経理への問い合わせを1か月分集めて、「答え方を変える・仕組みを変える・そのまま」に仕分ける
経理に来る問い合わせ(メール・チャット・口頭)を1か月分「日付/誰から(部門)/何について/答えた内容の種類/かかった時間」で記録し、AIに種類ごとの件数と時間を集計させて、「同じ答えを繰り返している」「答えより仕組みを直す方が早い」「そのまま答えればよい」の3つに仕分ける材料にする方法です。集計と仕分けの候補はAI、どれを直すかは経理責任者、直す作業は人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。経理には1日に何件も問い合わせが来ます。同じ問い合わせの答えの型は作ってあります。でも。
- 問い合わせにどのくらい時間を使っているか、誰も知らない。「多い気がする」だけ。
- 答えの型で対応できる問い合わせと、そうでないものの割合が分からない。
- 「そもそもこの問い合わせが来ないようにできるのでは」と思う質問がある。経費精算の画面が分かりにくいせいで来る質問とか。
- 問い合わせに応じるのが「良いこと」になっていて、減らす話ができない。
問い合わせを断る話ではありません。この記事でやるのは、1か月分を記録して集計し、「答え方を変える・仕組みを変える・そのまま」に仕分けて、減らせるものを減らすことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 記録の型を決める … 日付/誰から(部門)/何について(自由記述1行)/答えた内容の種類(型で答えた・調べて答えた・他部署に回した・答えられなかった)/かかった時間(5分刻み)。
(b) 1か月、問い合わせのたびに1行書く … 経理の全員。
(c) 「何について」を種類にまとめ、種類ごとの件数・時間・答えた内容の種類の内訳を出す … AI。
(d) 種類ごとに、「答え方を変える(型を作る・FAQに載せる)」「仕組みを変える(画面・手順・ルールを直す)」「そのまま(答えるのが仕事)」の候補を出す … AI(候補まで)。
(e) 候補を見て、今月直すものを2つまで決める … 経理責任者。
どれを直すか、仕組みを変える話を他部署に持っていくか。「経費精算の画面を直す」は情報システム部門や総務との話で、経理責任者が判断して持っていきます。AIは「この種類は仕組みを変える候補」までしか出せません。それから、問い合わせの本文と個人名はAIに渡しません。「何について」の1行と部門と種類だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 「何について」の自由記述を種類にまとめる
- 種類ごとの件数・時間・答えた内容の種類の内訳を出す
- 種類ごとに「答え方を変える・仕組みを変える・そのまま」の候補を、理由つきで出す
- 翌月に比べるための集計の書式
- 記録の記入(経理の全員)
- 今月直すもの(経理責任者、2つまで)
- 仕組みを変える話を他部署に持っていくか
- 「そのまま」でよいかの判断(答えるのが仕事の問い合わせは減らさない)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 1か月分の記録
記録の一覧(日付/部門/何について/答えた内容の種類/時間)。問い合わせの本文、個人名、金額は渡しません。
往復1回目 ― AIが「直すべき」と決めた
③の上位は「経費精算の入力方法」「支払日はいつか」「請求書の宛名・書式」「科目はどれか」「前払・立替の扱い」。②で「経費精算の入力方法」に「仕組みを変える。最優先で画面の改修を行うべきです」とあった。
上位5種類と時間は見たかったもの。「最優先で改修すべき」は判断で、画面の改修は情報システム部門の予算と順番の話です。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『すべき』『最優先』の記述を削除し、②は候補と理由だけにしてください。」
①は18種類。上位5種類で合計時間の6割。②で「答え方を変える」が7種類、「仕組みを変える」が5種類、「そのまま」が6種類。
責任者として、今月直すのは2つ。「支払日はいつか」(答え方を変える:支払日の一覧を共有フォルダに置いて案内する)と、「請求書の宛名・書式」(仕組みを変える:取引先向けの案内を営業経由で送る)。「経費精算の入力方法」は情報システム部門に、集計の数字を添えて相談します。判断は責任者。
往復2回目 ― 「答えられなかった」の扱い
①で「答えられなかった」が9件。付記に「答えられなかった件は担当者の知識不足が原因と考えられるため、研修を検討してください」とあった。
9件の事実は大事。「知識不足」「研修」は人への評価と対応の判断で、9件の中身を見ないと、そもそも経理が答える質問でなかったのかもしれません。
「評価の記述を削除し、『答えられなかった』9件の種類の内訳だけを出してください。」
9件のうち6件が「契約の条件(値引き・支払サイト)」で、経理ではなく営業か法務が答える内容。3件が「新しい制度の扱い」で、税理士に確認が必要だったもの。
6件は「他部署に回す」種類として、回す先を答えの型に足します。3件は「税理士に確認する」を答えの型に。研修ではなく、型の追加。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 記録を書く時間がない … 「何について」は3語でよい。時間は5分刻み。1件1分で書けなければ、型が重すぎる。
- 口頭の問い合わせが記録から漏れる … 漏れてよい。まず記録できたものだけで集計します。翌月から口頭も。
- 「そのまま」が多くて減らせるものがない … それは問い合わせに答えるのが経理の仕事の一部だという結果。時間を予定に組み込みます。
- AIがまた判断や評価を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 今月直した2つの種類の件数が、翌月減ったか。減っていなければ、直し方を変える。
- 問い合わせの合計時間が、月次の作業時間の中で見えるようになったか。
- 「答えられなかった」に、回す先か確認先が付いたか。
- 集計に、AIの判断や人への評価が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 問い合わせに使う時間が、「多い気がする」から数字になります。
- 毎月2つずつ直すので、半年で上位の種類が入れ替わります。
- 「答えられなかった」が、回す先の型に変わります。
- 集計の数字が、他部署に仕組みの改修を頼むときの根拠になります。
- 明日1日、来た問い合わせを「部門/何について/種類/時間」の4つで書く
- 夕方、何件・何分だったかを数える
- 1日でその数なら、1か月でどのくらいかを掛け算してみる
応用 ― 難易度を上げる場合
答えの型は同じ問い合わせに、また一から答えているとき、経費精算の差戻しは経費精算の差戻し理由を集計して、申請前のチェック項目にするへ。仕事の仕分けは経理の仕事を「やめる・減らす・まとめる・任せる」に仕分ける。