グループ間取引の相手先コードと取引種類を、各社の帳簿で揃える対応表を作る
グループ各社の帳簿で、同じグループ会社が違う相手先コード・違う名前で登録され、同じ取引が違う取引種類で記録されているために照合が合わない問題に対して、各社の相手先マスタと取引種類の一覧から「グループ共通の対応表」の候補をAIに作らせる方法です。候補出しと揺れの抽出はAI、対応の確定は各社の経理と連結担当、マスタの変更は各社の判断。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。グループ6社の債権債務と取引高を四半期ごとに照合しています(差異の4分類)。分類してみると、「相手違い」が思ったより多い。掘ると、こうでした。
- 同じグループ会社が、各社の帳簿で違う名前で登録されている。「オリオンシステムズ㈱」「オリオンシステムズ株式会社」「ORION SYSTEMS」。集計すると3社に分かれる。
- 1つの会社に、相手先コードが2つある。売上先としてのコードと、仕入先としてのコードが別で、片方しか照合に出てこない。
- 同じ取引を、片方は「業務委託料」、もう片方は「外注費」と記録している。取引種類で突き合わせると合わない。
- 各社の担当者に聞くと「うちではこれで合っている」。誰も間違っていないのに、揃っていない。
照合の作業そのものは別記事の話。この記事でやるのは、各社のコードと名前と取引種類を1つの対応表に揃えて、照合の前に「相手違い」を消すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 各社から、相手先マスタのうちグループ会社の分(コード・登録名・区分)と、グループ間取引に使っている取引種類の一覧をもらう … 人。
(b) 登録名の揺れをまとめ、「グループ共通の会社記号」に対応づけた候補を出す … AI。
(c) 取引種類の名前の揺れをまとめ、「グループ共通の取引種類」に対応づけた候補を出す … AI。
(d) 候補を各社の経理と確認し、対応表を確定する … 連結担当と各社。
(e) 各社のマスタを変えるか、対応表で読み替えるかを決める … 各社の判断。
対応の確定と、各社のマスタを変える判断。AIが出すのは「この3つの登録名は同じ会社らしい」という候補までで、本当に同じ会社かは各社の経理が確かめます(似た名前の別会社があります)。マスタの変更は各社のシステムの話で、各社が決めます。それから、取引の金額はAIに渡しません。渡すのはコード・名前・区分・取引種類の一覧だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 各社の登録名の揺れ(表記・略称・英字)をまとめ、共通の会社記号に対応づけた候補を出す
- 1社に複数コードがある場合を洗い出す
- 取引種類の名前の揺れをまとめ、共通の取引種類への対応候補を出す
- 対応表の書式(会社記号/各社のコード/各社の登録名/確認者/確定日)
- 候補が本当に同じ会社・同じ取引種類かの確認(各社の経理)
- 対応表の確定(連結担当)
- マスタを変えるか、読み替えで済ませるか(各社)
- 新しいグループ会社・新しい取引が増えたときの対応表の更新
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― マスタの抜粋と取引種類の一覧
6社それぞれの相手先マスタから、グループ会社の分だけ(コード/登録名/売上先・仕入先の区分)。取引種類は、グループ間取引に使っているものの名前だけ。金額は渡しません。会社は記号(G1〜G6)でも、対応表を作るには登録名が要るので、登録名はそのまま渡します(グループ会社名は社外秘ではない前提。社内ルールで確認)。
往復1回目 ― AIが「似た名前」を同じ会社にした
①で「オリオンデータ株式会社」と「オリオンデータサービス株式会社」を同じ会社記号に対応づけ、理由は「名称が類似」。
この2社は、実際には別のグループ会社です(片方は昨年設立)。「類似」だけで同じにされると、照合で別の会社の取引が混ざります。禁止事項に「断定しない」と書いても、候補表に載った時点で同じに見えます。
「理由が『名称が類似』だけのものは①から外し、④に移してください。①に残すのは、表記・略称・英字・法人格の位置の違いだけで、それ以外の語が一致するものだけにしてください。」
①は5社分の対応候補(各社2〜4通りの登録名)。④に4組が移った。②は3社で「売上先コード」と「仕入先コード」が別。
①の候補を各社の経理に送り、「この登録名は御社の帳簿でこの会社か」を確かめてもらいます。④の4組は連結担当が自分で調べます。2組は別会社、2組は同じ会社(旧社名のまま登録)でした。対応表に確定日と確認者を入れます。
往復2回目 ― 取引種類の「まとめすぎ」
③で「業務委託料」「外注費」「技術支援料」「開発委託費」の4つを、共通取引種類「役務提供」に1つにまとめていた。
照合だけなら1つでもよいのですが、「技術支援料」は一部の会社で開発とは別の契約で、連結の集計では分けて見たい種類でした。AIは名前の近さでまとめるので、会社の実態は知りません。
「共通取引種類は、各社の名前が指す契約の種類が同じと分かるものだけでまとめ、分からなければ分けたまま④に出してください。」
「業務委託料/外注費/開発委託費」が1つ、「技術支援料」は④へ。
技術支援料は、各社の契約書の種類を聞いて「開発委託」とは別の共通取引種類にすると決めました。対応表は「読み替え」で運用し、マスタは各社が次のシステム更新のときに直す、という判断。決めたのは各社と連結担当。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 各社がマスタの抜粋を出してくれない … 「グループ会社の分だけ、コードと名前と区分の3列」と頼みます。全マスタは要りません。
- 新しいグループ会社ができた … 対応表に1行足し、各社に登録名を確認します。対応表の更新は四半期の照合の前。
- ある会社だけ相手先コードの体系がまったく違う … 対応表で読み替えます。体系を揃えるのはシステムの話で、この記事の範囲外。
- AIがまた似た名前を同じにする、まとめすぎる … ④へ。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 対応表のすべての行に、確認者と確定日があるか。候補のまま使っている行がないか。
- 対応表で読み替えたあとの照合で、「相手違い」の差異が減ったか。減っていなければ、対応表がまだ足りない。
- 新しい会社・取引が増えたとき、対応表が先に更新されているか。
- 対応表に、AIの「同じらしい」が確認なしで残っていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 照合の前に対応表で読み替えるので、「相手違い」の差異が照合に出てこなくなります。
- 1社に2つのコードがある問題が、両方とも照合に載ります。
- 取引種類の名前が会社ごとに違っても、共通の種類で集計できます。
- 対応表が、新しい担当者に「グループ会社は各社でこう登録されている」を説明する資料になります。
- 自社の相手先マスタで、グループ会社を1社検索し、何件ヒットするか見る
- 2件以上なら、それが照合で「相手違い」になっている候補
- 相手の会社の帳簿で、自社が何という名前で登録されているかを聞いてみる
応用 ― 難易度を上げる場合
照合そのものはグループ間債権債務・取引高の照合を自動化する、差異の分類は親子間の差異を「期ズレ・計上漏れ・金額違い・相手違い」に分けて、どちらが直すかを決めるへ。マスタの変更の記録は経理システムのマスタ(取引先・科目・部門)の変更を、月次で「誰が・何を・なぜ」の一覧にする。