AIに何を渡したかの記録を、作業ごとに残す
AIを使った作業ごとに「渡した資料の種類/置き換えの有無と方法/使ったツール/日付/担当」を4行で残し、月末に一覧にして「置き換えなしで渡した資料」や「手順書のない資料」を見つける方法です。記録の型と集計はAI、記録するのは本人、渡してよいかの判断は全社規程と部のルール。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経理部でAIを使う作業が月に30件ほどあります。何を確認したかの記録(確認メモ)は残し始めましたが、「何を渡したか」は残っていません。
- 情報システム部門から「経理部は何をAIに渡しているか、一覧はあるか」と聞かれた。ない。
- 置き換えの手順書はあるが、実際に置き換えたかどうかは、本人しか知らない。
- 「あのとき、あの資料を貼ったかもしれない」が、あとから確かめられない。ツールの履歴を遡るしかない。
- 新しいツールを試した人がいる。会社が契約していないツールに、何を渡したかが分からない。
渡してよいかは全社規程と部のルールの話。この記事でやるのは、作業ごとに「何を渡したか」を残し、月末に一覧で見ることです。確認メモの「入口側」です。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
残すのは、作業ごとに4行。
渡した資料の種類 … 「試算表(科目・残高)」「仕訳データ(3か月分)」「契約書の条項」
置き換えの有無と方法 … 「取引先は記号(対応表あり)、金額は千円単位」「置き換えなし(数字を含まない文章のため)」
使ったツール … 会社契約のツール名、またはそれ以外
日付・担当
これを、確認メモと同じ場所(成果物の先頭シート)に残します。月末に一覧にして、「置き換えなし」「手順書のない資料」「会社契約以外のツール」を見ます。
記録そのものと、渡してよかったかの判断。「何を渡したか」を書くのは本人で、AIに「私が渡したものを一覧にして」と頼むと、その会話の中で渡したものしか分かりません。判断は全社規程と部のルール。AIに任せるのは、記録の型と、月末の一覧の集計まで。それから、記録を書くために、渡した資料をもう一度AIに貼らない。記録は資料の「種類」だけで、中身は書きません。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 4行の記録の型(確認メモと同じシートに並べる形)を作る
- 月末に、その月の記録を一覧にし、「置き換えなし」「手順書のない資料の種類」「会社契約以外のツール」を出す
- 資料の種類ごとの件数を集計する
- 情報システム部門に渡す一覧の形に整える
- 記録そのもの(本人)
- 「置き換えなし」が適切だったか(部のルールに照らして)
- 手順書のない資料に手順書を作るか
- 会社契約以外のツールの扱い(情報システム部門と)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 今月の記録
各作業の4行の記録を、月末に1つのExcelに集めます(担当は職位)。渡した資料の中身は含めません。種類だけ。
往復1回目 ― AIが「違反」と書いた
②の「置き換えなし」3件に「ルール違反の可能性」、「契約外ツール」1件に「重大な違反」と付いていた。
「置き換えなし」が適切な場合があります(数字を含まない文章、公表済みの資料)。評価は部長と情報システム部門が、記録と部のルールを見てします。「重大な違反」と書かれた記録は、確認の前に人を責める材料になります。禁止事項に書いていてもこうなります。
「評価の記述をすべて削除し、②は該当する記録の表だけにしてください。」
①は30件、資料の種類は7つ(手順書のある5つ+「議事録の文章」「規程の全文」)。②は「置き換えなし 3件」「手順書なし 4件」「契約外ツール 1件」。
「置き換えなし」3件は、2件が数字を含まない文章で適切、1件が試算表をそのまま貼ったものでした。本人と部長で、手順書どおりに置き換える運用を確認します。責めるのではなく、手順に戻す。「契約外ツール」1件は、情報システム部門と扱いを決めます。
往復2回目 ― 「手順書のない資料」
②の「手順書なし」4件は、「議事録の文章」3件と「規程の全文」1件。「これらの資料についても置き換え手順書の作成を推奨します」と付いていた。
4件の抽出は、これが見たかったもの。「推奨」は不要ですが、手順書のない資料の種類が見えたことが価値です。
「推奨の記述を削除してください。」
表だけになった。
「議事録の文章」は今後も渡しそうなので、手順書を1枚足します(社名・人名・案件名を記号に)。「規程の全文」は社名を伏せれば貼ってよい、と1枚のルールに追記します。記録があるから、手順書を足すべき資料が分かりました。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 記録を書くのを忘れる … 確認メモと同じシートに4行を並べ、確認メモを書くときに一緒に書きます。別の台帳にすると書かれません。
- 「置き換えなし」が多い … 手順書が実際の作業と合っていないか、置き換えが重い。手順書と置き換え用Excelを見直します。
- 情報システム部門が「ツールの履歴で全部分かる」と言う … 履歴には「置き換えたかどうか」は残りません。記録は、置き換えの証拠です。
- AIがまた評価を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 今月のAIを使った作業の全部に、4行の記録があるか。確認メモの件数と一致するか。
- 一覧に、AIの評価が残っていないか。
- 「置き換えなし」の各件について、適切だったかを部長が確認したか。
- 情報システム部門の「何を渡しているか」に、一覧で答えられたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「何をAIに渡しているか」に、種類別の一覧で答えられます。
- 置き換えの手順が守られているかが、月末に見えます。
- 手順書のない資料の種類が分かり、手順書が育ちます。
- 確認メモ(出口)と渡した記録(入口)が揃い、AIを使った作業の全体が説明できます。
- 今日AIに渡した資料を1つ思い出し、「種類/置き換え/ツール/日付」を4行で書く
- 置き換えの手順書がある種類か、確かめる
- なければ、それが手順書を足す最初の候補
応用 ― 難易度を上げる場合
置き換えの手順はAIに渡す前の置き換え(記号化・丸め・削除)を、資料の種類ごとの手順にする、出口側の記録はAIに手伝わせた作業を、誰が何を確認したかを残す、部のルールは経理部門のAI利用ルールを、1枚で決めるへ。考え方はAI時代のセキュリティとガバナンス。