債権債務・出納 › 与信・滞留管理活用案

滞留債権の年齢調べを行い、督促文案を用意する

売掛金の明細から滞留期間別の年齢調べ表を作り、滞留先ごとの督促文の下書きまでを用意する方法です。債権の区分と貸倒見積高の判断、督促の進め方は人が決めます。

AI操作難易度★★☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具Cowork+Excel

1. 現場の課題

会計ソフトから出てくる売掛金の残高一覧は、たいてい取引先ごとの合計金額です。そのため「この残高のうち、いつの売上がまだ回収できていないのか」がすぐには分かりません。一部だけ入金があった取引先では、どの請求が未回収なのかを請求書と入金明細から追うことになり、件数が増えるほど時間がかかります。督促は営業担当に任せきりになりやすく、いつ誰がどう伝えたかの記録も残りません。

決算期になると、貸倒引当金の検討で「この取引先の債権は今後どう扱うのか」を問われます。滞留の事実を期間別に示せないと、監査法人への説明が「営業に確認中です」で止まってしまいます。滞留の把握と督促と引当金の検討は本来つながった仕事ですが、材料がそろっていないために、そのつど別々に手作業でやり直しているのが実情です。

2. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 売掛金の明細から、支払期日を基準にした滞留期間別(期日前/30日以内/31〜90日/91〜180日/181日超)の年齢調べ表を作る
  • 取引先ごとに、滞留期間の長い残高と直近の入金状況を並べた一覧を作る
  • 前月の年齢調べ表と比べ、滞留区分が悪化した取引先を抽出する
  • 滞留の段階に応じた督促文の下書き(初回の確認、再度の連絡、書面での催告)を作る
人が判断する
  • 滞留の理由の確認(検収の遅れ、請求内容の誤り、支払条件の変更など、そもそも滞留でないものの切り分け)
  • 債権の区分(一般債権/貸倒懸念債権/破産更生債権等)の判断
  • 貸倒見積高の算定方法と金額
  • 督促の段階(誰が、いつ、どの手段で行うか)と、書面による催告を行うかの決定
ここはAIを使わない

年齢調べの集計そのもの。期日からの経過日数で区分する処理は毎月同じなので、Excelの数式かピボットで組めば十分です。また、取引先ごとの事情(支払サイトの取り決め、進行中の交渉、係争の有無)はAIには分かりません。督促するかどうか、いつ誰の名前で出すかは、営業と相談して決めます。AIに任せるのは、区分ごとの傾向の整理と、文案の下書きです。

3. 進め方

  1. 明細を1枚のExcelにする。列は「取引先/請求番号/請求日/支払期日/請求額/入金額/残高」。取引先名と金額は社外秘のため、会社が認めたAI環境で行うか、取引先を記号化し金額を丸めます(共通ルール参照)。
  2. 年齢調べ表と滞留先一覧を作らせる。下のプロンプトでExcelを読ませます。基準日(月末)を明示するのが要点です。
  3. 滞留の理由を人が確認する。営業部門に照会し、一覧の「理由」欄を埋めます。ここで「検収待ちであって滞留ではない」ものが切り分けられます。
  4. 督促文の下書きを作らせ、人が段階と文面を決める。書面による催告は時効の扱いに関わるため、送付の可否は人が判断します。
用語:Coworkを使うと、Excelファイルをそのまま読ませて表を作らせ、続けて同じ会話の中で督促文の下書きまで頼めます。表計算と文章作成が1か所でつながるため、この活用例と相性のよい道具です。用語集

この活用例で使うもの

ターミナルで python3 aging_table.py sample-receivables.csv --base-date 2026-09-30 と打つと、年齢調べ表が表示されます。--out 年齢調べ.csv を付けると結果をCSVに書き出せます。

プロンプト例(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 以下は、経理担当者が月次の債権管理のために売掛金の年齢調べ表を作る作業です。表の読み手は経理責任者と営業部門の責任者で、決算期には貸倒引当金の検討資料にも使います。 【事実/入力】 ・添付の「売掛金明細.xlsx」(列:取引先(記号)/請求番号/請求日/支払期日/請求額(千円)/入金額(千円)/残高(千円)) ・基準日:2026年8月31日 ・滞留期間は支払期日からの経過日数で数える ・前月分の年齢調べ表(別添) 【依頼】 1. 取引先ごとに、支払期日からの経過日数で「期日前」「30日以内」「31〜90日」「91〜180日」「181日超」に区分した年齢調べ表を作ってください 2. 「91〜180日」または「181日超」に残高がある取引先について、請求番号ごとの明細と直近の入金日を一覧にしてください 3. 前月の年齢調べ表と比べて、より長い区分に残高が移った取引先を挙げてください 4. 一覧には「滞留の理由」「対応状況」の空欄を設けてください 【出力の型】 ・年齢調べ表は千円単位、行が取引先、列が滞留区分、右端に合計 ・滞留先一覧の列:取引先/請求番号/支払期日/残高/経過日数/直近入金日/滞留の理由(空欄)/対応状況(空欄) ・合計金額が売掛金残高の総額と一致するか検算し、その結果を表の下に書く 【禁止事項】 ・債権の区分(一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等)を判定しない ・貸倒引当金の金額や必要性について書かない ・明細にない取引先・金額・日付を補わない ・滞留の理由を推測で埋めない

出力のイメージ(年齢調べ表の抜粋)

(千円)期日前30日以内31〜90日91〜180日181日超合計
A社4,20000004,200
B社1,800950420003,170
C社006001,1508802,630
合計6,0009501,0201,15088010,000

※ 説明用の架空の例です。C社のように長期の区分に残高が残っている先が、理由確認と督促の対象になります。

4. 期待できる効果

取引先ごとの合計しか見えなかった売掛金が、滞留期間別に分かれて見えるようになり、どの先にいつの請求が残っているかがひと目で分かります。担当者の時間は、明細を突き合わせる作業から「なぜ滞留しているのか」の確認に移ります。前月との比較で悪化した先が自動的に挙がるため、督促の順序を決めやすくなります。決算期には、この表がそのまま債権の区分を検討する材料になり、監査法人への説明も表を示しながら行えます。督促文の型が決まることで、担当者による書きぶりのばらつきも減ります。

明日の仕事で試すこと
  • 今月の滞留一覧から、金額上位5件を抜き出す
  • 5件それぞれについて、営業に確認すべきことをAIに挙げさせる
  • そのうち、自分では気づいていなかった確認項目に印をつける

5. 注意点

債権の区分と貸倒見積高はAIに判定させません。一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等の区分は、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて会社が判断するものです(第10号 第27項)。滞留日数が長いことと、債務の弁済に重大な問題が生じていることは同じではありません。AIには年齢調べ表の作成までを任せ、区分と貸倒見積高の算定(第28項)は人が行ってください。
集計結果は検算し、項番号は原文で照合します。滞留日数の計算や区分ごとの集計をAIが誤ることがあります(ハルシネーション)。年齢調べ表の合計が売掛金残高の総額と一致するかを必ず確かめてください。債権の区分と算定方法の項番号も、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表する現行版の原文で確認します。
督促文の下書きはそのまま送らないでください。書面による催告は、その時から6か月を経過するまで時効の完成を猶予しますが、猶予されている間の再度の催告には効力がありません(民法第150条)。督促の段階と手段は時効の管理と一体で決めるべきものなので、文面と送付の可否は人が判断し、必要に応じて法務部門や顧問弁護士に相談してください。
取引先名と債権残高は機密性の高い情報です。誰にいくら未回収があるかは、取引先との関係にも関わります。社外のAIに渡す場合は、取引先を記号化し金額を丸めるなど、会社の共通ルールに従ってください。なお、貸倒見積高の考え方については、予想信用損失モデルの導入を提案する公開草案第89号が審議中です(右欄の情報時点を参照)。

6. 難易度を上げる/下げる場合

★★★:会計ソフトから出力した売掛金明細のCSVを取り込み、年齢調べ表・滞留先一覧・前月比較までを毎月自動生成する処理をClaude Code/Pythonで組むと、月次の作成作業そのものがなくなります。取引先マスタと結び付ければ、与信限度額を超えている先の抽出も同時にできます。★に下げるなら、Excelの明細をチャット型AIに貼り付けて年齢調べ表だけを作らせる使い方でも、滞留の把握は十分に進みます。