部門から集めた予算を、前提(人数・単価・件数)つきの表にして、前提のない数字を見つける
部門ごとの予算の積み上げを「科目/金額/前提(人数×単価、件数×単価、前年比、固定)」の表にし、前提が書かれていない数字と、部門間で前提が食い違う数字をAIに出させる方法です。表に整えるのはAI、前提を書くのは部門、予算の妥当性は経営。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。年度予算は、各部門がExcelで作り、経理が全社に積み上げます。5部門分が集まりました。
- 部門のExcelの形がばらばら。科目の名前も、月割か年額かも違う。積み上げる前に、揃えるだけで2日かかる。
- 「人件費 48,000」のような数字だけがあり、何人×いくらか書いていない。期中に人が増えたとき、予算との差の理由が説明できない。
- 営業部の「売上」の前提(件数×単価)と、開発部の「外注費」の前提(案件数×工数)が、案件数で食い違っている。営業は30件、開発は22件で見ている。
- 経営から「この予算の前提は」と聞かれて、部門に聞き直している。
予算が妥当かは、経営の話。この記事でやるのは、予算の数字に前提を紐づけ、前提のない数字と、部門間で食い違う前提を出すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 部門のExcelを、共通の形に揃える … 部門/科目/年額/月別/前提の種類/前提の数値。AI。
(b) 「前提」を、4種類のどれかで書いてもらう … 人数×単価/件数×単価/前年比○%/固定(契約で決まっている)。部門が書く。
(c) 前提が空欄の数字を出す … AI。
(d) 部門をまたいで同じ前提(案件数、人数、単価)を使っている数字を並べ、食い違いを出す … AI。
(e) 空欄と食い違いを部門に戻し、埋めてもらう … 人。
前提を埋めること、予算が妥当かを評価すること。AIに「人件費48,000の前提は」と聞くと、「一般的な単価から約8名相当と推定」と答えますが、それは部門が考えた前提ではありません。前提は部門が書き、妥当性は経営が見ます。AIに任せるのは、形を揃え、空欄と食い違いを出すまで。それから、食い違いをどちらに揃えるかも、部門同士と経営の話。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 形の違う部門のExcelを、共通の表に揃える(科目の対応づけは候補として)
- 「前提」が空欄の数字を出す
- 部門をまたいで同じ前提を使う数字を並べ、数値の食い違いを出す
- 前提×数値で年額を再計算し、Excelの年額と一致するかを示す
- 科目の対応づけの最終確認
- 前提の記入(各部門)
- 食い違いをどう揃えるか(部門同士・経営)
- 予算の妥当性(経営)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 部門のExcelと、共通の型
各部門の予算Excel(部門は記号、金額は千円単位)。共通の型(部門/科目/年額/前提の種類/前提の数値)を先に決めておきます。
往復1回目 ― AIが前提を推定した
②で、開発部の「人件費 48,000」の前提が「(推定:8名×6,000)」と埋まっていた。営業部の「交際費 3,600」も「(前年比+20%と推定)」。
推定が入ると、部門が「そうそう」と流して、本当の前提が書かれません。開発部は10名×4,800かもしれない。前提の違いは、期中の差異の説明を変えます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「( )書きの推定をすべて削除し、②は空欄のままにしてください。」
空欄は5部門で23科目。①の科目の対応候補は7組(「外注費」と「業務委託費」など)。
23科目の空欄を、部門ごとに分けて戻します。「前提の種類を4つから選んで、数値を書いてください」と、型を渡して頼みます。科目の対応候補7組は、経理で確定します。
往復2回目 ― 部門間の食い違い
③で「案件数:営業部 30件(売上の前提)/開発部 22件(外注費の前提)/違い 8件」が出た。「営業部の見込みが楽観的である可能性があります」と付いていた。
8件の食い違いは、これが見たかったもの。ただし「楽観的」は評価で、どちらが正しいかはAIには分かりません。開発部が22件しか受けられない体制なら、営業の30件は受注しても納品できない。逆に開発部が古い見込みで作っているだけかもしれない。
「評価の記述を削除し、③は数値の違いだけにしてください。」
表だけになった。食い違いは案件数のほか、「平均人数」(人事の採用計画と各部門の人件費の前提)でも3部門で違っていた。
営業部と開発部を同じ場に呼び、「案件数は何件で揃えるか」を決めてもらいます。経理は「揃っていない」を示すだけ。この架空例では、開発部の見込みが古く、体制の増強を前提に26件で揃えました。平均人数の食い違いは人事を交えて同じように。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 部門が前提を書いてくれない … 「前年比○%」でもよい、と伝えます。「固定」でもよい。書けない数字は、根拠のない数字として経営に見せます。
- 前提×数値が年額と合わない … 部門のExcelの計算が途中で手直しされています。合わない科目を部門に戻し、前提か年額のどちらを直すかを決めてもらいます。
- 科目の対応がつかない … 全社の科目マスタに合わせるよう部門に頼みます。来年から型を先に配ります。
- AIがまた前提を推定する … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 表の前提に、AIの推定が残っていないか。すべて部門が書いたものか。
- 前提が空欄の科目が0になったか(または「根拠なし」と経営に見せたか)。
- 部門間の食い違いが、部門同士で揃えられたか。揃えた結果が表に反映されたか。
- 経営の「この予算の前提は」に、表で答えられたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 予算の数字に前提が紐づき、期中の差異が「人数が違った」「単価が違った」で説明できます。
- 部門間の前提の食い違いが、予算の確定前に揃います。
- 来年から共通の型を先に配れるので、積み上げの2日が半日になります。
- 前提の表が、予実分析の土台になります。
- 今年の予算から、金額の大きい科目を5つ選ぶ
- それぞれ「前提の種類(人数×単価・件数×単価・前年比・固定)」を自分で書いてみる
- 書けない科目が、部門に聞くべき科目
応用 ― 難易度を上げる場合
前提つきの予算があると、期中の差異を予実差異を「数量・単価・時期のずれ」の3つに分けて、部門長に聞く質問にするで分解できます。差異を経営会議でどう並べるかは予算と実績の差を、「誰が次に何を決めるか」で並べ直すへ。