在外子会社への質問を、「事実・期限・返し方」だけの英文にAIで下書きし、送る前に人が確かめる
在外子会社の連結パッケージや残高について聞きたいことを、日本語で「何が・どこが・いつまでに・どう返してほしいか」を書いてからAIに英文の下書きをさせ、送る前に「聞きたいことが1つずつ分かれているか」「期限と返し方があるか」「余計な推測や指示が入っていないか」を人が確かめる方法です。下書きはAI、質問の中身と送る判断は連結担当、数字の扱いは置き換え。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。在外子会社が3社あり、連結パッケージの差分確認で気になった点を、英文のメールで聞きます。これが重い。
- 英文を書くのに30分かかる。辞書を引きながら、失礼にならないように、と考えていると進まない。
- 返事が的外れ。「この残高の内訳を教えて」と聞いたつもりが、「残高は正しい」とだけ返ってくる。何を返してほしいかが伝わっていない。
- 1通に質問を5つ詰め込むと、2つしか返ってこない。残りをまた聞く。
- 期限を書かないと、返事が決算の後に来る。
英語力の話ではありません。この記事でやるのは、質問を「事実・期限・返し方」の型に日本語で整理してから、AIに英文を下書きさせ、送る前に型どおりかを確かめることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 質問の型を決める … 何について(資料名・行・項目)/何が気になるか(事実:前回との差、他の資料との不一致)/いつまでに/どう返してほしいか(数字の内訳・理由の1行・修正版の再提出、のどれか)。
(b) 聞きたいことを、型に沿って日本語で1つずつ書く … 連結担当。数字は記号か丸め。
(c) 日本語の質問を、1問1段落の英文に下書きする … AI。
(d) 送る前に確かめる … 人。①質問が1つずつ分かれているか、②期限と返し方があるか、③日本語にない推測・指示・評価が入っていないか、④数字の置き換えを戻したか。
(e) 返事が来たら、質問ごとに「返ってきた・返ってきていない」を記録する … 連結担当。
何を聞くかを決めること、送るかどうかを決めること、返事をどう受け止めるか。AIは日本語を英文にするだけで、質問の中身は連結担当が差分確認から決めます。それから、子会社名・相手の名前・実際の数字はAIに渡しません。子会社は記号、数字は「前回比で増加」のように丸めるか記号にして、送る前に人が戻します。AIに「子会社の回答が正しいか」を聞きません。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 型に沿った日本語の質問を、1問1段落の英文に下書きする
- 期限と返し方を、各質問の末尾に同じ形で入れる
- 丁寧さの度合いを揃える(過度に長くしない)
- 返事が来たあと、返事の英文を日本語に直す(内容の評価はしない)
- 何を聞くか(差分確認から)
- 送る前の4点の確認と、置き換えた数字を戻す作業
- 送るかどうか、誰に送るか
- 返事の内容の受け止め(連結処理への影響は責任者と)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 日本語で型に沿った質問
子会社は記号(S-A)。数字は「前回比で大きく増加」「他の資料の数字と一致しない」のように、実際の値を入れずに書きます。送る前に人が実際の値に戻します。
往復1回目 ― AIが「原因の推測」を足した
質問2(売掛金の残高が前回比で大きく増えている。内訳を教えてほしい)の英文に、「おそらく大口の売上が計上されたためと思われますが」という一文が足されていた。
日本語にない原因の推測です。これが入ると、子会社は「はい、大口の売上です」と返しやすくなり、本当の理由(たとえば入金の遅れ)が返ってこないかもしれません。禁止事項に書いていてもこうなります。
「日本語にない推測の文を削除してください。質問2は、事実と、内訳を返してほしいことだけにしてください。」
3段落とも、事実・期限・返し方の形になった。対照表で、日本語と英文が1対1で対応していることを確かめられる。
4点を確かめ、記号と丸めた表現を実際の会社名と数字に戻します。戻したあと、もう一度読んで送ります。送り先は子会社の経理担当者と、その上司をCC。
往復2回目 ― 返事の受け止め
返事が来たので、英文を日本語に直させた(数字は置き換えて渡した)。訳の末尾に「質問3への回答は不十分で、再度確認が必要です」と付いていた。
訳は使えるものでした。「不十分」「再確認が必要」は返事の評価で、質問3の返事が十分かは、こちらが何を知りたかったかを知っている連結担当が決めます。
「評価の記述を削除し、訳だけにしてください。」
訳だけになった。
質問ごとに「返ってきた・返ってきていない」を記録します。質問3は「返し方」を「修正版の再提出」と書いたのに、理由の説明だけが返ってきたので、質問3だけをもう一度、返し方を太字にして送ります。連結処理への影響は責任者と相談。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 質問が5つ以上ある … 2通に分けます。1通に3問まで。返ってこない質問が減ります。
- 子会社の担当者が英語も母語でない … 文を短く、1文1内容に。AIに「短い文で」と頼みます。
- 返事が来ない … 期限の翌日に、同じ質問番号で「返事をお待ちしています」だけを送ります。新しい質問を足しません。
- AIがまた推測や評価を足す … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 送った質問すべてに、期限と返し方が書いてあるか。
- 送る前に、記号と丸めた表現がすべて実際の値に戻っているか。記号のまま送っていないか。
- 返事が、質問の数と同じ数だけ返ってきているか。返ってきていない質問に、再送の記録があるか。
- 英文に、日本語にない推測・指示・評価が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 英文の質問が、30分から10分になります。
- 「事実・期限・返し方」があるので、的外れな返事が減ります。
- 質問ごとの「返ってきた・いない」の記録で、再送が漏れません。
- 型に沿った質問が、子会社の側の「親会社はこう聞いてくる」の学習になります。
- 最近送った英文の質問を1通開き、「期限」と「返し方」が書いてあるか見る
- なければ、その返事が的外れだった理由はそこにある
- 次の質問を、日本語で「何について/何が/いつまでに/どう返す」の4行で書いてみる
応用 ― 難易度を上げる場合
差分確認は子会社から来た連結パッケージの「前回と違うところ」だけ確認する、提出状況は連結パッケージの提出状況を、子会社ごとの「到着・差戻し・確定」の進捗表にするへ。換算レートと決算日は在外子会社の換算に使うレートと決算日を、子会社ごとの一覧にして毎期確かめる。