経理に関わる規程(経理・購買・旅費・与信)の間で矛盾している箇所を洗い出す
経理規程・購買規程・旅費規程・与信管理規程のように、経理の業務に関わる複数の規程から「同じことを定めている条文」を並べ、金額・承認者・期限が食い違っている箇所をAIに出させる方法です。並べるのはAI、どちらに揃えるかと改定は各規程の所管部門と法務。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経理の業務に関わる規程が、経理規程・購買規程・旅費規程・与信管理規程の4本あります。所管部門も作られた時期も違います。
- 購買規程では「○円以上は部長承認」、経理規程では「○円以上は役員承認」。金額の線が違う。現場から「どっちですか」と聞かれて、答えられない。
- 旅費規程の精算期限は「翌月10日」、経理規程の経費精算の締めは「翌月5日」。旅費規程どおりに出すと、経理規程の締めに間に合わない。
- 与信管理規程の「与信限度額の見直し」は年1回、経理規程の「債権の区分の見直し」は四半期。関係があるのに、周期が違う。
- 監査法人から「規程間の整合はとれていますか」と聞かれた。1本ずつは点検したが、規程同士を並べたことはない。
規程をどう直すかは、所管部門と法務の話。この記事でやるのは、複数の規程から同じことを定めている条文を並べ、食い違いを出すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 4本の規程を、条ごとの表にする … 規程名/条番号/見出し/条文(原文)。AI(規程と実務のずれと同じ)。
(b) 「同じことを定めている条文」を、規程をまたいで束ねる … 承認の金額基準、精算の期限、見直しの周期、証憑の保存。AI(候補として)。
(c) 束ねた条文の間で、金額・承認者・期限・周期が違う箇所を出す … AI。
(d) 違いが「意図した違い」か「放置された矛盾」かを所管部門に聞き、直すかどうかを決める … 人。
どちらの規程に揃えるかを決めること、改定案を確定すること。AIに「どちらが正しいか」と聞くと、「上位規程である経理規程を優先すべきです」と答えますが、どの規程が上位かは貴社の規程体系で決まっていて、AIは知りません。揃え方は所管部門と法務、改定は社内の手続き。AIに任せるのは、条文を並べて違いを出すまで。それから、「意図した違い」(購買の承認と支払の承認が別々にあるのは当然、など)を「矛盾」と決めつけない。意図があるかは所管部門に聞きます。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 各規程を条ごとの表にする(原文のまま)
- 規程をまたいで「同じことを定めている条文」の候補を束ねる
- 束ねた条文の間で、金額・承認者・期限・周期・用語の違いを出す
- 所管部門への確認文の下書き(「この違いは意図したものですか」)
- 束ね方が正しいか(本当に同じことを定めているか)
- 違いが意図したものか、放置された矛盾か(所管部門に聞く)
- どちらに揃えるか(所管部門・法務)
- 改定の手続き
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 4本の規程
経理規程・購買規程・旅費規程・与信管理規程の全文。社内文書なので、社名を伏せて貼ってよいかを社内ルールで確認します。
往復1回目 ― AIが「上位規程」を決めた
③で「承認の金額基準:購買規程 部長承認/経理規程 役員承認/矛盾。経理規程が上位規程と考えられるため、購買規程を改定すべき」と書かれていた。
どの規程が上位かは、貴社の規程体系(規程管理規程など)で決まっていて、AIは知りません。しかも、購買の承認(発注の可否)と経理の承認(支払の可否)は別の行為で、金額の線が違うのは意図かもしれません。「矛盾」「改定すべき」は評価と判断。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『上位』『矛盾』『改定すべき』の記述を削除し、③は違いの事実だけにしてください。」
③は7テーマで違いあり。承認の金額基準(2規程)、精算の期限(2規程)、見直しの周期(2規程)、証憑の保存年数(3規程で3通り)、「承認」「決裁」「承諾」の用語(4規程でばらばら)など。
7テーマを所管部門に「この違いは意図したものですか」と聞きます。この架空例では、承認の金額基準は意図した違い(発注と支払は別)、精算の期限は放置された矛盾(旅費規程が古い)、保存年数は誰も意図していなかった、でした。意図の有無を聞いて初めて、直すものが分かります。
往復2回目 ― 「束ね方」の取り違え
②で「見直しの周期」として、与信管理規程の「与信限度額の見直し(年1回)」と経理規程の「債権の区分の見直し(四半期)」が束ねられていた。
与信限度額と債権の区分は、関係はあるが同じことではありません。束ねて「周期が違う」と出すと、片方に揃える議論になり、両方必要なものが片方消えかねません。束ね方の確認は人。
「この2条は別のテーマに分けてください。『関係はあるが別のことを定めている』として、備考に残してください。」
2つのテーマに分かれ、備考に「関係あり(与信の見直し結果が債権の区分に影響し得る)」と残った。
備考の「関係あり」を、与信の所管(営業管理)と経理で話します。周期を揃えるのではなく、「与信の見直し結果を経理に共有する」を規程か運用に足す方向で、法務に相談しました。矛盾を直すのではなく、つなぎを足した例です。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 規程が多すぎる … 経理の業務に直接関わる条だけを先に。「承認」「精算」「期限」「保存」の語を含む条から。
- 所管部門が「意図した違い」と言うが、現場が困っている … 現場の困りごと(規程と実務のずれの②)と一緒に所管部門に見せます。意図と実態のずれは、改定の材料。
- 用語のばらつき(承認・決裁・承諾) … 直すなら全規程を一度に。1本だけ直すと、別のばらつきが生まれます。法務と。
- AIがまた評価する … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- ③に「矛盾」「上位」「改定すべき」の評価が残っていないか。
- 束ねた条文が、本当に同じことを定めているかを、人が読んで確かめたか。
- 違いの全部について、所管部門に「意図したものか」を聞き、記録したか。
- 監査法人の「規程間の整合は」に、一覧と確認結果で答えられたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 現場の「どっちですか」に、「意図した違い」か「直す予定」かで答えられます。
- 放置された矛盾(古い規程の期限)が、直す手続きに乗ります。
- 規程同士の「つなぎ」(与信の結果を経理に共有する等)が、運用に足されます。
- 規程をまたいだ一覧が、監査法人への説明資料と、次の改定の台帳になります。
- 経理規程と旅費規程から、「精算の期限」を定めた条をそれぞれ探す
- 2つの期限を並べて、同じか違うかを見る
- 違っていたら、旅費規程の所管部門に「意図した違いですか」と聞く
応用 ― 難易度を上げる場合
1本の規程と実務のずれは経理規程と実務のずれを、規程の条文ごとに点検するへ。承認の金額基準が実際に守られているかは決裁基準(金額・承認者)と実際の承認記録を突き合わせ、基準と違う承認を出すで確かめます。