資金繰り・財務 › 銀行取引・残高管理活用案

複数口座の残高を、毎朝1枚にまとめて「いつもと違う」を見る

6口座の残高・前日比・今週の入出金予定を1枚にし、人が決めた3つの基準(前日比の動き/予定にない入出金/支払予定に対する不足)に当てはまる行だけをAIに出させる方法です。基準を決めるのも、中身を確かめるのも、資金を動かすのも人。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。出納担当は、毎朝、口座の残高を見ます。口座は6つ(メイン、給与、税金、子会社、外貨、当座)。

  • 6つのネットバンキングにログインして、残高をExcelに手で写す。15分。
  • 写した数字を眺めて、「まあ、いつもどおり」と思って閉じる。いつもどおりかどうかを、本当に確かめてはいない。
  • 先月、給与口座の残高が足りないことに、振込日の朝に気づいた。前日に見ていれば、メイン口座から移せた。
  • 大きな入金があったとき、何の入金かをその場で確かめない。月末の消込で初めて見る。

「毎朝見ている」のに「気づけない」。見る形が、気づける形になっていません。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 6口座の残高と、前日からの増減を1枚にする … Excelで十分。
(b) 「いつもと違う」の基準を決める … 前日比で一定額以上動いた/予定にない入出金があった/残高が「今週の支払予定」を下回った。
(c) 予定表(今週の入金予定・支払予定)と並べる … 資金繰り表の直近1週間分。
(d) 違うものだけをAIに出させ、人が確かめる。

ここはAIを使わない

「いつもと違う」の基準を決めること。「前日比100万円以上の動き」が大きいか小さいかは、その会社の規模と口座の性格で決まります。AIに「異常を検知して」と頼むと、AIなりの基準で「異常」を出しますが、それは貴社の基準ではありません。基準は人が決めて、AIには「基準に当てはまるものを出す」だけをさせます。それから、入出金の中身の確認も人(明細と予定表を見る)。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 6口座の残高・前日比・今週の予定を貼ると、人が決めた基準に当てはまる行だけを出す
  • 予定にない入出金を、予定表と突き合わせて抜き出す
  • 「今週の支払予定に対して残高が足りない口座」を出す
人が判断する
  • 基準そのもの
  • 抜き出された行の中身の確認(明細、予定表、担当者への確認)
  • 口座間の資金移動の実行

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 毎朝のExcelと今週の予定

毎朝のExcel(口座/前日残高/当日残高/前日比/当日の主な入出金3件まで)と、今週の入出金予定(資金繰り表から)。金額は千円単位。口座名は「メイン」「給与」のような役割名でよく、口座番号は不要です。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。口座番号は貼らず、役割名と千円単位の金額だけを渡します。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は出納担当です。毎朝、複数口座の残高を確認していますが、「いつもと違う」点に気づける形にしたいと考えています。読み手は私自身です。 【事実/入力】 ・以下に、今朝の6口座の残高表(口座/前日残高/当日残高/前日比/主な入出金)を貼ります(千円単位) ・以下に、今週の入出金予定(日付/口座/入金・出金/金額/内容)を貼ります ・「いつもと違う」の基準は次の3つです(私が決めました) ①前日比の動きが 1,000千円以上 ②予定表にない 500千円以上の入出金 ③今週の支払予定の合計が、当日残高を上回る口座 【依頼】 基準①②③に当てはまる行だけを出してください。当てはまらなければ「該当なし」とだけ書いてください。 【出力の型】 基準/口座/金額/(②は予定表との照合結果、③は不足額) 【禁止事項】 ・基準①②③以外の観点で「異常」を出さないでください ・入出金の内容や原因を推測して書かないでください ・「問題ありません」という評価は書かないでください

往復1回目 ― AIが独自の基準で「異常」を出した

AIの初稿

①②③に加えて「外貨口座の残高が過去と比べて減少傾向にあり、注意が必要です」と書かれていた。

ここが問題

過去のデータは貼っていません。AIが「減少傾向」と言える材料はありません。基準外の指摘が混ざると、毎朝それを読む時間が増え、本当の①②③が埋もれます。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「基準①②③以外の記述をすべて削除してください。」

修正版

①該当なし、②メイン口座に予定にない入金 1,800千円、③給与口座で不足 2,300千円。

人が最後にやること

②は明細で振込名義を見て、営業に「この入金は何か」を聞きます。③は、今日のうちにメイン口座から給与口座に移します。先月の「振込日の朝に気づく」が、3日前に気づく形になりました。

往復2回目 ― 「該当なし」の日

AIの初稿

翌日、「①②③とも該当なし」。

ここが問題

問題ではありません。「該当なし」が、この仕組みの正しい出力です。該当なしの日は、5分で終わります。それでよい。追加の指示は出しません。

人が最後にやること

何もしません。「何もしない」と決められることが、毎朝15分眺めていた頃との違いです。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 基準に当てはまる日が多すぎる … 基準が厳しい。①の金額を上げます。月初・月末は動きが大きいので、日によって基準を変えてもよいです。
  • 予定表が古い … ②が毎日出ます。予定表の更新を、資金繰り表の担当と決めます。
  • 残高の転記ミス … 前日残高+当日の入出金=当日残高、の検算をExcelに入れます。AIに頼む前に、Excelで弾く。
  • 口座が増えた … 表に1行足すだけ。基準は同じ。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 基準①②③が、上司と共有され、書いてあるか。
  2. ②で出た入出金について、内容を確認した記録があるか。
  3. ③で出た不足について、資金移動を当日中に行ったか。
  4. 「振込日の朝に気づく」が、この1か月で0回か。

7. 注意点

口座番号はAIに貼りません。役割名と千円単位の金額だけ。社内ルールで確認してください。
基準は人が決めます。AIの「異常検知」に任せない。
「該当なし」の日に、何もしないことを恐れない。それがこの仕組みの目的です。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 毎朝15分の「眺める」が、5分の「基準に当てはまるものを確かめる」になります。
  • 給与・税金の不足が、振込日の3日前に見つかります。
  • 予定にない入金が、月末の消込ではなく、当日に営業へ確認されます。
  • 基準①②③が、そのまま「出納の朝のルール」として引き継げます。
明日の仕事で試すこと
  • 明朝の残高表に「前日比」の列を足す
  • 基準①の金額を1つ決める(迷ったら、月の支払で一番大きい1件の半分)
  • 当てはまる口座があるかだけ見る

応用 ― 難易度を上げる場合

毎朝同じ表を作るなら、ネットバンキングのCSVを読んで残高表を作るところをPythonにさせます(AIが作った業務ツールを、翌月も別の人も使える状態にするの型。ログイン情報は絶対にツールに持たせない)。差異の一覧は銀行残高と帳簿が合わないとき、差異の一覧を作る、週次以降の見通しは資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行うへ。