連結 › 在外子会社活用案

在外子会社への質問を、「事実・期限・返し方」だけの英文にAIで下書きし、送る前に人が確かめる

在外子会社の連結パッケージや残高について聞きたいことを、日本語で「何が・どこが・いつまでに・どう返してほしいか」を書いてからAIに英文の下書きをさせ、送る前に「聞きたいことが1つずつ分かれているか」「期限と返し方があるか」「余計な推測や指示が入っていないか」を人が確かめる方法です。下書きはAI、質問の中身と送る判断は連結担当、数字の扱いは置き換え。

AI操作難易度★★☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。在外子会社が3社あり、連結パッケージの差分確認で気になった点を、英文のメールで聞きます。これが重い。

  • 英文を書くのに30分かかる。辞書を引きながら、失礼にならないように、と考えていると進まない。
  • 返事が的外れ。「この残高の内訳を教えて」と聞いたつもりが、「残高は正しい」とだけ返ってくる。何を返してほしいかが伝わっていない。
  • 1通に質問を5つ詰め込むと、2つしか返ってこない。残りをまた聞く。
  • 期限を書かないと、返事が決算の後に来る。

英語力の話ではありません。この記事でやるのは、質問を「事実・期限・返し方」の型に日本語で整理してから、AIに英文を下書きさせ、送る前に型どおりかを確かめることです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 質問の型を決める … 何について(資料名・行・項目)/何が気になるか(事実:前回との差、他の資料との不一致)/いつまでに/どう返してほしいか(数字の内訳・理由の1行・修正版の再提出、のどれか)。
(b) 聞きたいことを、型に沿って日本語で1つずつ書く … 連結担当。数字は記号か丸め。
(c) 日本語の質問を、1問1段落の英文に下書きする … AI。
(d) 送る前に確かめる … 人。①質問が1つずつ分かれているか、②期限と返し方があるか、③日本語にない推測・指示・評価が入っていないか、④数字の置き換えを戻したか。
(e) 返事が来たら、質問ごとに「返ってきた・返ってきていない」を記録する … 連結担当。

ここはAIを使わない

何を聞くかを決めること、送るかどうかを決めること、返事をどう受け止めるか。AIは日本語を英文にするだけで、質問の中身は連結担当が差分確認から決めます。それから、子会社名・相手の名前・実際の数字はAIに渡しません。子会社は記号、数字は「前回比で増加」のように丸めるか記号にして、送る前に人が戻します。AIに「子会社の回答が正しいか」を聞きません。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 型に沿った日本語の質問を、1問1段落の英文に下書きする
  • 期限と返し方を、各質問の末尾に同じ形で入れる
  • 丁寧さの度合いを揃える(過度に長くしない)
  • 返事が来たあと、返事の英文を日本語に直す(内容の評価はしない)
人が判断する
  • 何を聞くか(差分確認から)
  • 送る前の4点の確認と、置き換えた数字を戻す作業
  • 送るかどうか、誰に送るか
  • 返事の内容の受け止め(連結処理への影響は責任者と)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 日本語で型に沿った質問

子会社は記号(S-A)。数字は「前回比で大きく増加」「他の資料の数字と一致しない」のように、実際の値を入れずに書きます。送る前に人が実際の値に戻します。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。渡すのは記号と丸めた表現に置き換えた日本語の質問だけで、子会社名や実際の数字は渡しません。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は親会社の連結決算担当です。在外子会社の経理担当者に、連結パッケージについての質問を英文で送りたいと考えています。読み手は子会社の経理担当者(英語は業務で使うが母語ではない)です。 【事実/入力】 ・以下に、日本語の質問を3つ貼ります。それぞれ「何について/何が気になるか/いつまでに/どう返してほしいか」の形で書いてあります ・子会社は記号(S-A)、数字は丸めた表現にしてあります。送る前に私が実際の値に戻します ・質問の中身と、送るかどうかは私が決めます 【依頼】 ①日本語の質問を、1問1段落の英文にしてください。段落の先頭に番号を付けてください ②各段落の末尾に、期限と返し方を同じ形で入れてください ③冒頭と結びは2文以内にしてください ④日本語にない内容(原因の推測、修正の指示、評価)は入れないでください 【出力の型】 英文のメール本文(番号つきの3段落+冒頭・結び) その下に、各段落が日本語のどの質問に対応するかの対照表 【禁止事項】 ・日本語の質問にない原因の推測や、「〜すべき」という指示を入れないでください ・数字の丸めた表現を、具体的な数字に置き換えないでください ・記号(S-A)を実際の会社名に置き換えないでください

往復1回目 ― AIが「原因の推測」を足した

AIの初稿

質問2(売掛金の残高が前回比で大きく増えている。内訳を教えてほしい)の英文に、「おそらく大口の売上が計上されたためと思われますが」という一文が足されていた。

ここが問題

日本語にない原因の推測です。これが入ると、子会社は「はい、大口の売上です」と返しやすくなり、本当の理由(たとえば入金の遅れ)が返ってこないかもしれません。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「日本語にない推測の文を削除してください。質問2は、事実と、内訳を返してほしいことだけにしてください。」

修正版

3段落とも、事実・期限・返し方の形になった。対照表で、日本語と英文が1対1で対応していることを確かめられる。

人が最後にやること

4点を確かめ、記号と丸めた表現を実際の会社名と数字に戻します。戻したあと、もう一度読んで送ります。送り先は子会社の経理担当者と、その上司をCC。

往復2回目 ― 返事の受け止め

AIの初稿

返事が来たので、英文を日本語に直させた(数字は置き換えて渡した)。訳の末尾に「質問3への回答は不十分で、再度確認が必要です」と付いていた。

ここが問題

訳は使えるものでした。「不十分」「再確認が必要」は返事の評価で、質問3の返事が十分かは、こちらが何を知りたかったかを知っている連結担当が決めます。

追加で出した指示

「評価の記述を削除し、訳だけにしてください。」

修正版

訳だけになった。

人が最後にやること

質問ごとに「返ってきた・返ってきていない」を記録します。質問3は「返し方」を「修正版の再提出」と書いたのに、理由の説明だけが返ってきたので、質問3だけをもう一度、返し方を太字にして送ります。連結処理への影響は責任者と相談。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 質問が5つ以上ある … 2通に分けます。1通に3問まで。返ってこない質問が減ります。
  • 子会社の担当者が英語も母語でない … 文を短く、1文1内容に。AIに「短い文で」と頼みます。
  • 返事が来ない … 期限の翌日に、同じ質問番号で「返事をお待ちしています」だけを送ります。新しい質問を足しません。
  • AIがまた推測や評価を足す … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 送った質問すべてに、期限と返し方が書いてあるか。
  2. 送る前に、記号と丸めた表現がすべて実際の値に戻っているか。記号のまま送っていないか。
  3. 返事が、質問の数と同じ数だけ返ってきているか。返ってきていない質問に、再送の記録があるか。
  4. 英文に、日本語にない推測・指示・評価が混ざっていないか。

7. 注意点

子会社名・相手の名前・実際の数字はAIに渡しません。記号と丸めた表現で渡し、送る前に人が戻します。社内ルールで確認してください。
質問の中身と、返事の評価はAIがしません。連結担当が差分確認から決め、返事の受け止めは責任者と。
英文を送る前に、必ず人が読みます。置き換えの戻し忘れは、相手に意味が通じません。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 英文の質問が、30分から10分になります。
  • 「事実・期限・返し方」があるので、的外れな返事が減ります。
  • 質問ごとの「返ってきた・いない」の記録で、再送が漏れません。
  • 型に沿った質問が、子会社の側の「親会社はこう聞いてくる」の学習になります。
明日の仕事で試すこと
  • 最近送った英文の質問を1通開き、「期限」と「返し方」が書いてあるか見る
  • なければ、その返事が的外れだった理由はそこにある
  • 次の質問を、日本語で「何について/何が/いつまでに/どう返す」の4行で書いてみる

応用 ― 難易度を上げる場合

差分確認は子会社から来た連結パッケージの「前回と違うところ」だけ確認する、提出状況は連結パッケージの提出状況を、子会社ごとの「到着・差戻し・確定」の進捗表にするへ。換算レートと決算日は在外子会社の換算に使うレートと決算日を、子会社ごとの一覧にして毎期確かめる。