支払う前に「源泉徴収が要りそうな支払」を候補として拾う
支払一覧から、人が決めた拾い方(個人または不明への支払/海外への支払/報酬・料金などの語を含む支払)に当てはまる行だけをAIに抜き出させ、確認済み一覧で消し込んだ新規分だけを税理士に確認する方法です。要否・税率は国税庁の公表資料の原文と税理士。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。月2回の支払一覧。150件のほとんどは仕入・外注費・経費で、源泉徴収は関係ありません。ただ、月に数件、関係するものが混ざります。
- 個人の講師に払った講演料を、源泉徴収せずに全額振り込んだ。気づいたのは翌月、税理士の指摘。相手に連絡して返してもらう羽目になった。
- 相手が法人か個人かを、支払一覧を見ただけでは区別できない。「○○事務所」「○○デザイン」は、どちらもあり得る。
- 海外の会社への支払で、源泉が要るかどうかを誰も確認していなかった。
- 「源泉が要るかも」と気づく人が、経理の中で1人しかいない。その人が休むと、素通りする。
やりたいのは、支払前に「源泉徴収が要りそうな支払」を候補として拾い上げ、その数件だけを税理士に確認すること。要否の判定は、税理士です。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 支払一覧に「相手の区分」と「支払の内容」の列を持つ … 法人/個人/不明、海外/国内。内容は「講演料」「原稿料」「デザイン料」「弁護士報酬」のように。
(b) 候補の拾い方を、人が決めておく … 「個人または不明への支払」「海外への支払」「内容に報酬・料金・講演・原稿・デザイン・顧問・弁護士・税理士などの語を含む」。
(c) AIに、(b)に当てはまる行だけを拾わせる … 判定はしない。
(d) 拾った候補を、税理士に確認する … 初回は全部。2回目以降は、前回確認済みの相手・内容は「確認済み一覧」で消し込む。
源泉徴収の要否と税率。AIに「この支払は源泉徴収が必要ですか」と聞くと、もっともらしい答えが返ってきますが、相手の実態(法人か個人か、居住者か)と支払の性質(何の対価か)は、契約書と請求書を見た人にしか分かりません。法令の中身も年によって変わります。AIに任せるのは「候補を拾う」まで。要否は国税庁の公表資料の原文と、税理士。それから、相手が法人か個人かの確認も人(請求書の発行者名、登記の有無、契約書の当事者名)。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 支払一覧から、人が決めた拾い方に当てはまる行を抜き出す
- 「確認済み一覧」(相手・内容・税理士の回答日)と突き合わせ、今回新たに確認が要る行だけを出す
- 税理士に送る確認文の下書き(相手の区分・内容・金額・契約の有無を並べる)
- 拾い方((b)の条件)
- 相手が法人か個人か、国内か海外か(請求書・契約書で)
- 源泉徴収の要否・税率・納付(税理士と)
- 確認済み一覧の更新
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 支払一覧と確認済み一覧
今回の支払一覧(相手記号/相手の区分=法人・個人・不明/国内・海外/支払内容/金額)と、確認済み一覧(相手記号/内容/税理士の回答=要・不要/回答日)。相手名は記号、金額は千円単位。
往復1回目 ― AIが「要・不要」を書いた
表に「源泉徴収:要(税率○%)」「不要」の列が付いていた(税率の数字まで書かれていた)。
税率まで書いてあります。その数字がこの年に正しいか、この支払に当てはまるか、AIは確かめていません。この列が支払一覧に残ると、承認者が「AIが要と言っているから引く」「不要と言っているから引かない」になります。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『源泉徴収』の列を削除してください。要否・税率に関する記述をすべて消し、候補の表だけにしてください。」
候補7行だけになった。うち4行は確認済み一覧に一致(去年回答済みの顧問弁護士・顧問税理士など)。新規は3行。
3行の請求書と契約書を見て、相手が法人か個人か、何の対価かを確かめ、税理士に送ります。この架空例では、1件が個人の講師への講演料で、去年と同じ失敗が、今年は支払前に止まりました。
往復2回目 ― 「不明」が多すぎた
①の「不明」に当てはまる行が40行あった。
支払一覧の「区分」列を、まだ埋めていない相手が多い。候補が40行では、税理士に確認できません。AIの問題ではなく、入力の問題です。
「『不明』の40行について、相手記号ごとにまとめ、過去に確認済み一覧に同じ相手があるものを別にしてください。」
相手ごとにまとめると18相手。うち10相手は確認済み一覧に既にあった(区分が「不明」のまま残っていただけ)。本当に不明は8相手。
8相手の請求書を見て、区分を埋めます。「不明」は、取引先マスタに区分の列がないから生まれます。列を足して、一度分かったら書く。来月から「不明」は減ります。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 支払内容の記載が「業務委託料」だけで、中身が分からない … 語で拾えません。発注者に「何の対価か」を聞きます。内容の書き方を、発注時に決めておきます(「業務委託料(デザイン)」のように)。
- 海外の相手が多い … ②だけで別の一覧にし、税理士と「この相手は確認済み」を積み上げます。海外は相手ごとの事情で変わるので、確認済み一覧が特に効きます。
- 税理士の回答が「条件による」 … その条件(契約の内容、相手の実態)を、確認済み一覧の備考に書きます。次回、同じ相手で条件が変わっていないかを見ます。
- AIがまた税率を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 候補の表に、要否・税率の記述が残っていないか。
- 新規の候補について、税理士に確認し、回答を確認済み一覧に書いたか。
- 「不明」の相手が、先月より減ったか。
- 源泉徴収の漏れが、税理士の事後指摘ではなく、支払前に見つかるようになったか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「源泉が要るかも」と気づく人が1人から、支払一覧の仕組みになります。
- 税理士への確認が、月に数件の新規だけになります。
- 確認済み一覧が育ち、同じ相手で毎回迷わなくなります。
- 取引先マスタに「法人・個人」「国内・海外」の列ができ、「不明」が消えていきます。
- 次の支払一覧に「区分(法人・個人・不明)」の列を足す
- 「不明」の相手を数える
- 内容に「料」「報酬」「講演」「顧問」を含む行だけ、印をつける
応用 ― 難易度を上げる場合
支払前の確認は支払う前に、二重払いと振込先の変更を自分で止めると同じ支払一覧で一緒にできます(A・B・Cにこの活用例の①②③を足す)。件数が多ければ、抜き出しはPythonにさせてよいですが、要否の確認は変わらず税理士。