保有する有価証券の異動(取得・売却・減資・株式分割)を、稟議・証券会社の報告書・帳簿の3つで四半期ごとに突き合わせる
四半期ごとに、有価証券の異動を「稟議(取得・売却の決裁)」「証券会社や発行会社からの報告書(数量・分割・減資の通知)」「帳簿(銘柄別の数量・簿価の増減)」の3つから一覧にし、「稟議にあるが帳簿にない」「報告書にあるが帳簿の数量が変わっていない」「帳簿にあるが稟議がない」をAIに出させる方法です。突合はAI、異動の確認と処理は経理、評価と会計処理は会計基準の原文と監査法人との協議。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。取引先の株式や投資先の持分を保有していて、時価の取り方は銘柄ごとの一覧にしてあります。「数量と簿価」の側で、こうなります。
- 株式分割があったのに帳簿の数量が変わっておらず、期末に気づいた。発行会社からの通知が、担当者の受信箱で止まっていた。
- 取得の稟議は通っているが、帳簿への計上が翌四半期になっていた。約定日と受渡日と稟議日がばらばら。
- 売却の報告書が証券会社から来ているが、帳簿はまだ売却前の数量。
- 帳簿にある銘柄の一部に、取得の稟議が見つからない。昔からある銘柄で、誰も経緯を知らない。
評価と会計処理は基準と監査法人の話。この記事でやるのは、四半期ごとに、稟議・報告書・帳簿の3つで異動を突き合わせて、ずれを期末より前に見つけることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 3つの一覧を集める … 稟議(銘柄記号/取得・売却/数量/決裁日)、報告書(銘柄記号/異動の種類:取得・売却・分割・減資・併合/数量/日付)、帳簿(銘柄記号/期首数量/増減/期末数量)。金額は渡さない。
(b) 銘柄記号で突き合わせ、①稟議にあって帳簿の増減にない、②報告書にあって帳簿の数量が変わっていない、③帳簿の増減にあって稟議も報告書もない、④3つの数量が一致しない、を出す … AI。
(c) ①〜④の理由を確かめ、帳簿を直すか、稟議・報告書を探す … 経理。
(d) 分割・減資・併合の会計処理は、基準の原文と監査法人との協議 … 責任者。
(e) 期末には、四半期ごとの突合の記録を監査法人に示す … 経理。
異動の会計処理、評価、簿価の計算。一覧は数量の突合までで、分割や減資の処理はこの記事の範囲外です。AIに「分割後の簿価はいくら」を聞きません。それから、銘柄名と金額はAIに渡しません。記号と数量と日付だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 稟議・報告書・帳簿の3つを銘柄記号で突き合わせる
- 3つの間の不一致(片方にしかない、数量が違う、時期が違う)を種類ごとに出す
- 報告書の「分割・減資・併合」で帳簿の数量が変わるべきものの一覧
- 四半期の突合の記録の書式
- 不一致の理由の確認(担当者が稟議・報告書・帳簿を見て)
- 帳簿の修正(経理)
- 異動の会計処理と評価(基準の原文と監査法人との協議)
- 稟議のない銘柄の経緯の調査(責任者)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 記号と数量と日付
銘柄は記号(S01〜)。3つの一覧とも、数量と日付と異動の種類だけ。銘柄名・金額・簿価は渡しません。
往復1回目 ― AIが「処理」を書いた
②で、S12の株式分割(1:3)が報告書にあり、帳簿の数量が分割前のまま。表の下に「分割後の簿価は1株あたり3分の1になります。帳簿の数量を3倍にし、単価を修正してください」と付いていた。
S12の不一致は見たかったもの。「簿価は3分の1」「単価を修正」は会計処理で、この記事の範囲外です。処理は基準の原文と監査法人との協議で。禁止事項に書いていてもこうなります。
「簿価と処理に関する記述を削除し、②は数量の表だけにしてください。」
①は稟議にあって帳簿にないのが1銘柄(S07、取得)。②はS12(分割)とS20(売却の報告書があるが帳簿は売却前)。③は帳簿の増減に稟議も報告書もないのが1銘柄(S03)。④は数量が一致しないのが1銘柄(S15)。
S07は受渡が翌四半期で、帳簿は受渡日で計上する運用。稟議の一覧に「受渡予定日」の列を足します。S12の分割とS20の売却は、帳簿の数量を経理が直し、処理は責任者が監査法人と確認。
往復2回目 ― 「稟議も報告書もない」S03
③のS03について、「稟議のない取得は決裁手続の不備の可能性があります」と付いていた。
S03の抽出はよい。「決裁手続の不備」は推測で、S03は昔の投資で、稟議は紙で書庫にありました(一覧に載せていなかっただけ)。
「推測を削除し、③は表だけにしてください。」
表だけになった。
S03の帳簿の増減は、減資による数量の変更で、発行会社からの通知が総務に届いていた(報告書の一覧に入っていなかった)。通知の受け取り先を経理に変えてもらいます。S15の数量違いは、帳簿の入力ミス。直します。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 報告書が紙で、一覧にするのが大変 … 四半期に1回、異動のあった銘柄だけ。異動がなければ「異動なし」の1行。
- 非上場の投資先で、報告書が来ない … 投資先に「異動があれば通知」を頼み、四半期ごとに「異動なし」の確認を取ります。
- 約定日・受渡日・稟議日のどれで帳簿に載せるかが決まっていない … 会計処理の話なので、基準の原文と監査法人で決め、一覧の「対応する日付」を揃えます。
- AIがまた処理や推測を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 帳簿の期末数量が、証券会社の残高報告(数量)と一致しているか。
- ①〜④のすべての不一致に、理由と処理の記録があるか。
- 分割・減資などの異動が、四半期のうちに帳簿に反映されているか。期末に見つかっていないか。
- 一覧に、AIの処理や推測が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 分割・減資・売却が、期末ではなく四半期のうちに帳簿に反映されます。
- 通知の受け取り先が経理に揃い、受信箱で止まらなくなります。
- 四半期の突合の記録が、期末の監査法人への説明になります。
- 稟議のない銘柄の経緯が、一度調べれば一覧に残ります。
- 帳簿の有価証券の銘柄を1つ選び、証券会社の直近の残高報告の数量と比べる
- 合わなければ、それが最初の不一致
- その銘柄の直近の異動の通知が、誰に届いたかを調べる
応用 ― 難易度を上げる場合
時価の取り方は保有する有価証券の時価の「取り方」を、銘柄ごとの一覧にする、固定資産の異動は除却・移動の申請が経理に届いていない資産を、稟議と総務の記録から拾うへ。持分法の会社の資料は持分法適用会社から届く決算資料を、前回と比べて「変わったところ」と「届いていないもの」を出す。