入金の消込のルール(何が一致すれば消し込むか)を明文化し、自動で当たらなかった入金の理由を分類して減らす
入金の消込を「相手先と金額が一致」「相手先と請求No.が一致」「金額だけ一致」などのルールの順番で行っていることを明文化し、ルールで当たらなかった入金を月次で「手数料の差」「複数請求の合算」「相手先の表記違い」「一部入金」などに分類して件数を出し、分類の多い順にルールを足すか元を直す方法です。ルールの整理と分類はAI、消込の確定と請求との対応は担当者、ルールの変更は責任者。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。入金の消込は、システムの自動消込+手作業。当たらなかった入金は候補を出して消し、予定との差は4つに分けています。それでも。
- 自動で当たらない入金が、毎月同じくらいある。3割。手で消して終わり。減らない。
- 「何が一致すれば消し込むか」のルールが、システムの設定と担当者の頭の中に分かれている。担当者が変わると、手で消す基準が変わる。
- 当たらない理由を分類したことがない。手数料の差なのか、相手先の表記なのか、合算なのか。
- ルールを足せば当たる入金と、元(請求書の書き方、相手先マスタ)を直せば当たる入金が、混ざっている。
消込そのものは毎日の話。この記事でやるのは、ルールを明文化して、当たらなかった理由を月次で分類し、当たらない入金を減らすことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 今のルールを書き出す … システムの自動消込の条件(設定画面から)と、担当者が手で消すときの基準(聞き取り)。順番も。
(b) 今月の当たらなかった入金(入金記号/相手先記号/金額/摘要の要旨)と、手で対応づけた請求(請求No./金額)を集める … 担当者。
(c) 当たらなかった理由を分類する … AI(候補)。①手数料などの少額の差、②複数の請求の合算、③相手先の表記の違い(置き換え辞書)、④一部入金・分割、⑤請求No.の記載なし、⑥その他。
(d) 分類ごとの件数を出し、多い順に「ルールを足す(①②を許容する条件)」か「元を直す(③は辞書、⑤は請求書の記載)」かを決める … 責任者。
(e) 翌月、当たらなかった件数が減ったかを見る … 担当者。
消込の確定、ルールの変更。AIの分類は「そう見える」までで、本当に手数料の差か、値引きかは、担当者が請求と入金を見て確かめます。ルールを緩める(少額の差を許容する)判断は責任者。緩めすぎると、誤った消込が増えます。それから、相手先名と口座はAIに渡しません。記号と金額と摘要の要旨だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- システムの条件と担当者の基準を、1つのルールの一覧(順番つき)に整える
- 当たらなかった入金と対応づけた請求から、理由の分類の候補を出す
- 分類ごとの件数と、金額の規模の集計
- ルールを足した場合に当たるようになる件数の試算(今月の入金で)
- 消込の確定(担当者が請求と入金を見て)
- 分類の確認(AIの候補を担当者が確かめる)
- ルールを足すか、元を直すか(責任者)
- 少額の差を許容する範囲(責任者)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― ルールと当たらなかった入金
今のルール(システムの条件と手の基準)、今月の当たらなかった入金(記号/金額/摘要の要旨)と、手で対応づけた請求(請求No./金額)。相手先名・口座は渡しません。
往復1回目 ― AIが「緩めるべき」と書いた
③で「少額の差」が32件で最多。④の試算の下に「許容額を設定すれば当たらない入金を4割減らせるため、導入を強く推奨します」と付いていた。
32件と試算は見たかったもの。「導入を強く推奨」はルールの判断で、少額の差の中に「値引きの未合意」が混ざっていれば、許容すると差額が消えて見えなくなります。禁止事項に書いていてもこうなります。
「推奨の記述を削除し、④は試算の表だけにしてください。②の『少額の差』を、差が振込手数料の一般的な範囲に収まるものと、それより大きいものに分けてください。」
②で少額の差が「手数料の範囲」26件と「それより大きい」6件に分かれた。③は合算12件、表記違い18件、一部入金7件、請求No.なし9件、その他2件。
「それより大きい」6件を担当者が見ると、4件は相手先が勝手に値引いていた(営業に確認)。責任者は、許容するのは「手数料の範囲」だけ、それも相手先が手数料を引く契約の先だけと決めます。表記違い18件は辞書で、請求No.なし9件は請求書の記載の改善で。
往復2回目 ― 「合算」の分類
②で「合算」に分類された12件のうち、3件は「入金額が2つの請求の合計に一致」ではなく「近い」だけだった。AIは「合算+少額の差」として合算に入れていた。
合計に一致しないものを合算とすると、誤った消込になります。「近い」は合算ではなく、別の請求かもしれません。分類の候補は、根拠が一致のものだけに。
「合算は、入金額が請求の合計と完全に一致するものだけにし、近いだけのものは『その他』にしてください。」
合算が9件、その他が5件になった。
その他の5件は担当者が1件ずつ見ます。ルールの一覧に「合算は完全一致のみ」と明文化し、来月は分類ごとの件数を比べます。目標は「表記違い」と「請求No.なし」を半分に。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- システムの自動消込の条件が画面から分からない … システムの担当かベンダーに聞きます。分からないまま手の基準だけ書くと、ルールの一覧が不完全。
- 分類が「その他」ばかり … 分類の種類が足りません。「その他」の中身を見て、種類を足します。
- ルールを足したら誤った消込が増えた … ルールを戻します。誤った消込は、当たらない入金より悪い。
- AIがまた推奨や、一致しない合算を書く … 削除・分け直し。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- ルールの一覧が、システムの条件と手の基準を両方含み、順番つきで書かれているか。
- 当たらなかった入金の件数が、月を追って減っているか。分類ごとに減った理由が言えるか。
- ルールを足した後、誤った消込(後で直した消込)が増えていないか。
- 分類に、AIの断定や推奨が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 消込のルールが、システムと頭の中から、1つの一覧になります。
- 当たらなかった入金が、分類ごとに減っていきます。
- ルールを足す話と、元を直す話が分かれます。
- 担当者が変わっても、手で消す基準が同じになります。
- 先月、手で消した入金を10件選び、なぜ自動で当たらなかったかを1語で書く
- 同じ語が3つ以上あれば、それが最初に減らす分類
- その分類は「ルールを足す」か「元を直す」か、どちらかを考える
応用 ― 難易度を上げる場合
当たらない入金の候補は入金があったが、どの請求か分からないとき、摘要の辞書は銀行の入出金明細CSVの摘要の揺れを、「置き換え辞書」で揃えてから会計システムに取り込むへ。予定との差は入金予定と入金実績の差を、月次で「早い・遅い・分割・過不足」に分けて営業に聞く一覧にする。