予実差異を「数量・単価・時期のずれ」の3つに分けて、部門長に聞く質問にする
前提(数量×単価)つきの予算と実績を並べ、差異を「数量の差」「単価の差」「時期のずれ(前倒し・後ろ倒し)」に機械的に分けて、部門長に聞く質問文にする方法です。分解と質問文はAI、差異の原因は部門長、AIには原因を書かせません。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。予算は「件数×単価」「人数×単価」の前提つきで作っています。月次で予実差異を出し、部門長にコメントをもらいます。
- コメントが「売上未達のため」「案件の遅れのため」で終わる。差額の言い換えで、何が起きたか分からない。
- 売上が予算比 −3,000 のとき、件数が少なかったのか、単価が下がったのか、来月にずれただけなのか、区別されていない。対応が全部違うのに。
- 「時期のずれ」は、翌月に戻ってくる差異。それを「未達」と同じに扱うと、経営が過剰に反応する。
- 部門長に「なぜ」と聞くと構えられる。「件数は何件でしたか」なら答えやすい。
差異の原因を書くのは部門長。この記事でやるのは、差異を3つに機械的に分けて、部門長が答えやすい質問にすることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 予算の前提(数量・単価)と、実績の数量・単価を並べる … 実績の数量は部門の実績データ(受注件数・稼働人数)から。
(b) 差異を「数量の差」「単価の差」に分ける … 数量の差=(実績数量−予算数量)×予算単価、単価の差=(実績単価−予算単価)×実績数量。AI。
(c) 「時期のずれ」を分ける … 予算では今月だったが、実績は来月に入る予定のもの(案件一覧の納期変更から)。AI。
(d) 3つに分けた結果を、部門長への質問文にする … 「件数が予算より4件少ない。その4件はどの案件か」。AI。
(e) 部門長が答え、それが原因になる … 人。
差異の原因を書くこと。3つに分けたあと、AIは「単価の低下は競争激化によるものと考えられます」と続けますが、それは推測です。原因は部門長が書きます。AIに任せるのは、分解と質問文まで。それから、「時期のずれ」に入れるかどうかの判断も、案件一覧の納期変更という事実がある場合だけ。「たぶん来月」をずれに入れない。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 予算の前提と実績の数量・単価から、数量の差・単価の差を計算する
- 案件一覧の納期変更から、時期のずれに当たる金額を分ける
- 3つの合計が差異の合計と一致するかを示す
- 3つそれぞれについて、部門長に聞く事実の質問文を作る
- 実績の数量・単価のデータ(部門から)
- 時期のずれとして認める根拠(納期変更の記録)
- 差異の原因(部門長)
- 経営への報告の仕方
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 前提つき予算・実績・案件一覧
今月の予算(科目/予算数量/予算単価/予算額)、実績(科目/実績数量/実績単価/実績額)、案件一覧のうち納期が変わったもの(案件記号/予算上の月/実績の月/金額)。部門は記号、金額は千円単位。
往復1回目 ― AIが原因を書いた
①で売上の差異 −3,000 が「数量の差 −2,400/単価の差 −600」に分かれた。ただし各行に「数量減は新規案件の獲得不足、単価減は値引き対応によるものと考えられる」と付いていた。
分解は正しく、原因は推測です。数量減が「獲得不足」か「納期ずれ」かは、案件一覧を見ないと分からないし、単価減が「値引き」か「案件の構成の違い」かは部門長しか知りません。禁止事項に書いていてもこうなります。
「原因の記述をすべて削除し、①〜③は数字の表、④は質問文だけにしてください。」
②で、納期変更の案件2件(計 1,800)が「時期のずれ」に分かれ、数量の差は −600 に減った。③の検算は一致。④は「件数が予算より1件少ない。どの案件か」「単価が予算より50低い。単価の低い案件はどれか」「案件PとQは来月に納期変更。来月の実績に入る見込みか」。
④の3つを部門長に送ります。「なぜ未達か」ではなく「どの案件か」を聞くので、答えが事実で返ってきます。この架空例では、件数の1件は失注、単価は大型案件が来月にずれて小型案件の比率が上がったため、でした。原因は部門長の言葉で書き、経理は書きません。
往復2回目 ― 「たぶん来月」を時期のずれに入れていた
翌月、②で案件Rが「時期のずれ」に入っていた。案件一覧の納期変更には、Rの記録がない。「実績月が空欄のため、来月にずれたと推定」と付いていた。
記録がないものを「ずれ」に入れると、失注や取消が「来月に戻る差異」に見えます。経営が過小に反応します。禁止事項に書いていてもこうなります。
「案件Rを時期のずれから外し、数量の差に戻してください。納期変更の記録がある案件だけをずれにしてください。」
Rは数量の差に戻り、④に「案件Rは実績月が空欄。納期変更か、取消か」の質問が加わった。
部門長に聞くと、案件Rは取消でした。「たぶん来月」が「取消」だった。時期のずれは、記録がある案件だけ。記録のないものは、聞くまで数量の差に置きます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 予算に数量・単価の前提がない … 前提つきの予算を先に。前提がないと分解できません。今期は金額の差だけで、来期から。
- 実績の数量が取れない科目 … 「分解不可」として金額の差のまま。取れるようにするかは部門と。
- 費用の科目にも使いたい … 人件費(人数×単価)、外注費(工数×単価)は同じ型で分解できます。固定費は分解しません。
- AIがまた原因を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 3つの合計が、差異の合計と一致しているか。
- 「時期のずれ」に入れた案件に、すべて納期変更の記録があるか。
- 表と質問文に、原因の推測が残っていないか。
- 部門長のコメントが「未達のため」から「どの案件・どの単価」に変わったか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「未達のため」が、「1件失注、大型案件が来月にずれ、案件Rは取消」になります。
- 来月に戻る差異と、戻らない差異が分かれ、経営の反応が適切になります。
- 部門長への質問が事実を聞く形になり、答えが早く返ってきます。
- 数量・単価・時期の分解が毎月たまり、「この部門は何で動くか」が見えます。
- 今月の差異がいちばん大きい科目を1つ選ぶ
- 予算の数量・単価と、実績の数量・単価を並べ、数量の差と単価の差を自分で計算する
- 大きい方について、部門長に「どの案件か」と聞く
応用 ― 難易度を上げる場合
前提つきの予算は部門から集めた予算を、前提(人数・単価・件数)つきの表にして、前提のない数字を見つける、分解した差異を経営会議で並べる型は予算と実績の差を、「誰が次に何を決めるか」で並べ直すへ。コメントの書き方は月次決算の変動分析コメントを下書きする。