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経理規程と実務のずれを、規程の条文ごとに点検する

経理規程を条ごとの表にし、各条に「実際はどうしているか」を担当者が書き添えて、ずれを4種類(手段が変わっただけ/やっていない/規程にない作業/やめている)に分ける方法です。表にするのと分類はAI、「実際」を書くのと改定の決定は人。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具チャット型AI

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。経理規程は、10年前に作られました。その後、会計システムが変わり、承認がワークフローになり、経費精算がスマホになりました。規程は変わっていません。

  • 規程には「伝票に上長の押印を受ける」と書いてある。押印は3年前になくなった。
  • 監査法人から「規程と実際の運用が違う点を整理してください」と言われた。何が違うのか、全部は把握していない。
  • 規程を読み直すのが億劫。40条ある。
  • 直すにしても、どこから直すのか。全部直すと改定の手続きが大変。

やることは、規程の1条ずつに「実際はどうしているか」を書き添えること。それだけで、ずれの一覧になります。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 規程を条ごとに分ける … 40条を40行に。AIにやらせる。
(b) 各条に「実際はどうしているか」を人が書く … 「押印→ワークフローの承認」「紙の伝票→システム入力」。
(c) ずれを種類で分ける … 手段が変わっただけ(押印→承認ボタン)/規程のとおりやっていない/規程にない作業をやっている/規程の作業をやめている。
(d) 直す優先順位 … 「規程のとおりやっていない」を先に。

ここはAIを使わない

「実際はどうしているか」を書くこと。AIは規程を読めますが、貴社の実務は知りません。「実際は電子承認と推測される」のような補完は、点検の意味を無くします。実際の運用は、その作業をしている人が書きます。それから、規程をどう改定するかの決定。改定案の下書きはAIに任せてよいですが、決めるのは社内の手続き。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 規程を条ごとの表にする
  • 人が書いた「実際」と規程の文言を並べ、ずれを4種類に分ける
  • 「手段が変わっただけ」の条について、改定文案の下書き
  • 監査法人に渡す「ずれの一覧」の形に整える
人が判断する
  • 各条の「実際」
  • ずれの種類の最終判断(特に「やっていない」の認定)
  • 改定するか、運用を規程に戻すか
  • 改定の手続き

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 規程の全文

経理規程の全文(社内文書なので、社名以外はそのまま貼ってよいか社内ルールで確認)。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。規程は社名を伏せて貼り、「実際の運用」はこの段階では貼りません。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。経理規程と実際の運用のずれを整理し、監査法人に説明し、必要な箇所を改定したいと考えています。読み手は私・上司・監査法人です。 【事実/入力】 ・以下に、経理規程の全文を貼ります(40条) ・実際の運用は、この後、私が条ごとに書き足します。この段階では貼りません 【依頼】 規程を条ごとに表にしてください。列は、条番号/見出し/条文(原文のまま)/実際の運用(空欄)。 【出力の型】 表(40行)。「実際の運用」列はすべて空欄にしてください。 【禁止事項】 ・「実際の運用」列を推測で埋めないでください ・条文を要約しないでください ・規程の良し悪しを評価しないでください

往復1回目 ― AIが「実際」を埋めた

AIの初稿

「実際の運用」列に、「(現在は電子承認と推測)」「(一般的にはシステム入力)」のような記述が入っていた。

ここが問題

推測が入ると、「実際」を書く人が、それを見て「そうそう」と流してしまいます。点検が、AIの推測の追認になります。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「『実際の運用』列を完全に空欄にしてください。( )書きも不要です。」

修正版

空欄になった。

人が最後にやること

40行の「実際」を、担当者ごとに分担して書きます。自分が知らない条は、その作業の担当に聞きます。書けない条は「不明」と書きます。不明も情報です。

往復2回目 ― ずれの分類

「実際」を埋めた表を貼って、次のように頼みます。「『実際の運用』を埋めました。各条について、規程の文言と実際のずれを、次の4種類に分けてください。①手段が変わっただけ(目的は同じ) ②規程のとおりやっていない ③規程にない作業を実際にはやっている ④規程の作業を実際にはやめている。ずれがない条は『ずれなし』。判断が難しいものは『要確認』としてください。」

AIの初稿

分類は出た。ただし「押印→ワークフロー承認」が②「規程のとおりやっていない」に分類されていた。

ここが問題

文言どおりなら確かに「押印していない」。ただし目的(上長が承認する)は果たされています。これは①。②にすると、「承認していない」ように監査法人に見えます。

追加で出した指示

「文言の違いではなく、目的が果たされているかで分けてください。押印→電子承認のように、目的が同じで手段が変わったものは①です。」

修正版

①18条、②3条、③5条、④2条、ずれなし12条。

人が最後にやること

②の3条を先に見ます。この架空例では、「月次で上長が試算表を確認し署名する」が、確認はしているが記録が残っていませんでした。やっているのに記録がない、が②の典型です。記録を残す運用に戻すだけで解消します。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 「実際」が書けない条が多い … その条の作業を誰もやっていないか、誰がやっているか誰も知らない。④か②の候補です。
  • ③が多い … 規程が実務に追いついていない。③は規程に足す改定の候補です。
  • 改定の手続きが重い … ①だけまとめて1回で改定します。②は運用を戻す(改定不要)。③④は次の改定で。
  • 監査法人に「②が3条ある」と言いにくい … 言います。「把握して、運用を戻した」と言えるほうが、把握していないよりずっとよい。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 「実際の運用」列に、AIの推測が残っていないか。
  2. ②の各条について、運用を戻したか、改定するかを決めたか。
  3. 監査法人に「ずれの一覧」を渡し、説明できたか。
  4. 改定した条について、社内の手続きを経たか。

7. 注意点

規程は社内文書です。社名を伏せれば貼ってよいことが多いですが、社内ルールで確認してください。
「実際」はAIに書かせません。担当者が書きます。
文言の違いと目的の違いを分けます。目的が果たされていれば①。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 「規程と運用が違う点」が、40行の表で答えられます。
  • ②(やっていない)が3条に絞られ、運用を戻すだけで解消します。
  • 規程の改定が「全部直す」ではなく「①をまとめて1回」で済みます。
  • 表が毎年の点検の土台になり、次回は差分だけ見ればよくなります。
明日の仕事で試すこと
  • 経理規程を開き、条ごとの表にさせる(「実際」は空欄)
  • 自分の担当する作業の条だけ、「実際」を書く
  • 「押印」「紙」「持参」の語がある条に印をつける(①の候補)

応用 ― 難易度を上げる場合

「実際の運用」を書く作業は、月次の作業を「誰が・いつ・何を見て・何を出すか」で棚卸しするの棚卸し表があれば、そこから転記できます。規程と棚卸し表を突き合わせると、③(規程にない作業)が自動的に見えます。