定資産の減損の兆候を点検するためのチェックリストです。読み手は経理担当者と監査法人です。 【事実/入力(私が確認済みのもの。これ以外を補わないでください)】 ・資産グループは事業部単位(3事業部)と、本社ビル(共用資産) ・主な資産:事業用のサーバー等の設備、賃借オフィスの内装(建物附属設備)、ソフトウェア、本社ビル(自社所有) ・「固定資産の減損に係る会計基準」と適用指針第6号に沿って点検する 【依頼】 1. 基準が例示する4つの兆候(営業損益・CFの継続的なマイナス/使用範囲・方法の変化/経営環境の著しい悪化/市場価格の著しい下落)を、上の資産グループに当てはめた具体的な点検項目に書き換えてください 2. 点検項目ごとに「確認する資料」「判定の目安(基準・適用指針に定めがあるもの)」を添えてください 3. 資産グループ×点検項目の記録用チェック表を作ってください 【出力の型】 ・点検項目の表は、兆候の区分/点検項目/確認する資料/判定の目安 の列 ・記録用チェック表は、点検項目/確認資料/結果(あり・なし)/理由/確認者 の列 ・判定の目安の項番号は「候補」として示し、末尾に「原文要確認」と付ける 【禁止事項】 ・兆候の有無の結論を書かない ・基準にない目安(数値基準)を作らない ・項番号を確信がないまま書かない

出力のイメージ(点検項目の抜粋)

兆候の区分点検項目(事業部向け)確認する資料判定の目安(候補)
営業損益・CFの継続的なマイナス事業部の営業損益が2期連続でマイナスか。当期の見込みが明らかにプラスに転じていないか事業部別損益、当期予算・見込み「継続して」はおおむね過去2期(適用指針第12項(2)— 原文要確認)
使用範囲・方法の変化遊休化した設備、撤退・縮小を決めた拠点、用途変更したソフトウェアはないか取締役会議事録、拠点の稼働状況適用指針第13項 — 原文要確認
市場価格の著しい下落本社ビルの市場価格(路線価・鑑定等)が帳簿価額から大きく下落していないか固定資産税評価、不動産鑑定少なくとも50%程度以上の下落(適用指針第15項 — 原文要確認)

※ 説明用の架空の例です。項番号は本ページ制作時に原文で確認していますが、プロンプト上は「候補」として出させる運用を推奨します。

4. 期待できる効果

点検の観点が毎期そろい、「兆候なし」と判断した理由が記録として残るため、監査法人への説明が短くなります。担当者が変わっても同じ観点で点検できます。資産グループの性質に合わせて項目を書き換えているので、基準の文言をそのまま読むより実務で使いやすくなります。

明日の仕事で試すこと
  • 自社の資産グループを1つ選び、AIにチェック観点を一覧にさせる
  • 観点ごとに、確認に必要な資料が手元にあるかを○×で埋める
  • ×が付いた観点を、資料の入手依頼リストにする

5. 注意点

兆候の判定はAIにさせません。営業損益がマイナスか、遊休化しているかは事実の確認であり、その事実に基づく「兆候あり・なし」は会社の判断です。AIはチェック表の枠組みを作るところまでです。
資産のグルーピングは会社が決めます。グルーピングの単位(適用指針第7〜10項)が変わると判定結果が変わります。AIに資産グループを提案させることはできますが、決定と継続適用は会社の責任です。
「おおむね2期」「50%程度」は目安であって機械的な基準ではありません。当期の見込みが明らかにプラスなら該当しない、といった但し書きが適用指針にあります。目安の数字だけを切り出して判定しないでください。
兆候ありの後工程はこの活用例の範囲外です。認識の判定(割引前将来キャッシュ・フローとの比較)と測定(回収可能価額の算定)は見積りを伴うため、別の活用例として扱います。

6. 難易度を上げる場合

★★:Coworkで事業部別損益のExcelを直接読ませ、「2期連続マイナスの事業部」を自動で抽出してチェック表に転記させると、事実確認の一部が自動化できます。★★★:四半期ごとに損益データと固定資産台帳からチェック表を自動生成する処理をClaude Code/Pythonで組む案もあります。判定と理由の記載は変わらず人が行います。