月次決算 › 残高照合活用案

銀行残高と帳簿が合わないとき、差異の一覧を作る

銀行明細と帳簿の預金元帳を突き合わせ、「片方にしかない行」を出して、その合計が残高の差額と一致するかを確かめる方法です。片方にしかない行を出すのはAI、各行の原因(未達・未取付・支払漏れ)は記録を見て人が書きます。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。月末、銀行の残高証明(またはネットバンキングの残高)と、帳簿の預金残高が合いません。差額は 128,400円。

  • 差額の内訳がわからない。1件なのか、5件の足し引きなのか。
  • 銀行の明細と帳簿の元帳を、上から順に目で追う。200行ずつ。途中で見失う。
  • 先月も合わなかった。先月の差額は「未達」として処理したが、今月その分が本当に解消したかを確かめていない。
  • 差異の一覧(銀行勘定調整表)を作れと言われているが、作り方がわからない。

やることは単純で、銀行にあって帳簿にない行、帳簿にあって銀行にない行を全部出すこと。目で追うと見失います。AIに出させます。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 銀行明細と帳簿の元帳を、同じ形にする … 日付/金額/摘要。入金と出金は符号で分ける。
(b) 一致する行を消し、片方にしかない行を出す … AIにやらせる。
(c) 片方にしかない行の合計が、差額と一致するか確かめる … 一致すれば、差異の一覧はその行たち。
(d) 各行の原因を書く … 未達(銀行に届いていない)/未取付(帳簿に未計上)/手数料/誤記/二重計上。ここは人。

ここはAIを使わない

原因を決めること。帳簿にあって銀行にない出金を、AIは「未取付小切手または振込の未達と思われます」と書きます。それは「わからない」の言い換えです。原因は、その出金の相手・日付・振込指示の記録を見た人にしかわかりません。AIに任せるのは「片方にしかない行を出す」ところまで。先月の差異が今月解消したかの確認も人(先月の一覧と今月の一覧を並べれば見えます)。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 銀行明細と帳簿元帳を突き合わせ、片方にしかない行を出す
  • 片方にしかない行の合計と、残高の差額を照合する
  • 先月の差異一覧と今月の「片方にしかない行」を並べ、先月の差異が今月消えているかを見せる
  • 差異一覧の表の形に整える
人が判断する
  • 各行の原因(記録を見て)
  • 修正仕訳が必要か
  • 先月の差異が解消していない場合の対応

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 明細と元帳を同じ形にする

銀行明細(日付/入金/出金/摘要)と帳簿の預金元帳(日付/借方/貸方/摘要)。摘要の相手先は記号にします。金額はそのまま(丸めると突き合わせにならない)。両方の月末残高も伝えます。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。相手先は記号にし、金額は照合に必要なのでそのまま貼ります。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。月末の銀行残高と帳簿残高が合わないので、差異の内訳を一覧にしたいと考えています。読み手は私と上司です。 【事実/入力】 ・以下に、当月の銀行明細(日付/入金/出金/摘要記号)を貼ります ・以下に、当月の帳簿の預金元帳(日付/借方/貸方/摘要記号)を貼ります ・銀行の月末残高は 5,328,400円、帳簿の月末残高は 5,200,000円です(架空) ・先月の差異一覧を貼ります(先月末時点で片方にしかなかった行) 【依頼】 ①同じ金額・近い日付で一致する行を消し、片方にしかない行を出してください ②片方にしかない行の合計が、残高の差額 128,400円 と一致するか示してください ③先月の差異一覧の各行が、今月の明細で解消しているかを示してください 【出力の型】 ①表:銀行のみ/帳簿のみ、それぞれ 日付/金額/摘要記号 ②計算式:銀行残高 − 帳簿残高 = 差額、と①の合計の比較 ③表:先月の差異/今月解消(どの行で)/未解消 【禁止事項】 ・各行の原因(未達・未取付・手数料など)を推測して書かないでください ・一致しない行を、金額が近いからといって無理に一致させないでください ・私が貼っていない行を作らないでください

往復1回目 ― AIが原因を書いた

AIの初稿

①は正確だった。銀行のみ2行(+150,000 入金、−440 手数料らしき出金)、帳簿のみ1行(−21,160 出金)。合計の計算が示され、差額と一致した。ただし各行に「未達入金と思われる」「振込手数料」「未取付」と原因が付いていた。

ここが問題

原因は推測です。特に「未取付」は、振込指示が本当に出ているかを確かめないと言えません。帳簿に出金があって銀行にないなら、振込を忘れている可能性もあります。

追加で出した指示

「原因の欄をすべて空欄にしてください。原因は私が記録を見て書きます。」

修正版

原因が空欄になった。

人が最後にやること

帳簿のみの −21,160 について、振込指示の記録を見ます。この架空例では、振込指示が出ていませんでした。未取付ではなく、支払漏れ。すぐに振込みました。「未取付と思われる」で済ませていたら、相手への支払が遅れていました。

往復2回目 ― 先月の差異の解消

AIの初稿

③で、先月「銀行のみ」だった入金 80,000円が、今月の帳簿に計上されて解消、と示された。もう1件、先月「帳簿のみ」だった出金 30,000円は「今月の銀行明細に該当なし・未解消」。

ここが問題

問題ではなく、これがこの往復の価値です。先月の差異が2か月続いていることが、並べたから見えました。追加の指示は出しません。

人が最後にやること

30,000円の出金の記録を見ます。2か月間、銀行に出ていない出金は、振込先の口座が間違っていて戻ってきているか、指示が出ていないか。「先月も未達で処理した」を、今月も繰り返しません。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • ①の合計が差額と合わない … 貼った明細か元帳に抜けがあります。期間(月初〜月末)と口座が揃っているか確かめます。
  • 同じ金額の行が複数ある … 日付と摘要で区別します。AIが取り違えたら、「日付の近いものを優先」と指示します。
  • 手数料が毎回出る … 帳簿に手数料の計上ルール(月末にまとめて/都度)を決めます。差異一覧に毎月手数料が並ぶのは、ルールがないからです。
  • 口座が多い … 1口座ずつ。まとめて貼ると、AIが口座を取り違えます。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. ①の合計が、残高の差額と一致しているか。
  2. 各行の原因が、記録(振込指示・入金通知)をもとに人が書いたものか。
  3. 先月の差異のうち、未解消のものについて対応したか。
  4. 差異一覧を上司に見せて、各行の原因を説明できたか。

7. 注意点

明細と元帳は、相手先と金額を含みます。相手先は記号にします。金額は照合に必要なので残しますが、社内ルールで確認してください。
原因はAIに書かせません。「未達」「未取付」は、記録を見てから。
銀行勘定調整表の様式は会社ごとです。この活用例の表は例。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 200行を目で追う1時間が、片方にしかない3行を確かめる15分になります。
  • 「未達と思われる」が「振込指示を確認した」になり、支払漏れが見つかります。
  • 先月の差異が今月解消したかを、毎月確かめる習慣ができます。
  • 差異一覧が毎月たまり、この口座で起きやすい差異の型が見えます。
明日の仕事で試すこと
  • 口座を1つ選び、当月の銀行明細と元帳を並べる
  • 片方にしかない行を出させ、合計が差額と合うか見る
  • 帳簿にあって銀行にない出金について、振込指示の記録を見る

応用 ― 難易度を上げる場合

口座が多く、毎月同じ作業なら、片方にしかない行の抽出をPythonにさせます(AIが作った業務ツールを、翌月も別の人も使える状態にするの型)。原因の判断は変わらず人。差異の一覧を毎月ためると、複数口座の残高を、毎朝1枚にまとめて「いつもと違う」を見るの土台になります。