前受金の残高を、契約ごとの「いつ売上になるか」の一覧にして毎月消し込む
前受金の残高明細と契約一覧を突き合わせ、契約に紐づかない残高・予定を過ぎても残っている残高・一部だけ消し込まれた残高をAIに出させる方法です。突合はAI、契約の確認と営業への質問は人、売上に計上する時期の判断は基準の原文と監査法人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。サブスクリプション型のサービスと受託開発があり、どちらも前受で入金があります。前受金の残高は毎月増えていて、部長から「この残高、いつ売上になるの」と聞かれました。
- 前受金の残高明細は、入金の仕訳の積み上げ。どの契約の前受かは、摘要に書いてあったりなかったりする。
- 契約一覧は営業が持っている。契約期間・納品予定は営業のExcelにあり、経理の残高明細とつながっていない。
- 2年前の入金が残っている。案件が終わっているのか、返金すべきなのか、消し忘れなのか、分からない。
- 監査法人に「前受金の内訳と、翌期に売上になる金額」を聞かれて、その場で答えられなかった。
売上に振り替える時期の判定は、基準と監査法人の話。この記事でやるのは、残高を契約に紐づけ、「いつ売上になる予定か」を一覧にして、毎月消し込むことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 残高明細を、契約記号で紐づける … 入金日/金額/契約記号/摘要。紐づかないものは「不明」。
(b) 契約一覧から、「売上になる予定」を持ってくる … 契約記号/契約期間または納品予定日/契約金額/担当。
(c) 残高と予定を突き合わせる … 契約に紐づかない残高/予定を過ぎても残っている残高/契約金額と前受金額が合わない契約。AI。
(d) 出たものを営業に聞き、一覧を更新する … 人。毎月。
「この残高は売上に計上すべき」の判定。AIに残高と契約期間を見せると「期間が経過しているので売上計上が必要です」と書きますが、納品の実態や契約の条件(検収、返金条項)は、契約書と営業を見た人にしか分かりません。計上時期は基準の原文と監査法人と。AIに任せるのは、残高と契約を突き合わせて「合わないもの」を出すまで。それから、「不明」の残高の正体を決めるのも人(過去の入金通知、営業への確認)。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 残高明細と契約一覧を突き合わせ、契約に紐づかない残高・予定を過ぎた残高・金額の合わない契約を出す
- 契約ごとに「残高/予定/差」を並べた一覧の型に整える
- 営業に聞く質問文の下書き(契約記号・入金日・金額・聞くこと)
- 翌期に予定が来る契約の残高を、月ごとに集計する(判定はしない)
- 「不明」の残高の正体(入金通知・営業への確認)
- 予定を過ぎた残高の扱い(営業・上司と)
- 売上に振り替える時期(基準の原文・監査法人)
- 一覧の毎月の更新
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 残高明細と契約一覧
前受金の残高明細(入金日/金額/契約記号があれば記号/摘要)と、営業の契約一覧(契約記号/契約期間または納品予定日/契約金額/担当記号)。顧客名は記号、金額は千円単位。
往復1回目 ― AIが「計上すべき」と書いた
②の「予定超過」の行に「契約期間が終了しているため、残高を売上に振り替える必要があります」と付いていた。
それは判定です。契約期間が終わっていても、延長の合意があるか、未納品で返金になるか、営業に聞かないと分かりません。この一文が一覧に残ると、監査法人に「経理が計上要と判断した」と見えます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「売上計上に関する記述をすべて削除し、②は事実の表、③は質問文だけにしてください。」
②は「紐づかず:4件 計2,300」「予定超過:3契約 計5,600」「金額不一致:2契約」。③は各行に質問文。
予定超過3契約について、営業に質問文を送ります。この架空例では、1契約は納品が2か月遅れていて未納品、1契約は延長の合意があったが契約一覧が未更新、1契約は納品済みで売上の振替が漏れていました。3つとも扱いが違う。振替が漏れていた1件は、時期の扱いを監査法人と確認したうえで処理します。
往復2回目 ― 「紐づかず」の残高
「紐づかず」4件のうち、2年前の入金 800 について「摘要『○○社 前受』から、契約記号Kの契約と思われます」と紐づけの候補が書かれていた。
候補として出すのはよい。ただし「思われます」で一覧に書き込むと、確かめないまま紐づいたことになります。契約Kの金額と800が合うか、入金通知の相手が同じかを見てから。
「紐づけの候補は『候補:K(摘要の相手名が一致)』の形にし、一覧の契約記号の欄には入れないでください。」
候補の欄に分かれた。
2年前の入金通知を探し、営業に聞きます。この架空例では、契約Kではなく、途中で解約された別の契約の前受で、返金が済んでいませんでした。「紐づかず」は、返金漏れや消し忘れが隠れる場所。上司に報告し、扱いを決めます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 残高明細に契約記号がまったくない … 今月から、入金の仕訳の摘要に契約記号を入れる運用にします。過去分は入金通知と契約一覧から人が紐づけます(大きい金額から)。
- 営業の契約一覧が古い … 「予定超過」が大量に出ます。契約一覧の更新を営業と決めます(月次で経理に送る、など)。
- サブスクの前受が月割で減る … 契約ごとの「月ごとの予定」を一覧に持ちます。AIに「契約期間を月に按分した予定表」を作らせてよいですが、按分の方法が適切かは監査法人と。
- AIがまた判定を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 一覧に、売上計上の要否に関するAIの記述が残っていないか。
- 残高明細の合計と、一覧の残高合計が一致しているか。「紐づかず」も含めて。
- 「予定超過」「紐づかず」の全件について、営業への確認と結果が記録されているか。
- 監査法人の「内訳と翌期に売上になる金額」に、一覧で答えられたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「この残高、いつ売上になるの」に、契約ごとの一覧で答えられます。
- 納品遅れ・延長の未更新・振替漏れ・返金漏れが、毎月の消込で見つかります。
- 監査法人への内訳の説明が、一覧を見せる1分になります。
- 入金の仕訳に契約記号が入るようになり、来月の「紐づかず」が減ります。
- 前受金の残高明細で、いちばん古い入金を1件選ぶ
- それがどの契約の前受か、摘要と契約一覧で紐づけてみる
- 紐づかなければ、営業に「この入金、何の分ですか」と聞く
応用 ― 難易度を上げる場合
受託案件の進捗度に使う見積りの管理は進捗度の計算に使う見積原価総額の変更を、案件ごとに履歴として残す、契約の論点は契約書から収益認識の論点を洗い出すへ。入金の消込そのものは入金があったが、どの請求か分からないとき。