AIが作った表を使う前に、元データと「件数・合計・抜き取り」の3点で確かめる手順を型にする
AIに集計・並べ替え・突合をさせた表を報告や仕訳に使う前に、「件数が元データと同じか」「合計が元データと同じか」「人が選んだ3行が元データと一致するか」の3点を、必ず人がExcelで確かめる手順を型にする方法です。照合の型と照合用の式はAI、照合の実行と抜き取りの選択は人、使ってよいかの判断は担当者と上司。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経理では、明細の並べ替え、部門別の集計、2つの一覧の突合など、表を作る作業にチャット型AIを使い始めています。便利なのですが、こういうことが起きました。
- 部門別に集計させた表の合計が、元の明細の合計と違っていた。AIが1行を読み飛ばしていた。報告に貼ったあとで気づいた。
- 突合の結果表で、「一致」とされた行の金額が、実は1桁違っていた。誰も元データを見ていなかった。
- 「AIが作ったから確認した」ことになっていた。誰が何を確かめたか、記録がない(確認メモ)。
- 確認しようにも、「何を確かめれば十分か」が人によって違う。全行を見る人もいれば、見た目だけの人もいる。
AIの表を使うのをやめる話ではありません。この記事でやるのは、AIが作った表を使う前に人が確かめる3点を型にして、毎回同じように確かめることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 確かめる3点を決める … ①件数(元データの行数と表の行数)、②合計(元データの金額合計と表の金額合計)、③抜き取り(人が選んだ3行を元データで探し、金額・相手・日付が同じか)。
(b) 3点を確かめるためのExcelの式(行数のCOUNTA、合計のSUM、抜き取り用のXLOOKUPなど)と、記録の型を作る … AI。
(c) 3点を実行し、記録に書く … 人。式に元データと表を入れて、結果を見る。
(d) 3点のどれかが合わなければ、その表は使わない。合うまで直すか、手で作り直す … 人。
(e) 3点が合っても、表の「意味」(区分の仕方や並べ方が目的に合っているか)は担当者が見る … 人。
照合の実行そのもの。AIが作った表を、そのAIに「元データと合っているか確かめて」と頼んでも、確かめたことになりません。同じ読み飛ばしを繰り返すか、「確認しました」と書くだけです。3点はExcelで、人の手で。それから、抜き取りの3行は人が選びます。AIに選ばせると、AIが正しく処理した行だけを選ぶかもしれません。使ってよいかの判断は担当者と上司。AIに任せるのは、型と式と記録の書式まで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 3点照合の手順書(誰でも同じ順で確かめられる書式)
- 件数・合計・抜き取りを確かめるExcelの式の例
- 照合の記録の型(表の名前/元データ/3点の結果/確かめた人/日付)
- 3点が合わなかったときの「よくある原因」の一覧(読み飛ばし・重複・単位のずれなど)
- 3点照合の実行(Excelで、元データと表を見て)
- 抜き取る3行の選択
- 表を使ってよいかの判断(担当者と上司)
- 表の意味(区分・並べ方)が目的に合っているか
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 元データと表の「形」だけ
AIに渡すのは、元データと表の列の名前と行数だけ。金額・相手先などの中身は渡しません。式と手順書を作るのに中身は要りません。
往復1回目 ― AIが「自分で確認した」ことにした
手順書の最後に「なお、AIが出力する表は元データから機械的に生成されるため、通常は件数・合計とも一致します。3点照合は念のための確認です」と付いていた。
手順と式は使えるものでした。「通常は一致する」「念のため」は、照合を軽くする方向の記述で、この会社ではまさに一致しなかったことが起きています。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『通常は一致する』『念のため』の記述を削除し、3点照合は省略しない旨を手順書の先頭に1行で書いてください。」
先頭に「3点のどれかが合わない表は使わない」の1行。手順は、①元と表の行数をCOUNTAで比べる、②金額をSUMで比べる、③人が3行を選び、XLOOKUPで元を引いて金額・相手・日付を比べる、の順。
手順書を上司と読み、「集計表は①の件数を『元の行数=表の件数の合計』と読み替える」を追記します。集計表は行数が減るので、そのままでは①が使えません。この読み替えは、AIの手順にはありませんでした。
往復2回目 ― 抜き取りの「選び方」
③の抜き取りについて、「金額の大きい上位3行を選ぶと効率的です」と手順に書かれていた。
上位3行は目立つので、AIも読み飛ばしにくい行です。読み飛ばしは中ほどの小さな行で起きます。「効率的」な選び方は、確かめたいことを外します。
「選び方の推奨を削除し、『人が任意に3行を選ぶ。大きい行に偏らせない』とだけ書いてください。」
そのとおりになった。記録の型は「表の名前/元データ(ファイル名・抽出日)/①件数 一致・不一致/②合計 一致・不一致/③抜き取り3行 一致・不一致/確かめた人(職位)/日付」の1行。
この型で、先週の部門別集計表を確かめます。①で元が412行、表の件数合計が411。1行足りない。原因を追うと、部門コードが空欄の1行をAIが落としていました。表は作り直し。記録には「不一致→作り直し」と残します。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 元データが複数のファイルにまたがる … 先に1つのシートに集めてから3点を確かめます。集める作業も人。
- 合計が1円だけ違う … 丸めか、単位のずれ。「1円だからよい」とせず、原因が分かるまで使いません。
- 突合表で「一致」の行が多すぎて抜き取り3行では足りない気がする … 3行は最低限。不安なら増やします。減らす方向にはしません。
- 急いでいて3点をやる時間がない … 3点は5分。5分がない表は、報告に載せる時間もないはずです。
- AIがまた「通常は一致する」と書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- AIが作った表を使うとき、3点照合の記録が必ず残っているか。記録のない表が報告に載っていないか。
- 3点のどれかが合わなかった表が、使われていないか。「不一致だが使った」がないか。
- 抜き取りの3行が、人によって選ばれているか。毎回同じ行、上位の行に偏っていないか。
- 手順書に、照合を軽くする記述が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- AIが作った表を使う前の確認が、人によらず同じ3点になります。
- 読み飛ばし・重複が、報告の前に見つかります。
- 「AIが作ったから確認した」ではなく、「誰が3点を確かめた」が記録に残ります。
- 3点が合わなかった表の記録が、AIに渡す指示の直し方の元になります。
- 最近AIに作らせた表を1つ開き、元データの行数と表の件数を比べる
- 合計を比べる
- 自分で3行選んで、元データを引く。1つでも合わなければ、その表はまだ使えない
応用 ― 難易度を上げる場合
確認の記録はAIに手伝わせた作業を、誰が何を確認したかを残す、AIに何を渡したかの記録はAIに何を渡したかの記録を、作業ごとに残すへ。渡す前の置き換えはAIに渡す前の置き換え(記号化・丸め・削除)を、資料の種類ごとの手順にする。