経費の科目に迷ったとき、自社の過去仕訳から候補を出す
科目に迷った取引について、自社の過去2年の仕訳から「摘要・相手が似た仕訳はどの科目か」をAIに探させ、科目ごとの件数・期間・起票者を並べる方法です。AIの一般論は使わず、科目の確定は上司と、決めたら科目マスタの説明欄に1行足します。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経費精算や請求書の仕訳で、月に何件か、科目に迷います。
- 「オンライン会議ツールの年間利用料」は、通信費か、支払手数料か、ソフトウェア利用料か。去年の自分は何にしたか、覚えていない。
- 同じ取引を、担当者Aは「消耗品費」、担当者Bは「事務用品費」にしている。どちらも間違いではないが、揃っていない。
- AIに聞くと「一般的には通信費です」と答える。ただ、うちの会社では違う科目を使っていた。一般論は、自社の使い方と合わない。
- 科目マスタの説明欄は、10年前に書かれたまま。「オンライン会議ツール」なんて言葉は載っていない。
科目の根拠は、一般論ではなく、自社の過去の処理。やりたいのは、迷ったとき、自社の過去仕訳から「似た取引で使った科目」を候補として出すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 過去1〜2年の仕訳から、科目・摘要・相手・金額を抜き出す … 会計システムからExcelに出す。
(b) 迷った取引の「摘要」と「相手」に似た過去仕訳を、AIに探させる … 科目ごとに件数を出す。
(c) 候補が複数あれば、「いつから」「誰が」その科目にしているかを見る … 途中で変わっていれば、変わった理由がある。
(d) 決めたら、科目マスタの説明欄に「この取引はこの科目」を1行足す … 次に迷わない。
科目の確定。AIに「この取引の科目は何ですか」と聞くと、一般論で答えます。この活用例では、AIには「自社の過去仕訳のうち、似たものはどの科目か」を探させるだけです。過去仕訳が2つの科目に割れているとき、どちらに揃えるかは上司と決めます。それから、新しい種類の取引(過去仕訳に似たものがない)の科目は、科目マスタの説明と、必要なら税理士に確認して決める。AIの「一般的には」で決めない。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 迷った取引の摘要・相手に似た過去仕訳を探し、科目ごとに件数・期間・担当を並べる
- 科目が割れている場合、「いつから割れたか」を示す
- 決めた結果を、科目マスタの説明欄に足す1行の下書き
- 科目の確定(割れている場合は上司と)
- 新しい種類の取引の科目(科目マスタ・税理士と)
- 科目マスタの説明欄の更新
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 過去2年の経費系の仕訳
過去2年の仕訳のうち、経費系の科目の行(日付/科目/摘要/相手記号/金額/起票者)。相手名は記号、金額は千円単位。迷っている取引の摘要と相手記号。
往復1回目 ― AIが一般論で答えた
表の前に「一般的に、オンライン会議ツールの利用料は通信費または支払手数料として処理されます」とあり、表は「通信費:0件/支払手数料:0件/ソフトウェア利用料:3件」。
過去仕訳では「ソフトウェア利用料」3件しかないのに、0件の科目が一般論で並んでいます。これを見た担当者は「通信費でもいいのか」と思います。自社の過去は、3件ともソフトウェア利用料。禁止事項に書いていてもこうなります。
「一般論の文を削除し、過去仕訳に1件以上ある科目だけを表にしてください。」
「ソフトウェア利用料:3件/2024-05〜2025-05/起票者A/摘要例:Web会議ツール月額、チャットツール年額」。
3件の仕訳を見て、同じ性質の取引と確かめ、科目マスタの説明欄に「オンライン会議・チャット等のツール利用料 → ソフトウェア利用料」と1行足します。次の担当者は迷いません。
往復2回目 ― 科目が割れていた
別の取引で、同じように頼みます。「摘要『プリンタ用トナー』、相手 M社。同じように探してください。」
「消耗品費:14件/2024-04〜2025-03/起票者A・B」「事務用品費:9件/2025-04〜2026-08/起票者C」。
問題ではなく、これがこの往復の価値です。2025年4月から、起票者Cが事務用品費に変えています。担当が変わった時点で、科目が変わった。どちらも間違いではありませんが、同じ取引が2科目に割れていると、変動分析で「消耗品費が減って事務用品費が増えた」という意味のない差が出ます。追加の指示は出しません。
上司と「トナーはどちらか」を決めます。この架空例では消耗品費に揃え、科目マスタに1行足しました。過去分を直すかどうかは、金額と決算への影響を見て上司と決めます(この活用例では扱いません)。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 似た過去仕訳が「該当なし」 … 新しい種類の取引です。科目マスタの説明欄を読み、なければ上司・税理士に聞きます。決めたら1行足します。
- 摘要の書き方がばらばらで、似ているものが見つからない … 相手記号で探します。同じ相手からの請求は、同じ性質の取引であることが多い。
- 過去仕訳が多すぎて貼れない … 科目を経費系に絞ります。それでも多ければ、相手記号で先に絞ってから貼ります。
- AIがまた一般論を書く … 削除。「過去仕訳にある科目だけ」を毎回入れます。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 候補の表に、過去仕訳に0件の科目が混ざっていないか。
- 決めた科目を、科目マスタの説明欄に1行足したか。
- 科目が割れていた取引について、上司とどちらかに決めたか。
- 翌月、同じ取引で別の担当者が迷わなかったか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「去年の自分は何にしたか」を、5分で確かめられます。
- 担当者ごとの科目のばらつきが、見つかって揃います。
- 科目マスタの説明欄が、迷った取引の分だけ育ちます。
- 変動分析で、科目の付け替えによる意味のない差が減ります。
- 今月、科目に迷った取引を1つ思い出す
- 会計システムで、同じ相手の過去仕訳を検索し、科目を見る
- 科目マスタの説明欄に、その取引を1行足す
応用 ― 難易度を上げる場合
請求書から仕訳案を作る全体の流れは請求書を読み取って仕訳案を作る(汎用例)、消費税の区分は仕訳データの消費税区分を一括チェックするへ。「決めた理由」を残す型は今月やった判断を、来月の自分が読めるメモにする。件数が多ければ、似た仕訳の検索はPythonにさせてよいですが、確定は変わらず人。