債権債務・出納 › 入金消込活用案

入金があったが、どの請求か分からないとき

請求と一致しなかった入金について、未消込の請求一覧から「対応しそうな請求の候補」と「合わない理由の候補(手数料・合算・名義・一部入金)」をAIに出させる方法です。消し込むかどうかは、過去の入金実績と相手への確認で人が決めます。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。月初、銀行の入金明細を見ながら、請求書と突き合わせて消し込みます。9割は金額と振込名義で一致します。残り1割が、こうなります。

  • 金額が請求と数百円違う。振込手数料を引かれた? それとも別の請求?
  • 1件の入金が、請求2〜3件の合計になっている。どの組み合わせかを探すのに時間がかかる。
  • 振込名義が請求先と違う。親会社名義、担当者個人名義、カタカナ表記の揺れ。
  • 請求額の一部だけ入金されている。残りはいつ来るのか、来ないのか。

不明入金が10件残ると、それだけで1時間消えます。しかも「たぶんこれ」で消し込むと、翌月に相手から「二重に請求された」と言われます。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

不明入金の原因は、ほぼ4つに収まります。手数料の差引/複数請求の合算/名義の違い/一部入金。それぞれ、候補の探し方が違います。

AIには、入金明細と未消込の請求一覧を渡して、「この入金に対応しそうな請求の候補と、合わない理由の候補」を出させます。消し込むかどうかは人が決めます。

ここはAIを使わない

消込の確定。AIは「差額440円は振込手数料と思われます」と書きますが、それは推測です。その相手が手数料を差し引く先かどうかは、過去の入金実績を見ればわかりますし、わからなければ相手に聞きます。「思われる」で消し込まない。候補を出すのはAI、確かめて消し込むのは人。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 不明入金ごとに、金額・名義・日付から対応しそうな請求の候補を出す(複数の合算も含めて)
  • 合わない理由の候補(手数料/合算/名義/一部入金)を並べる
  • 「相手に確認する質問文」の下書き
人が判断する
  • 候補のどれが正しいか(過去の入金実績、相手への確認)
  • 消込の実行
  • 一部入金の残りの扱い(督促するか、待つか)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 不明入金と未消込の請求

不明入金の一覧(日付/金額/振込名義)と、未消込の請求一覧(請求番号/請求先/金額/請求日)。取引先名は記号にし、金額はそのまま(丸めると突き合わせにならない)。社内ルールで確認します。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。取引先は記号にし、金額は突き合わせに必要なのでそのまま貼ります。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。銀行の入金明細のうち、請求と一致しなかった入金について、対応する請求の候補を絞りたいと考えています。読み手は私自身です。 【事実/入力】 ・以下に、不明入金の一覧(日付/金額/振込名義の記号)を貼ります ・以下に、未消込の請求一覧(請求番号/請求先記号/金額/請求日)を貼ります ・振込手数料の扱いは相手によって違い、私はまだ確認していません 【依頼】 不明入金ごとに、対応しそうな請求の候補を挙げてください。1件の入金が複数の請求の合計になっている可能性も含めてください。あわせて、金額が合わない理由の候補を、手数料・合算・名義違い・一部入金の4つから挙げてください。 【出力の型】 表:入金(日付・金額)/候補の請求番号(複数可)/候補の合計額/差額/合わない理由の候補/相手に確認する質問(1行) 【禁止事項】 ・「〜と思われます」「〜で間違いありません」のような断定を書かないでください ・候補が見つからない入金は「候補なし」と書き、無理に当てはめないでください ・手数料の金額を推測して差額を説明しないでください

往復1回目 ― AIが手数料で説明した

AIの初稿

入金 99,560円に対し「請求 #1041(100,000円)。差額440円は振込手数料の差引と思われます」。

ここが問題

この相手が手数料を差し引く先かどうか、AIは知りません。禁止事項に書いていてもこうなります。過去にこの相手から満額で入金されていたら、440円は別の何か(値引き、相殺、別請求の一部)です。

追加で出した指示

「理由の候補は4つを並べるだけにし、どれかに決めないでください。差額は数字だけ書いてください。」

修正版

「候補 #1041/差額440/理由候補:手数料・一部入金・相殺/質問:『99,560円のお振込は #1041 の分でしょうか。差額440円の内容を教えてください』」

人が最後にやること

この相手の過去3か月の入金を見ます。毎回440円少なければ手数料。満額なら相手に聞きます。過去の実績が、いちばん確かな根拠です。

往復2回目 ― 合算の候補が多すぎる

AIの初稿

入金 350,000円に対し、合計が350,000円になる請求の組み合わせが6通り挙がった。

ここが問題

6通りから選ぶのは、結局人が全部見るのと同じです。組み合わせは、同じ請求先に絞れば激減します。最初の指示で「同じ請求先の請求だけで組み合わせる」と書いていませんでした。

追加で出した指示

「合算の候補は、振込名義と同じ請求先の請求だけで組み合わせてください。請求先をまたぐ組み合わせは出さないでください。」

修正版

1通りになった(#1022+#1035)。

人が最後にやること

その2件の請求日と入金日を見て、自然かを確かめます(2か月前の請求と先月の請求をまとめて払うのは自然。来月請求分が混ざっていたら不自然)。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 名義が全然違う … 親会社・グループ会社・担当者名義・振込代行。取引先マスタに「振込名義」の列を持ち、一度わかったら書き足します。次から迷いません。
  • 候補なしが残る … 前受か、他部署の売上(経理に請求情報が来ていない)か、誤振込。営業と相談し、誤振込なら銀行に連絡します。
  • 一部入金の残りが来ない … 消込を保留にして、督促の対象にします(滞留債権の年齢調べを行い、督促文案を用意するへ)。
  • AIがまた断定する … 「理由は候補として並べる」を毎回入れます。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 消し込んだ入金について、候補を選んだ根拠(過去実績/相手の回答)が書かれているか。
  2. 「思われる」のまま消し込んだ件が0件か。
  3. 翌月、相手から「二重請求」「未入金」の連絡が来なかったか。

7. 注意点

入金明細と請求一覧は、取引先名と金額を含みます。取引先は記号にします。金額は突き合わせに必要なので残しますが、社内ルールで確認してください。
AIの候補は候補です。消込の根拠は、過去実績か相手の回答。
この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 不明入金10件の1時間が、候補表を見て確かめる15分になります。
  • 「思われる」消込がなくなり、翌月の二重請求の連絡が減ります。
  • 取引先マスタに「振込名義」「手数料の扱い」が育ち、不明入金そのものが減ります。
明日の仕事で試すこと
  • 今月の不明入金を3件だけ選ぶ
  • 未消込の請求一覧と一緒に貼って、候補と理由候補を出させる
  • 「思われる」が出てきたら消して、過去3か月の入金実績を見る

応用 ― 難易度を上げる場合

件数が多い会社は、グループ間債権債務・取引高の照合を自動化すると同じ考え方で、同じ請求先・同額・近い日付の突き合わせをPythonにさせます。ただし不一致の判断は変わらず人。一部入金の督促は滞留債権の年齢調べを行い、督促文案を用意するへ。