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今月やった判断を、来月の自分が読めるメモにする

月次のあいだに起きた小さな判断を、月末10分で「事実/判断/理由/次回」の4項目に整える方法です。頭の中のメモを型に整えるのはAIに任せ、理由を自分の言葉で書くことと「次回」をどうするかは人が行います。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経理は2名。月次のあいだに、こういう「小さな判断」がいくつも起きます。

  • 営業から「この案件の売上、今月に入れていいですか」と聞かれ、上司に確認して来月に回した。
  • 取引先から届いた請求書の日付が先月で、金額も大きかったので、先月分として未払計上した。
  • 交際費の領収書に参加者の名前がなく、営業に聞いて5名と確認して処理した。
  • システムの取込でエラーになった3行を、手で直して取り込んだ。

どれも、その場では正しく処理しました。問題は3か月後です。

  • 「なぜ来月に回したんだっけ」が思い出せない。上司に確認したことは覚えているが、上司が何と言ったかは覚えていない。
  • 監査法人に「この未払、根拠は」と聞かれて、メールを探す。30分かかる。
  • 同僚が同じ案件で逆の処理をしていた。判断が共有されていなかった。
  • 手で直した3行が、翌月も同じエラーを出した。直したことを誰も覚えていない。

判断は毎月起きているのに、判断の記録だけが残っていません。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

判断を残すには、4つの項目があればよいです。

事実 … 何が起きたか(営業から質問/請求書の日付が先月)
判断 … どうしたか(来月に回した/未払計上した)
理由 … なぜそうしたか(上司が「検収書がまだ」と言った/金額が大きく期間帰属を優先)
次回 … 次に同じことが起きたらどうするか(検収書を先に確認する)

この4つを、月末に10分で書きます。書くのは人。AIは、頭の中にあるものを4項目の形に整える係です。

ここはAIを使わない

理由を書くこと。「なぜ来月に回したか」は、あなたと上司の会話の中にあります。AIは知りません。AIに理由を書かせると、「会計上の適切な期間帰属を考慮し」のような、もっともらしいが実際には誰も言っていない理由が出てきます。3か月後にそれを読んだ自分が、本当の理由だと思い込むのがいちばん危ない。理由は、自分の言葉で、会話に近い形で書きます。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 頭の中の出来事を書き殴ったメモを、「事実/判断/理由/次回」の4項目に整理する
  • 4項目のうち、空いているものを指摘する(特に「理由」と「次回」が空きやすい)
  • 1か月分の判断メモを、種類ごとに並べ直す
  • 3か月分がたまったら、繰り返し起きている判断を抜き出す
人が判断する
  • 判断そのもの
  • 理由を自分の言葉で書く
  • 「次回」をどうするか
  • メモを誰と共有するか(同僚・上司)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 書き殴りでよい

月末に、今月起きた判断を思い出して、順不同で書きます。文章でなくてよいです。

・A案件の売上、営業が今月と言ったけど上司に聞いて来月にした。検収書がまだって
・B社の請求書、日付8月で金額大きいから8月の未払にした
・交際費、名前なかったから営業に聞いた。5名
・取込エラー3行、手で直した。全角スペースが入ってた

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。AIに貼るときは、案件名・取引先・人名を記号に置き換えます。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。今月の業務で行った判断を、3か月後の自分と同僚が読んでわかる形で残したいと考えています。読み手は私と、経理のもう1名です。 【事実/入力】 ・以下に、今月起きた判断を思い出して書いたメモを貼ります(順不同、文章になっていません) ・書いていないことは、起きていないものとして扱ってください 【依頼】 このメモを、判断ごとに「事実/判断/理由/次回」の4項目に整理してください。私が書いていない項目は、空欄のままにしてください。 【出力の型】 判断ごとに4行: 事実: 判断: 理由: 次回: 空欄には「(未記入)」と書いてください。 【禁止事項】 ・理由を補わないでください。私が書いていない理由は「(未記入)」です ・会計基準や一般的な考え方で理由を埋めないでください ・判断が正しいかどうかの評価は書かないでください

往復1回目 ― AIが理由を美化した

AIの初稿

A案件の「理由」が「収益認識の観点から、検収の完了をもって売上計上するのが適切であるため」となっていた。

ここが問題

メモに書いたのは「上司に聞いて来月にした。検収書がまだって」。それが「収益認識の観点から」に化けています。もっともらしいが、誰もそう言っていません。3か月後にこれを読むと、「上司と相談した」という事実が消えて、自分が基準に照らして判断したことになってしまいます。

追加で出した指示

「理由は、私のメモの言葉をそのまま使ってください。言い換えないでください。メモに『上司に聞いて』とあれば、理由は『上司に確認。検収書が未着のため』のように、誰に聞いたかを残してください。」

修正版

「理由:上司に確認。検収書が未着のため来月に回すとの指示」になった。

人が最後にやること

4つの判断の「次回」を自分で埋めます。A案件なら「営業から売上の相談が来たら、まず検収書の有無を聞く」。「次回」を書いた瞬間に、メモが手順に変わります。

往復2回目 ― 「次回」が空いている

AIの初稿

4件のうち3件の「次回」が「(未記入)」だった。指示どおりなので、これは正しい。

ここが問題

問題ではなく、これがこの往復の価値です。空欄が「自分がまだ考えていないこと」を見せてくれます。取込エラーの「次回」を考えると、「取込前に全角スペースを置換する」という1行が出てきました。来月のエラーが1つ減ります。追加の指示は出しません。空欄は人が埋めます。

人が最後にやること

埋めた「次回」のうち、手順として定着させるものを、部内の手順書かチェックリストに1行足します。

往復3回目 ― 3か月分を束ねる

3か月たったら、3か月分の判断メモを貼って、次のように頼みます。「3か月分の判断メモを貼ります。同じ種類の判断が繰り返し起きているものを抜き出し、『毎月起きている判断』として一覧にしてください。判断の中身は変えないでください。」

AIが出した一覧

毎月起きている判断:①営業からの売上計上時期の相談(3か月で5件。すべて検収書の有無で判断)②請求書の日付と到着月のずれ(3か月で4件)③取込エラーの手修正(毎月)

人が最後にやること

毎月起きている判断は、判断ではなく手順にします。①なら「売上計上時期は検収書の日付」を営業に先に伝える。③なら取込前の置換を手順に入れる。判断が減ると、来月のメモが短くなります。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 月末に思い出せない … その場でメモする癖をつけます。1行でよい。「A案件、来月に。上司」だけでも、月末に4項目にできます。
  • 理由が「なんとなく」しかない … それも書きます。「なんとなく(未記入)」は、3か月後に「ここは根拠がなかった」と気づけます。書かないより、書いた方が安全です。
  • 判断が多すぎて10分で終わらない … 金額の大きいものと、他部署が絡むものだけ書きます。全部書こうとして書かないより、3つ書く。
  • 同僚が書かない … 自分の分だけ書きます。共有フォルダに置いておくと、同僚が「あの件どうした?」と聞いてきたときに、見せるだけで済みます。それを見て書き始める人もいます。
  • AIが「判断は適切です」と言う … 無視します。判断の当否は、上司と監査法人が見ます。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 4項目のうち「理由」に、自分のメモにない言葉が入っていないか。入っていれば、AIが足しています。
  2. 「次回」が埋まっているか。空欄のまま3か月たてば、同じ判断をまた一からします。
  3. 3か月後に、メモを見て30秒で経緯を説明できるか。監査法人に聞かれたときが、本当の検証です。
  4. 毎月起きている判断が、手順に変わって減ったか。

7. 注意点

判断メモには案件名・取引先・金額・人名が入ります。AIに貼るときは記号に置き換えます。手元のメモは実名でよい(社内の資料なので)。どこまで渡してよいかは社内ルールで確認してください。
AIが整理したメモは「整理」であって「記録の正本」ではありません。正本は自分の言葉で書いたもの。AIの言い換えを採用しないでください。
判断の当否をこのメモで決めません。メモは経緯の記録。判断そのものは上司と監査法人が見ます。
この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 「なぜそうしたんだっけ」が、メモを開く30秒に変わります。
  • 監査法人への説明が、メールを探す30分から、メモを見せる1分になります。
  • 同僚と判断が揃います。逆の処理をしていた、が減ります。
  • 毎月起きている判断が手順に変わり、判断そのものが減ります。これがいちばん大きい。
明日の仕事で試すこと
  • 今週やった判断を、思い出せるだけ1行ずつ書く(3つでよい)
  • 4項目に整理させ、「理由」に自分の言葉以外が入っていないか見る
  • 「次回」を1つだけ埋める

応用 ― 難易度を上げる場合

判断メモが半年たまると、それがその業務の「判断基準集」になります。新しく入った人に渡す資料として、手順書より役に立つことが多いです。毎月の「前回と同じ」作業の記録は前回と同じようにやったけど、今回も同じでいいのか不安なときの3行メモと組み合わせると、作業の記録と判断の記録が揃います。