連結パッケージの記入ガイドを、子会社からの質問と差戻しの理由から毎期改訂する
連結パッケージの記入ガイド(親会社が子会社に配る記入の手引き)を、その期に子会社から来た質問(要旨)と、親会社が差し戻した理由を集めてAIに分類させ、「同じ項目で複数の会社が迷った箇所」「ガイドに書いてあるのに差戻しになった箇所(書き方が伝わっていない)」「ガイドに書いていない箇所」を出して、次の期の改訂の候補にする方法です。分類と候補はAI、ガイドの改訂と連結上の扱いは連結担当と会計基準の原文・監査法人、配布は責任者。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。連結パッケージは、提出状況の表で追い、届いたら差分を見ています。記入ガイドは5年前に作ったもの。
- 子会社から毎期同じ質問が来る。「関連当事者の欄は、どこまで書くのか」「この取引は内部取引の欄か」。毎期、メールで答えている。
- 毎期同じ差戻しをしている。「この欄は税込ではなく税抜で」。ガイドに書いてあるのに。
- ガイドに書いていない項目が増えた。基準の改正で欄が足されたが、ガイドは古いまま。
- 質問と差戻しの記録が、担当者のメールに散っている。改訂しようにも、何を直せばよいかが集まらない。
項目の扱いは基準と監査法人の話。この記事でやるのは、質問と差戻しを集めて分類し、ガイドのどこを直すかを毎期決めることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) その期の子会社からの質問(会社記号/パッケージの項目/質問の要旨/回答の要旨)と、差戻しの記録(会社記号/項目/差戻しの理由)を集める … 連結担当。
(b) 項目ごとに分類し、①同じ項目で2社以上が質問した箇所、②ガイドに記載があるのに差戻しになった箇所、③ガイドに記載がない項目の質問・差戻し、④1社だけの質問(会社固有)、を出す … AI。
(c) ①②③をガイドの改訂候補にし、直す文(記入例を足す、言い方を変える、項目を足す)を連結担当が書く … 人。項目の扱いは基準の原文と監査法人で確認。
(d) 改訂したガイドを、次の期の依頼と一緒に配る。改訂箇所を先頭に書く … 責任者。
(e) 次の期、①②③が減ったかを見る … 連結担当。
質問への回答の内容、ガイドの記述、項目の連結上の扱い。AIは「この項目で3社が迷った」までで、「どう書けば正しいか」は基準の原文と監査法人との協議で決めた内容を連結担当が書きます。AIにガイドの文を書かせません。それから、子会社名と数字はAIに渡しません。記号と要旨だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 質問と差戻しを項目ごとに分類する
- 複数社の質問、記載ありの差戻し、記載なしの項目、会社固有の質問を分ける
- ガイドの目次と、質問・差戻しの項目を突き合わせて「記載の有無」を付ける
- 改訂候補の一覧(項目/種類/件数/改訂の方向は空欄)の書式
- 質問への回答の内容(連結担当。扱いは基準と監査法人)
- ガイドの改訂の文(連結担当)
- 改訂の優先順位と配布(責任者)
- 会社固有の質問への個別の対応
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 質問・差戻しの記録とガイドの目次
質問(会社記号/項目/要旨/回答の要旨)、差戻し(会社記号/項目/理由)、ガイドの目次(項目の名前と、記載のある項目)。子会社名と数字は渡しません。ガイドの本文は目次だけ(本文を渡すとAIが直しに来ます)。
往復1回目 ― AIが「記入例」を書いた
③の「改訂の方向」に、「関連当事者の欄:記入例として『役員が代表を務める会社との取引は含める』と追記」のように、ガイドの文が入っていた。
改訂候補の抽出は使えるものでした。「改訂の方向」に入ったのはガイドの文で、しかも項目の扱い(何を含めるか)を含むものです。扱いは基準の原文と監査法人で確かめて連結担当が書きます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『改訂の方向』の記述をすべて削除して空欄にしてください。」
①は項目ごとの件数。②で複数社の質問が6項目、記載ありの差戻しが4項目、記載なしの項目が3つ、1社だけが12件。③は13行の改訂候補(方向は空欄)。④は1行の型。
13行の「改訂の方向」を連結担当が書きます。複数社の質問の6項目は記入例を足す(扱いは監査法人と確認済みの回答から)。記載ありの差戻し4項目は、言い方を変えて目立たせる。記載なしの3項目は、基準の原文を確かめて項目を足す。
往復2回目 ― 「記載ありの差戻し」
②の「記載ありなのに差戻し」の4項目について、「子会社がガイドを読んでいない可能性が高く、読了の確認を義務づけるべきです」と付いていた。
4項目の抽出は大事。「読んでいない」「読了を義務づける」は推測と運用の判断で、実際はガイドの該当箇所が別のページの注に小さく書いてあっただけでした。読んでいないのではなく、見つからない。
「推測と運用の記述を削除し、②は表だけにしてください。」
表だけになった。
4項目のガイドの記載を見ると、3つは注に小さく、1つは用語が子会社の帳簿の用語と違う。記載を項目のすぐ横に移し、用語を子会社の側に合わせます。改訂箇所をガイドの先頭に列挙して配布。決めたのは連結担当と責任者。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 質問と差戻しの記録が今期分しかない … 今期分で始めます。④の型で来期から溜まります。
- 改訂候補が多すぎて全部直せない … 会社数の多い順に。1社だけの質問は個別に答えて、ガイドには載せません。
- 基準の改正で項目が変わり、ガイドの構成ごと変える必要がある … 構成の変更は基準の原文と監査法人と。この記事の分類は、構成が決まった後の記入例と言い方の話。
- AIがまたガイドの文や推測を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 改訂候補のすべてに、改訂の方向と、扱いの確認先(基準・監査法人)の記録があるか。
- 次の期、複数社の質問と記載ありの差戻しが減ったか。減っていない項目は、改訂の文を見直す。
- 改訂箇所が、ガイドの先頭に列挙されて配られたか。
- ガイドに、AIが書いた文や扱いが混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 毎期同じ質問と差戻しが、ガイドの改訂で減ります。
- 改訂の候補が、担当者のメールではなく分類された一覧から出ます。
- 基準の改正で足された項目が、ガイドに載り遅れなくなります。
- 質問と差戻しの記録が、次の期の改訂の元になります。
- 直近の期に子会社から来た質問を、思い出せるだけ項目ごとに書く
- 同じ項目が2社以上あれば、ガイドのその項目を開いて記入例があるかを見る
- なければ、それが最初の改訂候補
応用 ― 難易度を上げる場合
提出状況は連結パッケージの提出状況を、子会社ごとの「到着・差戻し・確定」の進捗表にする、差分の確認は子会社から来た連結パッケージの「前回と違うところ」だけ確認するへ。同じ問い合わせへの答えの型は同じ問い合わせに、また一から答えているとき。