在外子会社の換算に使うレートと決算日を、子会社ごとの一覧にして毎期確かめる
在外子会社の財務諸表を換算するときに使う「レートの種類・出所・基準日」と「子会社の決算日・通貨・会計基準」を子会社ごとの一覧にし、前期と変わった点と出所が書けない点をAIに出させる方法です。レートの取得と一覧の確認は人、換算の方法は基準の原文と監査法人、AIにはレートも方法も決めさせません。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。海外に子会社が3社あります(通貨は3種類)。四半期ごとに、各社の財務諸表を日本円に換算して連結します。換算のExcelは前任者のものです。
- Excelの「レート」シートに数字が入っているが、どこから取ったレートか、いつ時点かが書いていない。期中平均なのか期末なのか、どの銀行・どの公表値なのか。
- 子会社の決算日が、親会社と違う社がある。その社のレートの基準日を、親会社の期末にしているのか子会社の期末にしているのか、Excelを見ても分からない。
- ある子会社が、今年から現地の会計基準を変えた(と報告書に書いてあった)。換算の前に、何か手当てが要るのか。前任者はどうしていたか。
- 監査法人から「レートの根拠資料を」と言われて、去年どう答えたかが残っていない。
換算の方法と、在外子会社の会計処理の修正は、基準と監査法人の話。この記事でやるのは、「どのレートを、どこから、いつ時点で使ったか」と「各社の前提」を一覧にし、前期と変わった点を出すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 子会社ごとの「前提」を一覧にする … 子会社記号/通貨/決算日/現地の会計基準/連結に使う財務諸表の日付。
(b) 使うレートを一覧にする … 子会社記号/レートの種類(期末・期中平均・取得時など、Excelの用途ごと)/出所/基準日/取得者/根拠資料のファイル名。
(c) 前期の一覧と並べ、変わった点・書けない点を出す … AI。
(d) 変わった点について、理由と扱いを監査法人と確認する … 人。
レートそのものを取ること、換算の方法を決めること、在外子会社の会計処理をどう修正するか。AIに「今期末のドル円レートはいくらか」と聞いてはいけません(AIは為替データを持っておらず、もっともらしい数字を作ります)。レートは決めた出所(銀行・公表値)から人が取ります。換算の方法と修正は、基準の原文と監査法人と。AIに任せるのは、一覧の整理と、前期との違いの抽出まで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 換算Excelの数式から、どのレートがどの科目に使われているかを読み取って一覧にする
- 今期の一覧と前期の一覧を並べ、レートの出所・基準日・子会社の前提が変わった点、空欄の点を出す
- 監査法人に渡す「換算の前提一覧」の形に整える
- 子会社に確認する質問文(決算日・会計基準の変更)の下書き
- レートの取得(決めた出所から)
- 子会社の前提の確認(子会社の経理に聞く)
- 変わった点の扱い(基準の原文と監査法人)
- 換算Excelの修正
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 換算Excelの数式と、前期の一覧
換算Excelを「数式の表示」で貼ります(金額はダミー、子会社名は記号)。前期の「換算の前提一覧」があればそれも。なければ、前期の監査法人への提出資料から拾います。
往復1回目 ― AIがレートの出所を「補完」した
②の「出所」に「(一般的には期末日の電信売買相場の仲値)」「(期中平均は月次の仲値の平均)」と書かれていた。
それは一般論で、貴社がどこから取っているかは分かりません。前任者が特定の銀行の公表値を使っていたなら、一般論の出所で置き換えると数字が変わります。空欄は「これから確かめる」の印です。禁止事項に書いていてもこうなります。
「出所・基準日・取得者の( )書きをすべて削除し、空欄のままにしてください。」
空欄になった。①から、子会社Sは期末レートと期中平均レートの2種類、子会社Tは3種類(取得時レートが固定資産に使われていた)、子会社Uは2種類、と分かった。
前任者のメールと前期の監査法人への提出資料から、出所と基準日を拾って埋めます。この架空例では、期末レートは「銀行Xの公表値」、期中平均は「同じ銀行の月次の平均を経理で計算」でした。「経理で計算」なら、その計算Excelも根拠資料として一覧に書きます。
往復2回目 ― 子会社の前提が変わっていた
③で「子会社T:会計基準 前期『現地基準』→ 今期『国際的な基準』(子会社の報告書の記載より)/違い:会計基準の変更」が出た。末尾に「基準の変更に伴い、連結上の修正項目の見直しが必要です」と書かれていた。
会計基準の変更の抽出は、これが見たかったもの。ただし「修正項目の見直しが必要」は、基準の内容に踏み込んだ判断で、AIがしてよいものではありません。何をどう修正するかは、基準の原文と監査法人と。
「修正の要否に関する記述を削除してください。③は違いの表だけにしてください。」
表だけになった。違いは子会社Tの会計基準と、子会社Uの決算日(前期12月→今期3月に変更)の2点。
子会社TとUの経理に、変更の事実と時期を確認します。2点とも、監査法人に「前期からこう変わりました」として、四半期の締めの前に伝えます。換算にどう反映するかは、基準の原文を確認したうえで監査法人と協議します。この記事では扱いません。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 前期の一覧がない … 前期の監査法人への提出資料と、換算Excelの前期版から拾って作ります。拾えない項目は「前期:不明」。今期から一覧を残します。
- 換算Excelの数式が複雑で、レートの使われ方が読めない … 前任者のExcelを渡されたが、どこを触っていいのかわからないときの型で、シートごとに分けて読ませます。
- 子会社からの報告書に決算日・会計基準の記載がない … 子会社の経理に聞きます。「変わっていないと思う」で済ませない。
- AIがまたレートや方法を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 一覧の出所・基準日・取得者が、すべて人が確かめたものか。AIの一般論が残っていないか。
- 換算Excelで使われているレートの全部が、一覧に載っているか。①の行数と一覧の行数が合うか。
- 子会社の前提(通貨・決算日・会計基準)の変更を、子会社に確認し、監査法人に伝えたか。
- 監査法人の「レートの根拠資料を」に、一覧のファイル名で答えられたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「どのレートを、どこから、いつ時点で」が、一覧のファイル名で即答できます。
- 子会社の決算日や会計基準の変更が、四半期の締めの前に見つかります。
- 前任者の換算Excelが、一覧つきで引き継げる状態になります。
- 監査法人との協議が、「前提はこうです。ここが変わりました」から始められます。
- 換算Excelの「レート」シートを開き、レートの数を数える
- 1つ選んで、「どこから取ったか」「いつ時点か」を書いてみる。書けなければ、それが最初の空欄
- 子会社1社の直近の報告書で、決算日と会計基準の記載を探す
応用 ― 難易度を上げる場合
子会社から届くパッケージの前回との差分は子会社から来た連結パッケージの「前回と違うところ」だけ確認する、親子間の照合はグループ間債権債務・取引高の照合を自動化するへ。「前提を一覧にして前期と比べる」型は保有する有価証券の時価の「取り方」を、銘柄ごとの一覧にすると同じです。為替の変動そのものへの備えは資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行うのシナリオで。