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支払う前に、二重払いと振込先の変更を自分で止める

今月の支払一覧を過去3か月の実績と突き合わせ、「二重払いの候補」「振込先が変わった相手」「金額が大きく違う相手」をAIに抜き出させる方法です。振込先変更の真偽は、登録済みの電話番号への電話でしか確かめません。承認は人。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。月2回の支払日。前日に支払一覧(約150件)を作り、上司の承認を得て、翌日に振込みます。承認はあります。ただ、150件を上司が1件ずつ見ているわけではありません。

  • 去年、同じ請求書を2回払った。請求書がメールと郵送の両方で届き、別々に登録された。相手が返金してくれたが、気づいたのは相手からの連絡。
  • 取引先から「振込先が変わりました」というメールが来る。本物か偽物か、見ただけではわからない。
  • 前回と金額が違う相手がいる。単価が変わったのか、数量が変わったのか、間違いか。
  • 支払一覧を眺めても、目が滑る。150件のどこを見ればいいか。

上司の承認は最後の砦ですが、その前に自分で止められるものは、自分で止めたい。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

今月の支払一覧を、過去3か月の支払実績と比べます。見るのは3種類だけ。

(a) 同じ請求書番号、または同じ相手・同じ金額・近い日付 … 二重払いの候補
(b) 振込先口座が、前回と違う相手 … 口座変更の候補(本物か偽物かは、ここでは決めない)
(c) 同じ相手で、金額が前回と大きく違う … 確認の候補

AIには、この3種類を機械的に抜き出させます。抜き出したものをどうするかは、人。

ここはAIを使わない

振込先の変更が本物かどうかの判断。変更のメールが本物に見えても、偽物は本物に見えるように作られています。確認の方法は1つ、以前から知っている電話番号に、こちらから電話すること。メールへの返信でも、メールに書かれた番号への電話でもなく。AIにメールの真偽を聞かない。それから、二重払いかどうかの最終判断も、請求書の現物を2枚並べて人が見ます。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 今月の支払一覧と過去3か月の実績を突き合わせ、(a)(b)(c)を抜き出す
  • (c)の金額差を大きい順に並べる
  • 相手への確認文(電話で聞く内容のメモ)の下書き
人が判断する
  • (a)の請求書現物の確認
  • (b)の電話確認(以前から知っている番号に)
  • (c)の内容確認(発注者に聞く)
  • 支払の実行と承認

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 口座は記号にする

今月の支払一覧(相手記号/請求書番号/金額/振込先口座の記号/支払予定日)と、過去3か月の支払実績(同じ列)。口座番号そのものは貼らず、口座ごとに記号を振ります(同じ口座なら同じ記号)。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。口座番号は貼らず記号にします。相手と金額も用語集
社内ルールで確認します。
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当で、支払一覧の承認を上司に回す前に、自分で確認すべき点を絞りたいと考えています。読み手は私自身です。 【事実/入力】 ・以下に、今月の支払一覧(相手記号/請求書番号/金額/口座記号/支払予定日)を貼ります(約150行) ・以下に、過去3か月の支払実績(同じ列)を貼ります ・口座記号は、同じ口座なら同じ記号です 【依頼】 次の3種類を抜き出してください。 A:請求書番号が過去3か月の実績と同じ、または相手・金額が同じで日付が近い B:今月の口座記号が、その相手の過去の口座記号と違う C:同じ相手で、金額が過去の平均と大きく違う(差の大きい順に10件) 【出力の型】 種類/相手記号/今月の行/該当する過去の行/確認する内容(1行) 【禁止事項】 ・「問題なし」「正常」という評価を書かないでください ・Bについて、変更が正当かどうかの判断を書かないでください ・私が貼っていない行を作らないでください

往復1回目 ― AIが「問題なし」と総括した

AIの初稿

抜き出しは正確だった(A:2件、B:1件、C:10件)。ただし冒頭に「全体として、支払一覧に大きな異常は見られません」とあった。

ここが問題

150件を見て「異常なし」と言えるのは、150件の中身を知っている人だけです。AIは番号と金額しか見ていません。この一文があると、上司が承認画面で安心してしまいます。

追加で出した指示

「総括や評価は不要です。A・B・Cの表だけにしてください。」

修正版

表だけになった。

人が最後にやること

Aの2件は、請求書の現物(PDF)を2枚並べて見ます。この架空例では1件が、メールと郵送で届いた同じ請求書でした。去年と同じ二重払いが、今年は支払前に止まりました。

往復2回目 ― Bの扱い

AIの初稿

Bの1件について「確認する内容:変更通知メールの送信元アドレスとドメインを確認」と書かれていた。

ここが問題

送信元アドレスは偽装できます。メールの中で確認しても、確認になりません。AIの提案は自然に見えますが、方法が間違っています。

追加で出した指示

「Bの確認方法は、『取引先マスタに登録済みの電話番号(メールに書かれた番号ではなく)に、こちらから電話して、口座変更の事実を確認する』に固定してください。」

修正版

そのとおりになった。

人が最後にやること

電話します。この架空例では、相手の経理担当は「変更していない」と答えました。偽の変更通知でした。支払を止め、上司と情報システム部門に報告しました。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 請求書番号の付け方が相手ごとに違う … 番号での突き合わせが効かない相手は、相手・金額・日付で見ます。
  • Cが多すぎる … 変動が大きい相手(外注費、従量課金)は、最初から別扱いにします。「この相手は毎月変わる」を取引先マスタに書きます。
  • 電話がつながらない … つながるまで支払を止めます。「今日中に払わないと」は、偽の通知が使う常套句でもあります。
  • 上司が「AIが見たなら大丈夫だろう」と言う … AIは番号と金額しか見ていない、と伝えます。承認は変わらず人。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. Aの各件について、請求書の現物を2枚並べて見たか。
  2. Bの各件について、登録済みの番号に電話したか。誰と話したか記録したか。
  3. 「問題なし」の総括が、上司に渡す資料に残っていないか。
  4. 翌月以降、二重払いの返金依頼が0件か。

7. 注意点

口座番号はAIに貼りません。記号にします。金額と相手も社内ルールで確認してください。
振込先変更の確認は、登録済みの番号への電話。メールでも、メール記載の番号でもなく。
AIの抜き出しは、承認の代わりになりません。承認は人。
この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 支払前日の「目が滑る150件」が、「A2件・B1件・C上位3件を確認した」になります。
  • 二重払いが、相手からの連絡ではなく、支払前に止まります。
  • 振込先変更の確認が、電話に固定されます。偽の通知に引っかかる余地が消えます。
  • 上司の承認が「AIが見たから」ではなく「自分がここを確認したから」に裏打ちされます。
明日の仕事で試すこと
  • 次の支払一覧と、前回の支払実績を並べる
  • 口座記号を振って、変わった相手がいないかだけ見る
  • いたら、登録済みの番号に電話する

応用 ― 難易度を上げる場合

件数が多ければ、A・Bの抜き出しをPythonにさせます(AIが作った業務ツールを、翌月も別の人も使える状態にするの型で)。ただしBの電話確認は、件数が増えても人。