請求書の条件が契約書・発注書と違う箇所を、支払前に洗い出す
外注先の請求書を支払う前に、契約書・発注書・請求書の「単価/数量・工数/期間/金額の計算/支払条件/消費税の扱い/振込先」を並べ、違う箇所だけをAIに出させる方法です。違いの理由と正誤は発注者と相手に聞き、契約の解釈は法務と。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。外注先からの請求書が届きます。発注者(事業部)の承認印はあります。経理は金額と支払日を見て、支払一覧に載せます。
- 単価が、契約書の単価と違っていた。気づいたのは半年後、契約更新のとき。差額を6か月分、相手に返してもらう交渉になった。
- 請求書の「作業期間」が、発注書の期間より1か月長い。延長の合意があったのか、間違いか。
- 支払条件が「月末締め翌月末払い」のはずが、請求書には「翌月15日払い」と書いてある。どちらが正しいのか。
- 発注者は「内容は合っている」と言うが、契約書を見て言っているわけではない。
やりたいのは、支払前に、請求書と契約書・発注書の「条件」を並べて、違う箇所だけを出すこと。違いの理由を決めるのは、発注者と相手です。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 比べる項目を決める … 単価/数量・工数/期間/金額の計算/支払条件/消費税の扱い/振込先。
(b) 契約書・発注書から、(a)の項目を原文のまま抜き出す … AIに引用させ、人が原文と照合。
(c) 請求書から同じ項目を抜き出す。
(d) 並べて、違う箇所を出す … AIにやらせる。
(e) 違う箇所について、発注者に「合意があったか」を聞く … 人。
違いの理由と、どちらが正しいかの判断。請求書の単価が契約書より高いとき、AIは「請求書の誤りと思われます」と書きますが、単価改定の合意が口頭やメールであった可能性は、AIには分かりません。理由は発注者と相手に聞く。それから、契約の条項の解釈(「作業期間の延長は書面による」が守られているか等)は法務と。AIに任せるのは、並べて、違う箇所を出すまで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 契約書・発注書から、比べる項目を原文のまま抜き出す
- 請求書から同じ項目を抜き出す
- 並べて、違う箇所と違い方(数字の差、文言の差)を出す
- 発注者への確認文の下書き
- 引用が原文と一致しているか
- 違いの理由(発注者・相手に確認)
- 支払うか、止めるか、修正請求書を求めるか
- 契約書の改定が必要か(法務と)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 契約書の該当条項・発注書・請求書
契約書の該当条項(単価・期間・支払条件・消費税)、発注書、請求書。相手名は記号に。金額はそのまま(比較に必要)。社内ルールで確認します。
往復1回目 ― AIが「請求書の誤り」と書いた
単価が不一致(契約書 8,000円/請求書 8,500円)で、「違いの内容:請求書の単価が500円高い。契約書の単価が優先されるため、請求書の誤りと考えられます」。
「契約書が優先」も「請求書の誤り」も、AIの判断です。発注者に聞くと、4月から単価改定の合意がメールでありました。ただし契約書は改定されていませんでした。請求書は正しく、契約書が古かった。
「『違いの内容』は数字の差だけにし、どちらが正しいか、なぜ違うかを書かないでください。」
「単価:契約書 8,000/請求書 8,500/不一致/差 +500」。
発注者に聞きます。合意があるなら、契約書(か覚書)を改定するよう法務に相談します。合意がないなら、相手に確認します。どちらにしても、支払前に分かりました。
往復2回目 ― 期間の不一致
期間が不一致(発注書 4月〜9月/請求書の作業期間 4月〜10月)。「違いの内容:請求書の期間が1か月長い」。
問題ではありません。これが正しい出力です。1か月分の作業が、発注の範囲外か、延長の合意があったのか。AIには分からないし、書いていない。追加の指示は出しません。
発注者に聞きます。この架空例では、延長は口頭で合意していたが、発注書が出ていませんでした。発注書を追加で出してから、支払います。「口頭で合意」を、書面にする機会になりました。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 契約書が見つからない … 法務か発注者に聞きます。契約書なしで請求だけ来ている取引は、それ自体が発注者と相談すべきことです。
- 発注書がない取引 … 契約書と請求書の2つで比べます。発注書を出す運用にするかは、事業部と。
- 請求書ごとに毎回やるのは重い … 初回と、条件が変わりそうな時期(契約更新、期の切り替え)だけ。同じ相手の2回目以降は、前回の請求書と今回を比べれば足ります(支払前の確認の型)。
- AIがまた理由を書く … 削除。「数字の差だけ」を毎回入れます。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 表の「違いの内容」に、理由や正誤の判断が残っていないか。
- 契約書の引用が原文と一致しているか(人が照合したか)。
- 不一致の各項目について、発注者・相手に確認した記録があるか。
- 契約書と実際の条件のずれが、改定(覚書・追加発注書)で解消されたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 単価のずれが、半年後の更新時ではなく、初回の請求で見つかります。
- 「口頭で合意」が、支払前に発注書・覚書になります。
- 発注者の「内容は合っている」が、契約書を見た上での「合っている」になります。
- 契約書と実際の条件のずれが、法務に早く伝わります。
- 今月届いた外注先の請求書を1通選ぶ
- その相手の契約書から、単価と支払条件の条項だけを見つける
- 請求書と並べて、違う箇所があるかだけ見る
応用 ― 難易度を上げる場合
支払前の確認(二重払い・振込先変更)は支払う前に、二重払いと振込先の変更を自分で止めると同じ支払一覧で。契約書の読み方の型は、契約書から収益認識の論点を洗い出す(売上側)と共通で、この活用例はその仕入側です。