経理の仕事を「やめる・減らす・まとめる・任せる」に仕分ける
棚卸し表に「仕分け」の列を足し、承認・確認の工程を先に人が「残す」と書いてから、残りを4つに仕分ける方法です。仕分け案はAI、「残す」の指定と「やめる」の最終判断(出力を1か月追う)は人が行います。
1. Before ― 手元はどうなっているか
サンライズソリューションズ株式会社。連作①で棚卸し表ができ、②で属人化が1つ減り、③で締めの鎖が見えました。部長が言います。「じゃあ、この70行、減らせないのか」。
- 減らしたい気持ちはある。ただ、どれを減らしていいかわからない。
- 「これ何のためにやってるんだっけ」という作業が、いくつかある。前任者から引き継いだままのもの。
- やめて怒られるのが怖い。誰かが使っているかもしれない。
- 逆に、「チェック」と名のつく作業を減らそうとして、上司に止められたことがある。減らしていい作業と、減らしてはいけない作業の区別が、自分の中にない。
減らす話は、「減らす」の一言では進みません。4つに分けると進みます。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
棚卸し表に列を1つ足します。仕分け。値は4つ。
やめる … 出力を誰も使っていない作業
減らす … 頻度を落とす、対象を絞る(毎月→四半期、全件→金額の大きいものだけ)
まとめる … 同じ入力を使う作業を1つにする、2人でやっているものを1人にする
任せる … 他部署・システム・ツールに移す
そして、4つのどれにも入れてはいけないものがあります。承認と確認の工程。「上司が承認する」「別の人が確認する」という作業は、遅く見えても、減らすと間違いがそのまま通ります。これは仕分けの対象から外して、「残す」と書きます。
「残す」を決めること。AIに仕分けを頼むと、「二重チェックは非効率なので『減らす』」と言います。AIは、そのチェックが去年何を止めたかを知りません。承認・確認の工程は、AIに仕分けさせる前に、人が「残す」と書いてから渡します。それと、「やめる」の最終判断。出力を誰も使っていないかは、1か月追わないとわかりません。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 「残す」を人が書いた後の棚卸し表について、残りの行を4つに仕分けた案を出す
- 仕分けの理由を、表の情報(何を見て/何を出すか/できる人)から1行で書く
- 「やめる」候補について、「出力を誰が使っているかを確認する相手」を挙げる
- 「まとめる」候補について、まとめた後の1行の案を書く
- 「残す」の指定(承認・確認の工程)
- 「やめる」候補の出力を、1か月追う
- 仕分けの最終決定
- 実際にやめる・減らす・まとめる・任せる
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 先に「残す」を書く
3人で棚卸し表を見て、「承認」「確認」「チェック」「照合」が入っている行に「残す」と書きます。理由も1行(「去年、二重払いをここで止めた」など)。この作業をAIより先にやります。
| 作業 | 誰が | いつ | 何を見て | 何を出すか | できる人 | 前の工程 | 待つ相手 | 仕分け |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 支払前の二重払いチェック | C | 月中 | 支払一覧、前月の支払一覧 | チェック済み一覧 | B・C | 支払一覧の作成 | — | 残す(去年、二重払いをここで止めた) |
| 仕訳の上長承認 | 部長 | 締め日前 | 仕訳一覧 | 承認済み仕訳 | 部長 | 各仕訳の起票 | — | 残す |
| 部門別経費一覧を作って共有フォルダに置く | C | 締め日後 | 経費仕訳 | 部門別経費一覧(Excel) | A・C | 経費集計 | — | (空欄) |
| 取引先別の売上集計を作る | A | 締め日後 | 売上仕訳 | 取引先別売上集計 | A | 売上仕訳 | — | (空欄) |
棚卸し表の例(架空。抜粋)
往復1回目 ― AIが「残す」を減らした
仕分け案は出た。ただし「残す」と書いた行のうち2行が「減らす(頻度を四半期に)」に変わっていた。「支払前の二重払いチェック」と「仕訳の上長承認」。
禁止事項に書いてもこうなります。チェックと承認は、AIから見れば「時間がかかるのに出力がない」作業に見えます。去年、二重払いチェックが1件止めたことを、AIは知りません。
「『残す』の行が2行、別の仕分けに変わっています。『残す』に戻してください。以後、『残す』の行には一切触れないでください。」
2行が「残す」に戻った。
戻ったことを確認します。ここを見落として部長に出すと、「チェックを四半期に減らす」案が独り歩きします。
往復2回目 ― 「やめる」候補
「やめる」候補が5件。「月次の部門別経費一覧(Excel)を作って共有フォルダに置く」「取引先別の売上集計を作る」など。理由は「出力の使用先が表に書かれていない」。確認する相手は「共有フォルダを見ている部署」。
理由は正しい(表に「誰が使うか」を書いていないので)。ただし、「表に書かれていない」=「誰も使っていない」ではありません。ここで「やめる」と決めると、翌月に営業から「あの一覧どこ行った」と来ます。
「『やめる』ではなく『やめる候補(1か月、使っているかを確認)』に変えてください。確認の方法を1行で添えてください。」
5件が「やめる候補」になり、確認の方法として「共有フォルダに置く際、ファイル名に『※10月末で作成終了予定。使っている方は経理まで』と入れる」が付いた。
5件のファイル名に、その一文を入れて1か月置きます。連絡が来なければやめる。来たら、その人に「残す理由」を聞いて、表に書きます。この架空例では、5件のうち3件は連絡がなく、やめました。2件は経営企画が使っていて、残しました。
往復3回目 ― 「まとめる」の1行案
最後に、次のように頼みます。「『まとめる』候補について、まとめた後の作業を1行で書いてください。誰がやるかは書かないでください(それは3人で決めます)。」
まとめる候補:「営業の検収一覧の妥当性確認(Bさん)」+「検収一覧と売上仕訳の突合(Aさん)」→ まとめた後:「検収一覧を先月分と比較して差分を確認し、そのまま売上仕訳を起票する(他部署から来た数字が、合っているのかわからないときの型を使う)」
まとめた後の1行を、来月1回やってみます。やってみて戻したくなったら戻す。仕分けは1回で決めません。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 「残す」がAIに何度も変えられる … 「残す」の行を表から抜いて、残りだけ貼ります。AIに見せなければ変えられません。
- 「やめる」候補に連絡が来て、全部残った … それが実態です。表に「使っている人」を書き足せば、次から迷いません。
- 「任せる」先がない … 「任せる」は、他部署・システム・ツールのどれか。どれもなければ「不明」のまま置きます。無理に仕分けない。
- 部長が「もっと減らせ」と言う … 70行のうち、「残す」が何行で、その理由が何かを見せます。減らせない理由が書いてあれば、話が進みます。
- やめた作業を、半年後に誰かが探しに来た … やめた日と理由を表に残しておきます。「10月末に終了。理由:1か月確認して使用者なし」と書いてあれば、復活の判断が早い。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 「残す」の行が、AIの出力で1つも変わっていないか。
- 「やめる」を、1か月の確認なしに実行していないか。
- やめた作業・まとめた作業について、「いつ・なぜ」が表に残っているか。
- 3か月後、70行が何行になったか。減っていなくても、「残す」に理由がついていれば、それは成果です。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「減らせないのか」に対して、「残す」の理由つきで答えられます。
- 誰も使っていなかった作業が、確認のうえで消えます。
- 同じ入力を使う2つの作業が1つになり、2人の時間が1人分になります。
- 棚卸し表が、作業一覧から「なぜこの作業があるか」が書かれた表に育ちます。これが、次の担当者への一番の引き継ぎ資料になります。
- 自分の作業のうち、「承認」「確認」「チェック」が入っているものに「残す」と書く
- 残りから、「これ誰が使ってるんだろう」と思う出力を1つ選ぶ
- そのファイル名に「※使っている方は経理まで」と入れて、1か月待つ
応用 ― 難易度を上げる場合
棚卸し表がまだない場合は連作①月次の作業を「誰が・いつ・何を見て・何を出すか」で棚卸しするから。仕分けをして、「任せる」先としてシステムが視野に入ってきたら、現行業務をAIに説明して、改善案とRFP項目まで作るへ。システム更改まで視野に入れるときはそちらです。ここまでの連作①〜④でできた棚卸し表は、あちらの「現行業務の書き出し」がすでに終わった状態なので、そのまま使えます。