年次決算・開示 › 有価証券・金融商品活用案

保有する有価証券の異動(取得・売却・減資・株式分割)を、稟議・証券会社の報告書・帳簿の3つで四半期ごとに突き合わせる

四半期ごとに、有価証券の異動を「稟議(取得・売却の決裁)」「証券会社や発行会社からの報告書(数量・分割・減資の通知)」「帳簿(銘柄別の数量・簿価の増減)」の3つから一覧にし、「稟議にあるが帳簿にない」「報告書にあるが帳簿の数量が変わっていない」「帳簿にあるが稟議がない」をAIに出させる方法です。突合はAI、異動の確認と処理は経理、評価と会計処理は会計基準の原文と監査法人との協議。

AI操作難易度★★☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。取引先の株式や投資先の持分を保有していて、時価の取り方は銘柄ごとの一覧にしてあります。「数量と簿価」の側で、こうなります。

  • 株式分割があったのに帳簿の数量が変わっておらず、期末に気づいた。発行会社からの通知が、担当者の受信箱で止まっていた。
  • 取得の稟議は通っているが、帳簿への計上が翌四半期になっていた。約定日と受渡日と稟議日がばらばら。
  • 売却の報告書が証券会社から来ているが、帳簿はまだ売却前の数量。
  • 帳簿にある銘柄の一部に、取得の稟議が見つからない。昔からある銘柄で、誰も経緯を知らない。

評価と会計処理は基準と監査法人の話。この記事でやるのは、四半期ごとに、稟議・報告書・帳簿の3つで異動を突き合わせて、ずれを期末より前に見つけることです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 3つの一覧を集める … 稟議(銘柄記号/取得・売却/数量/決裁日)、報告書(銘柄記号/異動の種類:取得・売却・分割・減資・併合/数量/日付)、帳簿(銘柄記号/期首数量/増減/期末数量)。金額は渡さない。
(b) 銘柄記号で突き合わせ、①稟議にあって帳簿の増減にない、②報告書にあって帳簿の数量が変わっていない、③帳簿の増減にあって稟議も報告書もない、④3つの数量が一致しない、を出す … AI。
(c) ①〜④の理由を確かめ、帳簿を直すか、稟議・報告書を探す … 経理。
(d) 分割・減資・併合の会計処理は、基準の原文と監査法人との協議 … 責任者。
(e) 期末には、四半期ごとの突合の記録を監査法人に示す … 経理。

ここはAIを使わない

異動の会計処理、評価、簿価の計算。一覧は数量の突合までで、分割や減資の処理はこの記事の範囲外です。AIに「分割後の簿価はいくら」を聞きません。それから、銘柄名と金額はAIに渡しません。記号と数量と日付だけ。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 稟議・報告書・帳簿の3つを銘柄記号で突き合わせる
  • 3つの間の不一致(片方にしかない、数量が違う、時期が違う)を種類ごとに出す
  • 報告書の「分割・減資・併合」で帳簿の数量が変わるべきものの一覧
  • 四半期の突合の記録の書式
人が判断する
  • 不一致の理由の確認(担当者が稟議・報告書・帳簿を見て)
  • 帳簿の修正(経理)
  • 異動の会計処理と評価(基準の原文と監査法人との協議)
  • 稟議のない銘柄の経緯の調査(責任者)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 記号と数量と日付

銘柄は記号(S01〜)。3つの一覧とも、数量と日付と異動の種類だけ。銘柄名・金額・簿価は渡しません。

用語:チャット型AIと、手元のExcelでの前処理(銘柄の記号化、金額の除外)を組み合わせます。数量と日付だけを渡します。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。この四半期の有価証券の異動を、稟議・報告書・帳簿の3つで突き合わせて、ずれを見つけたいと考えています。読み手は私と経理責任者です。 【事実/入力】 ・以下に、この四半期の稟議の一覧(銘柄記号/取得・売却/数量/決裁日)を貼ります ・以下に、証券会社・発行会社からの報告書の一覧(銘柄記号/異動の種類(取得・売却・分割・減資・併合)/数量または比率/日付)を貼ります ・以下に、帳簿の銘柄別の数量(銘柄記号/期首数量/増減/期末数量)を貼ります(約40銘柄) ・会計処理と評価は、基準と監査法人との協議で別に行います 【依頼】 ①稟議にあって、帳簿の増減に対応する行がない銘柄を出してください ②報告書にあって、帳簿の数量が変わっていない銘柄を出してください(分割・併合は、比率から変わるべき数量を計算して比べてください) ③帳簿の増減にあって、稟議にも報告書にもない銘柄を出してください ④3つすべてにあるが、数量が一致しない銘柄を出してください 【出力の型】 ①:表:銘柄記号/稟議の種類/数量/決裁日 ②:表:銘柄記号/報告書の種類/変わるべき数量/帳簿の数量 ③:表:銘柄記号/帳簿の増減/期末数量 ④:表:銘柄記号/稟議の数量/報告書の数量/帳簿の数量 【禁止事項】 ・簿価・評価・会計処理について書かないでください ・不一致の理由を推測して書かないでください ・貼っていない銘柄や異動を足さないでください

往復1回目 ― AIが「処理」を書いた

AIの初稿

②で、S12の株式分割(1:3)が報告書にあり、帳簿の数量が分割前のまま。表の下に「分割後の簿価は1株あたり3分の1になります。帳簿の数量を3倍にし、単価を修正してください」と付いていた。

ここが問題

S12の不一致は見たかったもの。「簿価は3分の1」「単価を修正」は会計処理で、この記事の範囲外です。処理は基準の原文と監査法人との協議で。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「簿価と処理に関する記述を削除し、②は数量の表だけにしてください。」

修正版

①は稟議にあって帳簿にないのが1銘柄(S07、取得)。②はS12(分割)とS20(売却の報告書があるが帳簿は売却前)。③は帳簿の増減に稟議も報告書もないのが1銘柄(S03)。④は数量が一致しないのが1銘柄(S15)。

人が最後にやること

S07は受渡が翌四半期で、帳簿は受渡日で計上する運用。稟議の一覧に「受渡予定日」の列を足します。S12の分割とS20の売却は、帳簿の数量を経理が直し、処理は責任者が監査法人と確認。

往復2回目 ― 「稟議も報告書もない」S03

AIの初稿

③のS03について、「稟議のない取得は決裁手続の不備の可能性があります」と付いていた。

ここが問題

S03の抽出はよい。「決裁手続の不備」は推測で、S03は昔の投資で、稟議は紙で書庫にありました(一覧に載せていなかっただけ)。

追加で出した指示

「推測を削除し、③は表だけにしてください。」

修正版

表だけになった。

人が最後にやること

S03の帳簿の増減は、減資による数量の変更で、発行会社からの通知が総務に届いていた(報告書の一覧に入っていなかった)。通知の受け取り先を経理に変えてもらいます。S15の数量違いは、帳簿の入力ミス。直します。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 報告書が紙で、一覧にするのが大変 … 四半期に1回、異動のあった銘柄だけ。異動がなければ「異動なし」の1行。
  • 非上場の投資先で、報告書が来ない … 投資先に「異動があれば通知」を頼み、四半期ごとに「異動なし」の確認を取ります。
  • 約定日・受渡日・稟議日のどれで帳簿に載せるかが決まっていない … 会計処理の話なので、基準の原文と監査法人で決め、一覧の「対応する日付」を揃えます。
  • AIがまた処理や推測を書く … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 帳簿の期末数量が、証券会社の残高報告(数量)と一致しているか。
  2. ①〜④のすべての不一致に、理由と処理の記録があるか。
  3. 分割・減資などの異動が、四半期のうちに帳簿に反映されているか。期末に見つかっていないか。
  4. 一覧に、AIの処理や推測が混ざっていないか。

7. 注意点

銘柄名・金額・簿価はAIに渡しません。記号と数量と日付だけ。社内ルールで確認してください。
会計処理と評価は、この記事では扱いません。基準の原文と監査法人との協議で。AIの「簿価は3分の1」は根拠になりません。
「稟議がない」を手続の不備と決めつけません。紙の稟議や昔の投資かもしれません。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 分割・減資・売却が、期末ではなく四半期のうちに帳簿に反映されます。
  • 通知の受け取り先が経理に揃い、受信箱で止まらなくなります。
  • 四半期の突合の記録が、期末の監査法人への説明になります。
  • 稟議のない銘柄の経緯が、一度調べれば一覧に残ります。
明日の仕事で試すこと
  • 帳簿の有価証券の銘柄を1つ選び、証券会社の直近の残高報告の数量と比べる
  • 合わなければ、それが最初の不一致
  • その銘柄の直近の異動の通知が、誰に届いたかを調べる

応用 ― 難易度を上げる場合

時価の取り方は保有する有価証券の時価の「取り方」を、銘柄ごとの一覧にする、固定資産の異動は除却・移動の申請が経理に届いていない資産を、稟議と総務の記録から拾うへ。持分法の会社の資料は持分法適用会社から届く決算資料を、前回と比べて「変わったところ」と「届いていないもの」を出す。