債権債務・出納 › 入金消込活用案

入金の消込のルール(何が一致すれば消し込むか)を明文化し、自動で当たらなかった入金の理由を分類して減らす

入金の消込を「相手先と金額が一致」「相手先と請求No.が一致」「金額だけ一致」などのルールの順番で行っていることを明文化し、ルールで当たらなかった入金を月次で「手数料の差」「複数請求の合算」「相手先の表記違い」「一部入金」などに分類して件数を出し、分類の多い順にルールを足すか元を直す方法です。ルールの整理と分類はAI、消込の確定と請求との対応は担当者、ルールの変更は責任者。

AI操作難易度★★☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。入金の消込は、システムの自動消込+手作業。当たらなかった入金は候補を出して消し、予定との差は4つに分けています。それでも。

  • 自動で当たらない入金が、毎月同じくらいある。3割。手で消して終わり。減らない。
  • 「何が一致すれば消し込むか」のルールが、システムの設定と担当者の頭の中に分かれている。担当者が変わると、手で消す基準が変わる。
  • 当たらない理由を分類したことがない。手数料の差なのか、相手先の表記なのか、合算なのか。
  • ルールを足せば当たる入金と、元(請求書の書き方、相手先マスタ)を直せば当たる入金が、混ざっている。

消込そのものは毎日の話。この記事でやるのは、ルールを明文化して、当たらなかった理由を月次で分類し、当たらない入金を減らすことです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 今のルールを書き出す … システムの自動消込の条件(設定画面から)と、担当者が手で消すときの基準(聞き取り)。順番も。
(b) 今月の当たらなかった入金(入金記号/相手先記号/金額/摘要の要旨)と、手で対応づけた請求(請求No./金額)を集める … 担当者。
(c) 当たらなかった理由を分類する … AI(候補)。①手数料などの少額の差、②複数の請求の合算、③相手先の表記の違い(置き換え辞書)、④一部入金・分割、⑤請求No.の記載なし、⑥その他。
(d) 分類ごとの件数を出し、多い順に「ルールを足す(①②を許容する条件)」か「元を直す(③は辞書、⑤は請求書の記載)」かを決める … 責任者。
(e) 翌月、当たらなかった件数が減ったかを見る … 担当者。

ここはAIを使わない

消込の確定、ルールの変更。AIの分類は「そう見える」までで、本当に手数料の差か、値引きかは、担当者が請求と入金を見て確かめます。ルールを緩める(少額の差を許容する)判断は責任者。緩めすぎると、誤った消込が増えます。それから、相手先名と口座はAIに渡しません。記号と金額と摘要の要旨だけ。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • システムの条件と担当者の基準を、1つのルールの一覧(順番つき)に整える
  • 当たらなかった入金と対応づけた請求から、理由の分類の候補を出す
  • 分類ごとの件数と、金額の規模の集計
  • ルールを足した場合に当たるようになる件数の試算(今月の入金で)
人が判断する
  • 消込の確定(担当者が請求と入金を見て)
  • 分類の確認(AIの候補を担当者が確かめる)
  • ルールを足すか、元を直すか(責任者)
  • 少額の差を許容する範囲(責任者)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― ルールと当たらなかった入金

今のルール(システムの条件と手の基準)、今月の当たらなかった入金(記号/金額/摘要の要旨)と、手で対応づけた請求(請求No./金額)。相手先名・口座は渡しません。

用語:チャット型AIと、手元のExcelでの前処理(相手先の記号化)を組み合わせます。記号と金額と摘要の要旨だけを渡します。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。入金の消込のルールを明文化し、自動で当たらなかった入金の理由を分類して、当たらない入金を減らしたいと考えています。読み手は私と経理責任者です。 【事実/入力】 ・以下に、システムの自動消込の条件(設定画面から書き出したもの)と、担当者が手で消すときの基準(聞き取り)を貼ります ・以下に、今月の当たらなかった入金(入金記号/相手先記号/入金額/摘要の要旨)と、手で対応づけた請求(請求No./請求額/相手先記号)を貼ります(約80件) ・分類の確認と消込の確定は私が、ルールの変更は責任者が行います 【依頼】 ①システムの条件と手の基準を、順番つきのルールの一覧(ルール番号/一致させる項目/条件)に整えてください ②当たらなかった入金を、「少額の差/複数請求の合算/相手先の表記違い/一部入金・分割/請求No.の記載なし/その他」に分類する候補を出してください。理由は入金と請求の対応から見えるものだけにしてください ③分類ごとの件数と、金額の規模の合計を出してください ④「少額の差を一定額まで許容する」「合算を許容する」のルールを足した場合、今月の当たらなかった入金のうち何件が当たるようになるかを試算してください(許容する額は仮に3通り) 【出力の型】 ①:表:ルール番号/一致させる項目/条件/出所(システム・手) ②:表:入金記号/分類の候補/根拠(入金額と請求額の差、摘要の語など) ③:表:分類/件数/金額の規模 ④:表:許容額の仮定/当たるようになる件数 【禁止事項】 ・分類を断定しないでください(候補と明記) ・ルールを変えるべき・緩めるべきと書かないでください ・貼っていない入金や請求を足さないでください

往復1回目 ― AIが「緩めるべき」と書いた

AIの初稿

③で「少額の差」が32件で最多。④の試算の下に「許容額を設定すれば当たらない入金を4割減らせるため、導入を強く推奨します」と付いていた。

ここが問題

32件と試算は見たかったもの。「導入を強く推奨」はルールの判断で、少額の差の中に「値引きの未合意」が混ざっていれば、許容すると差額が消えて見えなくなります。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「推奨の記述を削除し、④は試算の表だけにしてください。②の『少額の差』を、差が振込手数料の一般的な範囲に収まるものと、それより大きいものに分けてください。」

修正版

②で少額の差が「手数料の範囲」26件と「それより大きい」6件に分かれた。③は合算12件、表記違い18件、一部入金7件、請求No.なし9件、その他2件。

人が最後にやること

「それより大きい」6件を担当者が見ると、4件は相手先が勝手に値引いていた(営業に確認)。責任者は、許容するのは「手数料の範囲」だけ、それも相手先が手数料を引く契約の先だけと決めます。表記違い18件は辞書で、請求No.なし9件は請求書の記載の改善で。

往復2回目 ― 「合算」の分類

AIの初稿

②で「合算」に分類された12件のうち、3件は「入金額が2つの請求の合計に一致」ではなく「近い」だけだった。AIは「合算+少額の差」として合算に入れていた。

ここが問題

合計に一致しないものを合算とすると、誤った消込になります。「近い」は合算ではなく、別の請求かもしれません。分類の候補は、根拠が一致のものだけに。

追加で出した指示

「合算は、入金額が請求の合計と完全に一致するものだけにし、近いだけのものは『その他』にしてください。」

修正版

合算が9件、その他が5件になった。

人が最後にやること

その他の5件は担当者が1件ずつ見ます。ルールの一覧に「合算は完全一致のみ」と明文化し、来月は分類ごとの件数を比べます。目標は「表記違い」と「請求No.なし」を半分に。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • システムの自動消込の条件が画面から分からない … システムの担当かベンダーに聞きます。分からないまま手の基準だけ書くと、ルールの一覧が不完全。
  • 分類が「その他」ばかり … 分類の種類が足りません。「その他」の中身を見て、種類を足します。
  • ルールを足したら誤った消込が増えた … ルールを戻します。誤った消込は、当たらない入金より悪い。
  • AIがまた推奨や、一致しない合算を書く … 削除・分け直し。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. ルールの一覧が、システムの条件と手の基準を両方含み、順番つきで書かれているか。
  2. 当たらなかった入金の件数が、月を追って減っているか。分類ごとに減った理由が言えるか。
  3. ルールを足した後、誤った消込(後で直した消込)が増えていないか。
  4. 分類に、AIの断定や推奨が混ざっていないか。

7. 注意点

相手先名と口座はAIに渡しません。記号と金額と摘要の要旨だけ。社内ルールで確認してください。
ルールを緩める判断は責任者。少額の差を許容すると、値引きの未合意が見えなくなります。AIの試算は判断の材料です。
「近い」は一致ではありません。合算は完全一致だけ。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 消込のルールが、システムと頭の中から、1つの一覧になります。
  • 当たらなかった入金が、分類ごとに減っていきます。
  • ルールを足す話と、元を直す話が分かれます。
  • 担当者が変わっても、手で消す基準が同じになります。
明日の仕事で試すこと
  • 先月、手で消した入金を10件選び、なぜ自動で当たらなかったかを1語で書く
  • 同じ語が3つ以上あれば、それが最初に減らす分類
  • その分類は「ルールを足す」か「元を直す」か、どちらかを考える

応用 ― 難易度を上げる場合

当たらない入金の候補は入金があったが、どの請求か分からないとき、摘要の辞書は銀行の入出金明細CSVの摘要の揺れを、「置き換え辞書」で揃えてから会計システムに取り込むへ。予定との差は入金予定と入金実績の差を、月次で「早い・遅い・分割・過不足」に分けて営業に聞く一覧にする。