親子間の差異を「期ズレ・計上漏れ・金額違い・相手違い」に分けて、どちらが直すかを決める
親子間の債権債務・取引高の照合で出た差異を、明細を突き合わせて「期ズレ/片方の計上漏れ/金額違い/相手先の取り違え」の4種類に機械的に分け、種類ごとに「親と子のどちらが何を直すか」の表にする方法です。分類の候補はAI、確定と修正は両社の経理、連結での扱いは監査法人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。子会社2社との債権債務・取引高を四半期ごとに照合しています。差異の一覧までは出ます(照合の自動化)。問題はその後です。
- 差異の一覧を子会社に送ると、「そちらが違う」「いえそちらが」で1週間。どちらが直すかが決まらない。
- 差異の種類が混ざっている。期ズレは翌期に消えるが、計上漏れは直さないと消えない。同じ扱いにしている。
- 相手先の取り違え(子会社Aへの売上を子会社Bに計上)が、差異として2社分に出て、原因が見えにくい。
- 連結の締めの直前に、まだ差異が残っている。監査法人に「未達として扱う」と言うが、本当に未達かは確かめていない。
連結でどう扱うかは監査法人の話。この記事でやるのは、差異を4種類に分けて、種類ごとに「どちらが何を直すか」を決めることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 差異の一覧に、親と子の明細(請求書番号・日付・金額)を付ける。
(b) 4種類に分ける … 期ズレ(親の計上月と子の計上月が違うだけで、翌月には一致)/計上漏れ(片方にしかない)/金額違い(両方にあるが金額が違う)/相手違い(片方が別の子会社に計上)。AI(候補)。
(c) 種類ごとに「直す側」と「直し方」を決める … 期ズレ→翌期に消えることを確認、直さない/計上漏れ→漏れた側が計上/金額違い→請求書と検収で正しい方を確定/相手違い→間違えた側が振替。人が決めるが、型は先に決めておく。
(d) 表を両社で共有し、期限をつける。
分類の確定と、どちらが直すかの決定。AIの分類は候補で、「片方にしかない」が計上漏れなのか、相手先の取り違えなのかは、両社の明細を見た人が決めます。それから、「期ズレ」と決めるには、翌期に本当に消えることの確認が要ります。「たぶん期ズレ」で未達扱いにしない。連結での扱いは監査法人と。AIに任せるのは、明細を突き合わせて4種類の候補を出すまで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 差異ごとに親と子の明細を並べ、4種類の候補を付ける
- 「相手違い」の候補として、別の子会社の明細に同じ金額・同じ日付があるものを出す
- 種類ごとに「直す側/直し方/期限」の表の型に整える
- 前期の差異のうち、今期も残っているものを出す
- 分類の確定(両社の明細・請求書で)
- 直す側と直し方(両社の経理で合意)
- 期ズレが翌期に消えることの確認
- 連結での扱い(監査法人と)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 差異一覧と両社の明細
照合で出た差異の一覧と、親会社・各子会社の親子間取引の明細(請求書番号/日付/相手記号/金額)。子会社は記号、金額は千円単位。
往復1回目 ― AIが「期ズレ」を決めすぎた
①で差異12件のうち9件が「期ズレ」になっていた。根拠の欄は「日付が月末近くのため」。
「月末近く」は期ズレの根拠になりません。期ズレなら、翌月の相手の明細に同じ請求書番号があるはず。それを確かめずに期ズレにすると、計上漏れが未達として放置されます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『期ズレ』は、翌月の明細に同じ請求書番号がある場合だけにしてください。翌月の明細は貼ります。確かめられないものは『候補:不明』にしてください。」
期ズレ4件、計上漏れ3件、金額違い2件、相手違い1件、不明2件。
不明2件を子会社と明細で確かめます。この架空例では、1件が計上漏れ、1件が相手違いでした。期ズレ4件は「翌月に消える」を確認済みなので、直さない。残り8件を③の表で、直す側と期限を子会社と決めます。
往復2回目 ― 「相手違い」の連鎖
②で「差異No.7(子会社Aに対する売掛 +800)」に、子会社Bの明細の「親会社からの仕入 800、同じ日付」が示された。
問題ではなく、これがこの往復の価値です。親会社が子会社Bへの売上を子会社Aに計上していた。子会社Aの差異とBの差異が、1つの原因で説明できます。追加の指示は出しません。
親会社が振替の仕訳を入れます。「相手違い」は、直す側が明確(間違えた側)で、1件直すと2社の差異が消えます。③の表に「直す側:親会社/直し方:振替/期限:今週」と書きます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 子会社の明細に請求書番号がない … 日付と金額で突き合わせます。子会社に「親会社の請求書番号を摘要に入れる」を頼みます。次の四半期から期ズレの確認が速くなります。
- 「金額違い」でどちらが正しいか揉める … 請求書と検収の記録で確定します。値引きや相殺の合意があれば、その記録。経理同士で決められなければ、両社の上司と。
- 差異が多すぎる … 金額の大きい順に。小さい差異は「まとめて次回」と両社で決めて、記録に残します。
- AIがまた期ズレを決めすぎる … 「翌月の明細で確かめられるものだけ」を毎回入れます。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 「期ズレ」の全件が、翌月の明細で確かめられているか。
- ③の表の全件に、直す側と期限が入り、両社で合意されているか。
- 前期の差異のうち、今期も残っているものが0か。
- 連結の締めの直前に、「たぶん期ズレ」で未達扱いにした差異が0か。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「そちらが違う」の1週間が、4種類の表で「直す側」が決まる1日になります。
- 計上漏れが未達扱いで放置されなくなります。
- 相手違いが1件直すだけで2社分消えることが、見えるようになります。
- 前期の差異が今期に残らなくなり、連結の締めの直前に差異を抱えなくなります。
- 直近の親子間の差異一覧から、差異を3件選ぶ
- それぞれ、翌月の相手側の明細に同じものがあるかを見る。あれば期ズレ、なければ別の種類
- 期ズレでない1件について、「どちらが直すか」を自分で書いてみる
応用 ― 難易度を上げる場合
差異の一覧を出すところまではグループ間債権債務・取引高の照合を自動化する、パッケージの差分は子会社から来た連結パッケージの「前回と違うところ」だけ確認するへ。貸付の残高の差は子会社への貸付の契約・利息・残高を、子会社側の記録と突き合わせる一覧にする。