銀行残高と帳簿が合わないとき、差異の一覧を作る
銀行明細と帳簿の預金元帳を突き合わせ、「片方にしかない行」を出して、その合計が残高の差額と一致するかを確かめる方法です。片方にしかない行を出すのはAI、各行の原因(未達・未取付・支払漏れ)は記録を見て人が書きます。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。月末、銀行の残高証明(またはネットバンキングの残高)と、帳簿の預金残高が合いません。差額は 128,400円。
- 差額の内訳がわからない。1件なのか、5件の足し引きなのか。
- 銀行の明細と帳簿の元帳を、上から順に目で追う。200行ずつ。途中で見失う。
- 先月も合わなかった。先月の差額は「未達」として処理したが、今月その分が本当に解消したかを確かめていない。
- 差異の一覧(銀行勘定調整表)を作れと言われているが、作り方がわからない。
やることは単純で、銀行にあって帳簿にない行、帳簿にあって銀行にない行を全部出すこと。目で追うと見失います。AIに出させます。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 銀行明細と帳簿の元帳を、同じ形にする … 日付/金額/摘要。入金と出金は符号で分ける。
(b) 一致する行を消し、片方にしかない行を出す … AIにやらせる。
(c) 片方にしかない行の合計が、差額と一致するか確かめる … 一致すれば、差異の一覧はその行たち。
(d) 各行の原因を書く … 未達(銀行に届いていない)/未取付(帳簿に未計上)/手数料/誤記/二重計上。ここは人。
原因を決めること。帳簿にあって銀行にない出金を、AIは「未取付小切手または振込の未達と思われます」と書きます。それは「わからない」の言い換えです。原因は、その出金の相手・日付・振込指示の記録を見た人にしかわかりません。AIに任せるのは「片方にしかない行を出す」ところまで。先月の差異が今月解消したかの確認も人(先月の一覧と今月の一覧を並べれば見えます)。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 銀行明細と帳簿元帳を突き合わせ、片方にしかない行を出す
- 片方にしかない行の合計と、残高の差額を照合する
- 先月の差異一覧と今月の「片方にしかない行」を並べ、先月の差異が今月消えているかを見せる
- 差異一覧の表の形に整える
- 各行の原因(記録を見て)
- 修正仕訳が必要か
- 先月の差異が解消していない場合の対応
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 明細と元帳を同じ形にする
銀行明細(日付/入金/出金/摘要)と帳簿の預金元帳(日付/借方/貸方/摘要)。摘要の相手先は記号にします。金額はそのまま(丸めると突き合わせにならない)。両方の月末残高も伝えます。
往復1回目 ― AIが原因を書いた
①は正確だった。銀行のみ2行(+150,000 入金、−440 手数料らしき出金)、帳簿のみ1行(−21,160 出金)。合計の計算が示され、差額と一致した。ただし各行に「未達入金と思われる」「振込手数料」「未取付」と原因が付いていた。
原因は推測です。特に「未取付」は、振込指示が本当に出ているかを確かめないと言えません。帳簿に出金があって銀行にないなら、振込を忘れている可能性もあります。
「原因の欄をすべて空欄にしてください。原因は私が記録を見て書きます。」
原因が空欄になった。
帳簿のみの −21,160 について、振込指示の記録を見ます。この架空例では、振込指示が出ていませんでした。未取付ではなく、支払漏れ。すぐに振込みました。「未取付と思われる」で済ませていたら、相手への支払が遅れていました。
往復2回目 ― 先月の差異の解消
③で、先月「銀行のみ」だった入金 80,000円が、今月の帳簿に計上されて解消、と示された。もう1件、先月「帳簿のみ」だった出金 30,000円は「今月の銀行明細に該当なし・未解消」。
問題ではなく、これがこの往復の価値です。先月の差異が2か月続いていることが、並べたから見えました。追加の指示は出しません。
30,000円の出金の記録を見ます。2か月間、銀行に出ていない出金は、振込先の口座が間違っていて戻ってきているか、指示が出ていないか。「先月も未達で処理した」を、今月も繰り返しません。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- ①の合計が差額と合わない … 貼った明細か元帳に抜けがあります。期間(月初〜月末)と口座が揃っているか確かめます。
- 同じ金額の行が複数ある … 日付と摘要で区別します。AIが取り違えたら、「日付の近いものを優先」と指示します。
- 手数料が毎回出る … 帳簿に手数料の計上ルール(月末にまとめて/都度)を決めます。差異一覧に毎月手数料が並ぶのは、ルールがないからです。
- 口座が多い … 1口座ずつ。まとめて貼ると、AIが口座を取り違えます。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- ①の合計が、残高の差額と一致しているか。
- 各行の原因が、記録(振込指示・入金通知)をもとに人が書いたものか。
- 先月の差異のうち、未解消のものについて対応したか。
- 差異一覧を上司に見せて、各行の原因を説明できたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 200行を目で追う1時間が、片方にしかない3行を確かめる15分になります。
- 「未達と思われる」が「振込指示を確認した」になり、支払漏れが見つかります。
- 先月の差異が今月解消したかを、毎月確かめる習慣ができます。
- 差異一覧が毎月たまり、この口座で起きやすい差異の型が見えます。
- 口座を1つ選び、当月の銀行明細と元帳を並べる
- 片方にしかない行を出させ、合計が差額と合うか見る
- 帳簿にあって銀行にない出金について、振込指示の記録を見る
応用 ― 難易度を上げる場合
口座が多く、毎月同じ作業なら、片方にしかない行の抽出をPythonにさせます(AIが作った業務ツールを、翌月も別の人も使える状態にするの型)。原因の判断は変わらず人。差異の一覧を毎月ためると、複数口座の残高を、毎朝1枚にまとめて「いつもと違う」を見るの土台になります。