グループ内から仕入れた在庫の期末残高を、「売った会社・買った会社・残っている数量」の一覧にして連結担当に渡す
グループ会社から仕入れた商品・部材のうち期末に手元に残っているものを、各社の在庫一覧と仕入一覧から「売った会社/買った会社/品目記号/期末の数量/仕入単価の区分」で一覧にし、「グループ内仕入なのに在庫一覧で区別されていない品目」「先期にあって今期にない品目」をAIに出させる方法です。整理と抽出はAI、未実現利益の計算と連結処理は会計基準の原文と監査法人との協議、各社の在庫の確認は各社の経理。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。グループ内で機器や部材を売り買いしていて、買った会社の期末在庫に、グループ内から仕入れたものが残ります。連結担当は、期末にこうなります。
- 各社に「グループ内から買った在庫、いくら残ってる?」と聞いて回る。各社の在庫一覧に、仕入先の区別がない。
- 返事が「たぶんこれくらい」。品目ごとに仕入先を遡れる会社と、遡れない会社がある。
- 先期に残っていた品目が今期の一覧にないが、売れたのか、聞き漏らしたのか分からない。
- 数量は分かるが、仕入単価がグループ内の取引価格なのか、別のものなのかが混ざる。
未実現利益の計算と消去は基準と監査法人の話。この記事でやるのは、その計算の元になる「残っている在庫の一覧」を、各社から同じ形で集めることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 一覧の型を決める … 売った会社(記号)/買った会社(記号)/品目記号/期末の数量/仕入単価の区分(グループ内取引価格・その他)/仕入の時期(四半期)/確認者(職位)。
(b) 各社の在庫一覧(品目記号/数量)と、グループ内からの仕入一覧(売った会社/品目記号/数量/時期)を集める … 各社の経理。
(c) 品目記号で突き合わせ、①グループ内から仕入れた品目のうち在庫一覧に残っているもの、②在庫一覧にあるがグループ内仕入かどうか区別できない品目、③先期の一覧にあって今期にない品目、を出す … AI。
(d) ②③を各社の経理に確かめてもらい、一覧を確定する … 各社と連結担当。
(e) 確定した一覧を連結の計算に渡す … 連結担当。計算は基準と監査法人と。
未実現利益の計算、消去の方法、どの品目を対象にするかの判断。一覧は元データで、計算と処理は基準の原文と監査法人との協議で決めます。AIに「この在庫の未実現利益はいくら」を聞きません。それから、金額と単価そのものはAIに渡しません。数量と「単価の区分」だけ。会社と品目は記号。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 各社の在庫一覧とグループ内仕入一覧を品目記号で突き合わせる
- グループ内仕入の品目で在庫に残っているもの、区別できない品目、先期にあって今期にない品目を出す
- 会社ごとの「一覧の型に足りない列」の指摘
- 各社に確認を頼む1行(品目記号と事実だけ)の下書き
- 区別できない品目の仕入先の確認(各社の経理)
- 一覧の確定(連結担当)
- 未実現利益の計算と消去(基準の原文と監査法人との協議)
- 在庫一覧に仕入先の区別を入れるかどうか(各社のシステムの判断)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 記号と数量だけ
会社はG1〜G6、品目は記号。在庫一覧は品目記号/数量。仕入一覧は売った会社/品目記号/数量/時期。金額・単価は渡しません。単価は「グループ内取引価格・その他」の区分だけ。
往復1回目 ― AIが「計算」に踏み込んだ
①で48品目。表の下に「これらの在庫に含まれる未実現利益は、グループ内取引の利益率を乗じて算定します。利益率をご提示いただければ計算します」と付いていた。
48品目は見たかったもの。「利益率を乗じて算定」は計算方法の話で、この記事の範囲外です。しかも、利益率をAIに渡すことになります。禁止事項に書いていてもこうなります。
「計算に関する記述を削除し、①は表だけにしてください。」
①は48品目。②は12品目(グループ外からも仕入れている可能性)。③は先期にあって今期にないのが9品目。④は仕入先の区別の列があるのが2社、ないのが3社。
②の12品目は、各社に「期末数量のうちグループ内仕入の分はいくつか」を聞きます。区別の列がない3社は、当面は仕入の時期と数量から各社が推定し、推定であることを一覧の確認者の欄に書きます。計算は基準と監査法人と。
往復2回目 ― 「先期にあって今期にない」9品目
③の9品目について、「当期に販売されたものと考えられるため、今期の対象外です」と付いていた。
「販売された」は推測で、9品目のうち2つは品目記号が変わっただけで在庫は残っていました。推測で「対象外」にされると、一覧から落ちます。
「推測を削除し、③の各品目について、今期の在庫一覧に似た記号(末尾だけ違う等)の品目があれば候補として並べてください。」
9品目のうち2品目に、末尾が違う記号の候補が並んだ。
2品目は各社に確認して、記号の変更と分かり、一覧に戻します。残り7品目は「当期に売れた」と各社が確認。一覧に「先期からの継続・新規・記号変更」の列を足して、来期は記号変更が見えるようにします。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 在庫一覧に仕入先の区別がなく、推定もできない … 各社のシステムに区別の列を足す話を、連結担当から各社に。それまでは、グループ内仕入の品目はグループ内からしか買わない運用にできるかを各社と相談。
- 品目記号が会社ごとに違う … 対応表を作ります(コードの対応表の品目版)。
- 数量ではなく金額でしか在庫を管理していない会社がある … その会社は金額の一覧を別に人が扱います。AIには渡しません。
- AIがまた計算や推測を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 一覧のすべての行に、各社の確認者の職位があるか。推定の行に「推定」と書いてあるか。
- 先期の一覧の品目が、今期「継続・売れた・記号変更」のどれかに分類されているか。
- 一覧の数量が、各社の在庫一覧の数量と一致しているか。
- 一覧に、AIの計算や推測が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「いくら残ってる?」の聞き回りが、同じ型の一覧を集める作業になります。
- 区別できない品目と推定の行が見え、各社のシステムに区別を入れる話ができます。
- 先期からの継続・新規・記号変更が分かり、落ちる品目が減ります。
- 一覧が、監査法人に「元データはこれ」と示す資料になります。
- 自社の在庫一覧を開き、仕入先が分かる列があるかを見る
- なければ、グループ内から買った品目を1つ思い出し、その期末数量を言えるか試す
- 言えなければ、それが一覧を作る理由
応用 ― 難易度を上げる場合
取引高・債権債務の照合はグループ間債権債務・取引高の照合を自動化する、差異の分類は親子間の差異を「期ズレ・計上漏れ・金額違い・相手違い」に分けて、どちらが直すかを決めるへ。連結パッケージの差分は子会社から来た連結パッケージの「前回と違うところ」だけ確認する。