年次決算・開示 › 固定資産・減損活用案

除却・移動の申請が経理に届いていない資産を、稟議と総務の記録から拾う

固定資産の除却・移動は現場で起きているのに経理に届かない、という漏れを、稟議の件名・総務の廃棄記録・拠点の移転記録・座席表の変更から拾い、台帳の異動記録と突き合わせて「申請のない除却・移動の候補」をAIに出させる方法です。突合はAI、現物と記録の確認は人、会計処理は基準の原文と監査法人。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。固定資産の除却・移動は「除却申請書」「移動申請書」を経理に出す規程ですが、現場では出されないことがあります。

  • 実査で毎年、「捨てたはずの資産」が台帳に残っている。現場は総務に廃棄を頼んで終わり、経理に申請していない。
  • 拠点の統合で資産が動いたのに、移動申請が出ていない。台帳の所在地が古いまま。
  • 稟議には「サーバー入替」「オフィス縮小」と書いてある。資産の除却が伴うはずなのに、経理には何も届かない。
  • 年1回の実査で見つけるので、除却の時期が1年遅れる。

除却の会計処理は基準と監査法人の話。この記事でやるのは、経理に届いていない除却・移動を、他部署の記録から先に拾うことです。実査(実査前の候補出し)の前に、月次・四半期で。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 除却・移動が起きそうな記録を集める … 稟議の件名一覧(システム入替・移転・縮小・廃棄)、総務の廃棄記録(産廃・リサイクルの伝票)、拠点の移転・レイアウト変更の記録、情報システム部門の機器の廃棄・移設記録。
(b) 台帳の異動記録(除却・移動の申請が処理されたもの)を出す。
(c) (a)にあって(b)にない出来事を、候補として出す … AI。
(d) 候補の現物と記録を確認し、申請を出してもらう … 人。現場と。

ここはAIを使わない

除却したかどうかの確定と、会計処理。「サーバー入替」の稟議があっても、古いサーバーを予備として残していることがあります。確定は現物と現場の確認。除却の処理(時期・金額)は、基準の原文と監査法人と。AIに任せるのは、他部署の記録と台帳の異動を突き合わせて「申請のない候補」を出すまで。それから、稟議の件名から資産を特定するのも人(AIは「サーバー入替」と台帳の「サーバー」を名前で結びますが、どの1台かは現場に聞く)。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 稟議の件名・廃棄記録・移転記録から、除却・移動を伴いそうな出来事を拾う
  • 台帳の異動記録と突き合わせ、対応する申請がない出来事を出す
  • 出来事ごとに、関係しそうな台帳の資産(名称・所在地・部門で)の候補を並べる
  • 現場への確認文の下書き(この出来事で、この資産はどうなったか)
人が判断する
  • 候補の出来事で、実際に資産が除却・移動されたか(現物・現場)
  • どの資産が該当するか(現場に聞く)
  • 申請の依頼と、台帳の修正
  • 除却の会計処理(基準の原文・監査法人)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 他部署の記録と台帳の異動

今四半期の稟議の件名一覧(件名/部門記号/決裁日)、総務の廃棄記録(日付/品目/拠点記号)、移転・レイアウト変更の記録、情報システム部門の機器の廃棄・移設記録。台帳の異動記録(除却・移動の処理済み一覧)。金額は不要。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。渡すのは件名・品目・日付・記号だけで、金額は要りません。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。固定資産の除却・移動のうち、経理に申請が届いていないものを、他部署の記録から先に見つけたいと考えています。読み手は私・総務・各部門です。 【事実/入力】 ・以下に、今四半期の稟議の件名一覧(件名/部門記号/決裁日)を貼ります ・以下に、総務の廃棄記録、拠点の移転・レイアウト変更の記録、情報システム部門の機器の廃棄・移設記録を貼ります ・以下に、台帳の異動記録(除却・移動の処理済み:資産番号/名称/異動の種類/日付)を貼ります ・以下に、台帳の資産一覧(資産番号/名称/所在地記号/部門記号)を貼ります ・除却したかどうかの確定と会計処理は、現場の確認と監査法人で行います 【依頼】 ①稟議・廃棄・移転・機器の記録から、固定資産の除却または移動を伴いそうな出来事を拾ってください ②各出来事について、台帳の異動記録に対応する処理があるかを示してください ③対応する処理がない出来事について、関係しそうな台帳の資産(名称・所在地・部門が合うもの)を候補として並べてください 【出力の型】 ①表:出来事/出所(稟議・廃棄・移転・機器)/日付/部門または拠点 ②表:出来事/台帳の異動記録(あり:資産番号/なし) ③表:出来事/候補の資産番号・名称/候補にした理由(名称・所在地・部門のどれが合うか) 【禁止事項】 ・資産が除却された、移動した、と断定しないでください(「候補」にしてください) ・除却の処理や金額について書かないでください ・記録にない出来事を足さないでください

往復1回目 ― AIが「除却済み」と断定した

AIの初稿

③で、稟議「サーバー入替」に対して「候補:資産番号S-014 サーバー機器一式 → 入替に伴い除却済みと考えられる。除却処理が必要」と書かれていた。

ここが問題

入替の稟議があっても、古いサーバーが予備として残っていることがあります。「除却済み」も「処理が必要」も、現物を見る前の断定。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「断定と処理の記述を削除し、③は候補の資産と理由だけにしてください。」

修正版

①は出来事8件。②で台帳に処理があるのは2件。③で処理のない6件に候補の資産が計14件。

人が最後にやること

6件の出来事について、現場に「この出来事で、これらの資産はどうなりましたか」と聞きます。この架空例では、サーバーS-014は予備として保管、廃棄記録の什器3件は本当に廃棄済みで申請なし、移転で動いた資産4件は移動申請なし、でした。申請なしの7件について、現場から申請を出してもらいます。

往復2回目 ― 記録のどこにもない除却

AIの初稿

翌四半期、総務の廃棄記録に「モニター 6台」があったが、台帳の資産一覧に「モニター」で所在地・部門が合うものが10台あり、候補が絞れなかった。「どの6台かは特定できません」と正直に書かれていた。

ここが問題

問題ではなく、これが正しい出力です。AIが無理に6台を選ばなかった。どの6台かは、廃棄を頼んだ部門に聞くことです。追加の指示は出しません。

人が最後にやること

廃棄を頼んだ部門に、資産番号のラベルで6台を特定してもらいます。来期から、総務の廃棄記録に「資産番号」の欄を足してもらいます。廃棄の時点で番号が残れば、経理への申請と同じ効果があります。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 稟議の件名だけでは資産の異動が読めない … 「入替」「移転」「縮小」「廃棄」「返却」の語を含む件名だけに絞ります。それ以外は本文を見なければ分からないので、稟議の担当に「資産の異動を伴うか」の欄を足してもらいます。
  • 総務の廃棄記録がない … 産廃業者の請求書から拾います。廃棄の支払があれば、何かを捨てています。
  • 移動が多すぎる … 拠点をまたぐ移動だけ先に。同じ拠点内の席替えは、所在地が変わらないなら台帳に影響しません。
  • AIがまた断定する … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 候補の出来事の全件について、現場に確認し、結果(除却・移動・変化なし)が記録されたか。
  2. 申請のなかった除却・移動について、申請が出て台帳が直ったか。
  3. 除却の処理を、監査法人と確認したか。
  4. 年1回の実査で見つかる「捨てたはずの資産」が減ったか。

7. 注意点

稟議の件名や移転の記録は、経営の動きを示す情報です。部門・拠点は記号に、貼る範囲は社内ルールで確認してください。
除却したかどうかはAIに断定させません。現物と現場の確認。
除却の会計処理は、この活用例の範囲外です。基準の原文と監査法人。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 除却・移動が、年1回の実査ではなく四半期のうちに見つかります。
  • 「申請を出してください」が、出来事と資産の候補つきで現場に頼めます。
  • 総務の廃棄記録に資産番号が入り、経理への流れができます。
  • 実査の「捨てたはずの資産」が減り、実査が短くなります。
明日の仕事で試すこと
  • 今四半期の稟議の件名から、「入替」「移転」「廃棄」を含むものを探す
  • その件名に対応する除却・移動の申請が経理に届いているか見る
  • 届いていなければ、その部門に「資産はどうなりましたか」と聞く

応用 ― 難易度を上げる場合

実査の前の候補出しは固定資産の実査の前に、「現物のない資産」「台帳にない現物」の候補を出す、償却資産の申告前の突合は償却資産の申告前に、固定資産台帳の増減と前年の申告一覧を突き合わせるへ。稟議の件名から「変わったこと」を拾う考え方は決算前に、去年と今年で変わったところだけ洗い出すと同じです。