滞留債権の年齢調べを行い、督促文案を用意する
売掛金の明細から滞留期間別の年齢調べ表を作り、滞留先ごとの督促文の下書きまでを用意する方法です。債権の区分と貸倒見積高の判断、督促の進め方は人が決めます。
1. 現場の課題
会計ソフトから出てくる売掛金の残高一覧は、たいてい取引先ごとの合計金額です。そのため「この残高のうち、いつの売上がまだ回収できていないのか」がすぐには分かりません。一部だけ入金があった取引先では、どの請求が未回収なのかを請求書と入金明細から追うことになり、件数が増えるほど時間がかかります。督促は営業担当に任せきりになりやすく、いつ誰がどう伝えたかの記録も残りません。
決算期になると、貸倒引当金の検討で「この取引先の債権は今後どう扱うのか」を問われます。滞留の事実を期間別に示せないと、監査法人への説明が「営業に確認中です」で止まってしまいます。滞留の把握と督促と引当金の検討は本来つながった仕事ですが、材料がそろっていないために、そのつど別々に手作業でやり直しているのが実情です。
2. AIに任せること/人が判断すること
- 売掛金の明細から、支払期日を基準にした滞留期間別(期日前/30日以内/31〜90日/91〜180日/181日超)の年齢調べ表を作る
- 取引先ごとに、滞留期間の長い残高と直近の入金状況を並べた一覧を作る
- 前月の年齢調べ表と比べ、滞留区分が悪化した取引先を抽出する
- 滞留の段階に応じた督促文の下書き(初回の確認、再度の連絡、書面での催告)を作る
- 滞留の理由の確認(検収の遅れ、請求内容の誤り、支払条件の変更など、そもそも滞留でないものの切り分け)
- 債権の区分(一般債権/貸倒懸念債権/破産更生債権等)の判断
- 貸倒見積高の算定方法と金額
- 督促の段階(誰が、いつ、どの手段で行うか)と、書面による催告を行うかの決定
年齢調べの集計そのもの。期日からの経過日数で区分する処理は毎月同じなので、Excelの数式かピボットで組めば十分です。また、取引先ごとの事情(支払サイトの取り決め、進行中の交渉、係争の有無)はAIには分かりません。督促するかどうか、いつ誰の名前で出すかは、営業と相談して決めます。AIに任せるのは、区分ごとの傾向の整理と、文案の下書きです。
3. 進め方
- 明細を1枚のExcelにする。列は「取引先/請求番号/請求日/支払期日/請求額/入金額/残高」。取引先名と金額は社外秘のため、会社が認めたAI環境で行うか、取引先を記号化し金額を丸めます(共通ルール参照)。
- 年齢調べ表と滞留先一覧を作らせる。下のプロンプトでExcelを読ませます。基準日(月末)を明示するのが要点です。
- 滞留の理由を人が確認する。営業部門に照会し、一覧の「理由」欄を埋めます。ここで「検収待ちであって滞留ではない」ものが切り分けられます。
- 督促文の下書きを作らせ、人が段階と文面を決める。書面による催告は時効の扱いに関わるため、送付の可否は人が判断します。
この活用例で使うもの
- CSV サンプル債権データ(架空・26件) スクリプトの動作確認用。実データの前にこれで試せます 2 KB
- PY aging_table.py(年齢調べ表の作成) Python標準機能のみ。追加インストール不要 9 KB
ターミナルで python3 aging_table.py sample-receivables.csv --base-date 2026-09-30 と打つと、年齢調べ表が表示されます。--out 年齢調べ.csv を付けると結果をCSVに書き出せます。
出力のイメージ(年齢調べ表の抜粋)
| (千円) | 期日前 | 30日以内 | 31〜90日 | 91〜180日 | 181日超 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 4,200 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4,200 |
| B社 | 1,800 | 950 | 420 | 0 | 0 | 3,170 |
| C社 | 0 | 0 | 600 | 1,150 | 880 | 2,630 |
| 合計 | 6,000 | 950 | 1,020 | 1,150 | 880 | 10,000 |
※ 説明用の架空の例です。C社のように長期の区分に残高が残っている先が、理由確認と督促の対象になります。
4. 期待できる効果
取引先ごとの合計しか見えなかった売掛金が、滞留期間別に分かれて見えるようになり、どの先にいつの請求が残っているかがひと目で分かります。担当者の時間は、明細を突き合わせる作業から「なぜ滞留しているのか」の確認に移ります。前月との比較で悪化した先が自動的に挙がるため、督促の順序を決めやすくなります。決算期には、この表がそのまま債権の区分を検討する材料になり、監査法人への説明も表を示しながら行えます。督促文の型が決まることで、担当者による書きぶりのばらつきも減ります。
- 今月の滞留一覧から、金額上位5件を抜き出す
- 5件それぞれについて、営業に確認すべきことをAIに挙げさせる
- そのうち、自分では気づいていなかった確認項目に印をつける
5. 注意点
6. 難易度を上げる/下げる場合
★★★:会計ソフトから出力した売掛金明細のCSVを取り込み、年齢調べ表・滞留先一覧・前月比較までを毎月自動生成する処理をClaude Code/Pythonで組むと、月次の作成作業そのものがなくなります。取引先マスタと結び付ければ、与信限度額を超えている先の抽出も同時にできます。★に下げるなら、Excelの明細をチャット型AIに貼り付けて年齢調べ表だけを作らせる使い方でも、滞留の把握は十分に進みます。