複数口座の残高を、毎朝1枚にまとめて「いつもと違う」を見る
6口座の残高・前日比・今週の入出金予定を1枚にし、人が決めた3つの基準(前日比の動き/予定にない入出金/支払予定に対する不足)に当てはまる行だけをAIに出させる方法です。基準を決めるのも、中身を確かめるのも、資金を動かすのも人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。出納担当は、毎朝、口座の残高を見ます。口座は6つ(メイン、給与、税金、子会社、外貨、当座)。
- 6つのネットバンキングにログインして、残高をExcelに手で写す。15分。
- 写した数字を眺めて、「まあ、いつもどおり」と思って閉じる。いつもどおりかどうかを、本当に確かめてはいない。
- 先月、給与口座の残高が足りないことに、振込日の朝に気づいた。前日に見ていれば、メイン口座から移せた。
- 大きな入金があったとき、何の入金かをその場で確かめない。月末の消込で初めて見る。
「毎朝見ている」のに「気づけない」。見る形が、気づける形になっていません。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 6口座の残高と、前日からの増減を1枚にする … Excelで十分。
(b) 「いつもと違う」の基準を決める … 前日比で一定額以上動いた/予定にない入出金があった/残高が「今週の支払予定」を下回った。
(c) 予定表(今週の入金予定・支払予定)と並べる … 資金繰り表の直近1週間分。
(d) 違うものだけをAIに出させ、人が確かめる。
「いつもと違う」の基準を決めること。「前日比100万円以上の動き」が大きいか小さいかは、その会社の規模と口座の性格で決まります。AIに「異常を検知して」と頼むと、AIなりの基準で「異常」を出しますが、それは貴社の基準ではありません。基準は人が決めて、AIには「基準に当てはまるものを出す」だけをさせます。それから、入出金の中身の確認も人(明細と予定表を見る)。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 6口座の残高・前日比・今週の予定を貼ると、人が決めた基準に当てはまる行だけを出す
- 予定にない入出金を、予定表と突き合わせて抜き出す
- 「今週の支払予定に対して残高が足りない口座」を出す
- 基準そのもの
- 抜き出された行の中身の確認(明細、予定表、担当者への確認)
- 口座間の資金移動の実行
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 毎朝のExcelと今週の予定
毎朝のExcel(口座/前日残高/当日残高/前日比/当日の主な入出金3件まで)と、今週の入出金予定(資金繰り表から)。金額は千円単位。口座名は「メイン」「給与」のような役割名でよく、口座番号は不要です。
往復1回目 ― AIが独自の基準で「異常」を出した
①②③に加えて「外貨口座の残高が過去と比べて減少傾向にあり、注意が必要です」と書かれていた。
過去のデータは貼っていません。AIが「減少傾向」と言える材料はありません。基準外の指摘が混ざると、毎朝それを読む時間が増え、本当の①②③が埋もれます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「基準①②③以外の記述をすべて削除してください。」
①該当なし、②メイン口座に予定にない入金 1,800千円、③給与口座で不足 2,300千円。
②は明細で振込名義を見て、営業に「この入金は何か」を聞きます。③は、今日のうちにメイン口座から給与口座に移します。先月の「振込日の朝に気づく」が、3日前に気づく形になりました。
往復2回目 ― 「該当なし」の日
翌日、「①②③とも該当なし」。
問題ではありません。「該当なし」が、この仕組みの正しい出力です。該当なしの日は、5分で終わります。それでよい。追加の指示は出しません。
何もしません。「何もしない」と決められることが、毎朝15分眺めていた頃との違いです。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 基準に当てはまる日が多すぎる … 基準が厳しい。①の金額を上げます。月初・月末は動きが大きいので、日によって基準を変えてもよいです。
- 予定表が古い … ②が毎日出ます。予定表の更新を、資金繰り表の担当と決めます。
- 残高の転記ミス … 前日残高+当日の入出金=当日残高、の検算をExcelに入れます。AIに頼む前に、Excelで弾く。
- 口座が増えた … 表に1行足すだけ。基準は同じ。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 基準①②③が、上司と共有され、書いてあるか。
- ②で出た入出金について、内容を確認した記録があるか。
- ③で出た不足について、資金移動を当日中に行ったか。
- 「振込日の朝に気づく」が、この1か月で0回か。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 毎朝15分の「眺める」が、5分の「基準に当てはまるものを確かめる」になります。
- 給与・税金の不足が、振込日の3日前に見つかります。
- 予定にない入金が、月末の消込ではなく、当日に営業へ確認されます。
- 基準①②③が、そのまま「出納の朝のルール」として引き継げます。
- 明朝の残高表に「前日比」の列を足す
- 基準①の金額を1つ決める(迷ったら、月の支払で一番大きい1件の半分)
- 当てはまる口座があるかだけ見る
応用 ― 難易度を上げる場合
毎朝同じ表を作るなら、ネットバンキングのCSVを読んで残高表を作るところをPythonにさせます(AIが作った業務ツールを、翌月も別の人も使える状態にするの型。ログイン情報は絶対にツールに持たせない)。差異の一覧は銀行残高と帳簿が合わないとき、差異の一覧を作る、週次以降の見通しは資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行うへ。