セキュリティとガバナンス › 情報の入れ方・機密管理活用案

AIに何を渡したかの記録を、作業ごとに残す

AIを使った作業ごとに「渡した資料の種類/置き換えの有無と方法/使ったツール/日付/担当」を4行で残し、月末に一覧にして「置き換えなしで渡した資料」や「手順書のない資料」を見つける方法です。記録の型と集計はAI、記録するのは本人、渡してよいかの判断は全社規程と部のルール。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経理部でAIを使う作業が月に30件ほどあります。何を確認したかの記録(確認メモ)は残し始めましたが、「何を渡したか」は残っていません。

  • 情報システム部門から「経理部は何をAIに渡しているか、一覧はあるか」と聞かれた。ない。
  • 置き換えの手順書はあるが、実際に置き換えたかどうかは、本人しか知らない。
  • 「あのとき、あの資料を貼ったかもしれない」が、あとから確かめられない。ツールの履歴を遡るしかない。
  • 新しいツールを試した人がいる。会社が契約していないツールに、何を渡したかが分からない。

渡してよいかは全社規程と部のルールの話。この記事でやるのは、作業ごとに「何を渡したか」を残し、月末に一覧で見ることです。確認メモの「入口側」です。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

残すのは、作業ごとに4行。

渡した資料の種類 … 「試算表(科目・残高)」「仕訳データ(3か月分)」「契約書の条項」
置き換えの有無と方法 … 「取引先は記号(対応表あり)、金額は千円単位」「置き換えなし(数字を含まない文章のため)」
使ったツール … 会社契約のツール名、またはそれ以外
日付・担当

これを、確認メモと同じ場所(成果物の先頭シート)に残します。月末に一覧にして、「置き換えなし」「手順書のない資料」「会社契約以外のツール」を見ます。

ここはAIを使わない

記録そのものと、渡してよかったかの判断。「何を渡したか」を書くのは本人で、AIに「私が渡したものを一覧にして」と頼むと、その会話の中で渡したものしか分かりません。判断は全社規程と部のルール。AIに任せるのは、記録の型と、月末の一覧の集計まで。それから、記録を書くために、渡した資料をもう一度AIに貼らない。記録は資料の「種類」だけで、中身は書きません。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 4行の記録の型(確認メモと同じシートに並べる形)を作る
  • 月末に、その月の記録を一覧にし、「置き換えなし」「手順書のない資料の種類」「会社契約以外のツール」を出す
  • 資料の種類ごとの件数を集計する
  • 情報システム部門に渡す一覧の形に整える
人が判断する
  • 記録そのもの(本人)
  • 「置き換えなし」が適切だったか(部のルールに照らして)
  • 手順書のない資料に手順書を作るか
  • 会社契約以外のツールの扱い(情報システム部門と)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 今月の記録

各作業の4行の記録を、月末に1つのExcelに集めます(担当は職位)。渡した資料の中身は含めません。種類だけ。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。渡すのは記録(資料の種類・置き換え・ツール・日付・職位)だけで、資料の中身は渡しません。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。今月AIに渡した資料の記録を一覧にし、部のルールに照らして見直したい点を見つけたいと考えています。読み手は私・経理部長・情報システム部門です。 【事実/入力】 ・以下に、今月の記録(作業/渡した資料の種類/置き換えの有無と方法/使ったツール/日付/担当の職位)を貼ります(約30件) ・部のルールでは、置き換えの手順書がある資料の種類は5つ(試算表/仕訳データ/取引先一覧/契約書の条項/支払一覧)、会社契約のツールは2つです ・渡してよかったかの判断は、部長と情報システム部門が行います 【依頼】 ①記録を一覧にし、資料の種類ごとの件数を出してください ②「置き換えなし」の記録、手順書のない資料の種類の記録、会社契約以外のツールの記録を、それぞれ出してください ③情報システム部門に渡す一覧(資料の種類/件数/置き換えの方法/ツール)の形に整えてください 【出力の型】 ①表:作業/資料の種類/置き換え/ツール/日付/職位 + 種類別の件数 ②表:種類(置き換えなし・手順書なし・契約外ツール)/該当する記録 ③表:資料の種類/件数/置き換えの方法/ツール 【禁止事項】 ・渡してよかったかどうか、ルール違反かどうかの評価を書かないでください ・記録にない作業を足さないでください ・資料の中身を推測して書かないでください

往復1回目 ― AIが「違反」と書いた

AIの初稿

②の「置き換えなし」3件に「ルール違反の可能性」、「契約外ツール」1件に「重大な違反」と付いていた。

ここが問題

「置き換えなし」が適切な場合があります(数字を含まない文章、公表済みの資料)。評価は部長と情報システム部門が、記録と部のルールを見てします。「重大な違反」と書かれた記録は、確認の前に人を責める材料になります。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「評価の記述をすべて削除し、②は該当する記録の表だけにしてください。」

修正版

①は30件、資料の種類は7つ(手順書のある5つ+「議事録の文章」「規程の全文」)。②は「置き換えなし 3件」「手順書なし 4件」「契約外ツール 1件」。

人が最後にやること

「置き換えなし」3件は、2件が数字を含まない文章で適切、1件が試算表をそのまま貼ったものでした。本人と部長で、手順書どおりに置き換える運用を確認します。責めるのではなく、手順に戻す。「契約外ツール」1件は、情報システム部門と扱いを決めます。

往復2回目 ― 「手順書のない資料」

AIの初稿

②の「手順書なし」4件は、「議事録の文章」3件と「規程の全文」1件。「これらの資料についても置き換え手順書の作成を推奨します」と付いていた。

ここが問題

4件の抽出は、これが見たかったもの。「推奨」は不要ですが、手順書のない資料の種類が見えたことが価値です。

追加で出した指示

「推奨の記述を削除してください。」

修正版

表だけになった。

人が最後にやること

「議事録の文章」は今後も渡しそうなので、手順書を1枚足します(社名・人名・案件名を記号に)。「規程の全文」は社名を伏せれば貼ってよい、と1枚のルールに追記します。記録があるから、手順書を足すべき資料が分かりました。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 記録を書くのを忘れる … 確認メモと同じシートに4行を並べ、確認メモを書くときに一緒に書きます。別の台帳にすると書かれません。
  • 「置き換えなし」が多い … 手順書が実際の作業と合っていないか、置き換えが重い。手順書と置き換え用Excelを見直します。
  • 情報システム部門が「ツールの履歴で全部分かる」と言う … 履歴には「置き換えたかどうか」は残りません。記録は、置き換えの証拠です。
  • AIがまた評価を書く … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 今月のAIを使った作業の全部に、4行の記録があるか。確認メモの件数と一致するか。
  2. 一覧に、AIの評価が残っていないか。
  3. 「置き換えなし」の各件について、適切だったかを部長が確認したか。
  4. 情報システム部門の「何を渡しているか」に、一覧で答えられたか。

7. 注意点

記録には資料の「種類」だけを書きます。中身を書かない。記録を書くために資料をもう一度AIに貼らない。
渡してよかったかの判断はAIにさせません。全社規程と部のルールに照らして、部長と情報システム部門。
記録は人を責めるためではなく、手順に戻すためのものです。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 「何をAIに渡しているか」に、種類別の一覧で答えられます。
  • 置き換えの手順が守られているかが、月末に見えます。
  • 手順書のない資料の種類が分かり、手順書が育ちます。
  • 確認メモ(出口)と渡した記録(入口)が揃い、AIを使った作業の全体が説明できます。
明日の仕事で試すこと
  • 今日AIに渡した資料を1つ思い出し、「種類/置き換え/ツール/日付」を4行で書く
  • 置き換えの手順書がある種類か、確かめる
  • なければ、それが手順書を足す最初の候補

応用 ― 難易度を上げる場合

置き換えの手順はAIに渡す前の置き換え(記号化・丸め・削除)を、資料の種類ごとの手順にする、出口側の記録はAIに手伝わせた作業を、誰が何を確認したかを残す、部のルールは経理部門のAI利用ルールを、1枚で決めるへ。考え方はAI時代のセキュリティとガバナンス。