使っているAIツールごとに、「入力が残るか・誰が見られるか・消し方」を1枚の一覧にする
経理部門で使っているAIツール(チャット型AI、表計算の組み込み機能、翻訳など)について、自社の契約と設定を実際に開いて「入力した内容が残るか」「同じアカウントを誰が見られるか」「履歴の消し方」「学習に使われる設定か」を確かめ、ツールごとの一覧にする方法です。一覧の書式と確かめる項目はAI、設定の確認は人が画面で、使ってよい範囲の判断は責任者。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経理部門では、チャット型AI、表計算ソフトの組み込みAI、翻訳ツール、議事録の要約ツールと、気づけば4種類を使っています。利用ルールの1枚はあるのですが、部員からこう聞かれました。
- 「このツール、入れた内容は残るんですか?」答えられない。誰も設定を見たことがない。
- 「部の共有アカウントで使っているけど、私の履歴は他の人にも見えるの?」分からない。
- 「間違えて取引先名を入れた。消せますか?」消し方を誰も知らない。
- 「会社契約のと、個人で登録したのと、何が違うの?」契約の中身を見たことがない。
ツールを禁止する話でも、ルールを増やす話でもありません。この記事でやるのは、使っているツールごとに、自社の契約と設定を実際に開いて確かめ、1枚の一覧にすることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 経理部門で使っているAIツールを、全部書き出す … 人。組み込み機能も、個人登録も含めて。
(b) 確かめる項目を決める … ①契約の種類(会社契約・個人登録)、②入力した内容が残るか(履歴)、③同じアカウントを誰が見られるか、④入力が学習や改善に使われる設定か、⑤履歴の消し方、⑥管理者は誰か、⑦確認した日と確認した画面。
(c) 一覧の書式を作る … AI。
(d) ツールごとに、管理画面と規約の原文を開いて、項目を埋める … 人。「分からない」は「分からない」と書く。
(e) 一覧を見て、ツールごとに「使ってよい範囲」を決める … 責任者。
設定の中身を確かめること。「このツールは入力を保存しますか」とAIに聞いても、答えは自社の契約プランと設定によって違い、しかも変わります。管理画面と規約の原文を、人が開いて見ます。AIに任せるのは一覧の書式と、確かめる項目の抜けの指摘だけ。それから、使ってよい範囲は責任者が決めます。一覧は判断の材料で、判断そのものではありません。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 一覧の書式(ツール/契約の種類/履歴が残るか/誰が見られるか/学習に使われる設定か/消し方/管理者/確認日・確認した画面)
- 確かめる項目に抜けがないかの指摘
- 埋めた一覧から、「分からない」が残っている項目の一覧
- 部員向けの「聞かれたらここを見る」の1枚の下書き(一覧の内容は人が埋めたもの)
- ツールの洗い出し(個人登録も含めて)
- 設定と規約の確認(管理画面と原文で)
- 「分からない」項目を、ツールの提供元や情報システム部門に聞く
- ツールごとに使ってよい範囲を決める(責任者)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― ツールの一覧と、確かめる項目
AIに渡すのは、ツールの種類(チャット型・表計算の組み込み・翻訳・議事録)と、確かめる項目の案だけ。契約の内容やアカウント情報は渡しません。設定の中身をAIに聞くのではなく、書式を作らせます。
往復1回目 ― AIが「設定の中身」を書いた
②の書式の「履歴が残るか」の列に、チャット型AI(会社契約)の行だけ「通常、企業向けプランでは入力は学習に使われません」と埋まっていた。
書式を頼んだのに、中身が「一般的な仕様」で埋まっています。自社の契約がそうかどうかは、管理画面と規約の原文でしか分かりません。この一言が一覧に残ると、誰も確かめずに「大丈夫」になります。禁止事項に書いていてもこうなります。
「②のすべてのセルを空欄にしてください。設定の中身に関する記述は削除してください。」
②は空欄の表。①で追加候補は「保存先の地域」「退職者のアカウントの扱い」「ツールの提供元が変わったときの通知の有無」の3つ。③は、たとえば「履歴が残るか」は「残る・残らない・設定で選べる、のどれかと、設定で選べる場合は現在の設定値が書いてあれば埋まった」。
担当者と2人で、5種類のツールの管理画面と規約を開いて埋めます。チャット型AIの会社契約は「設定で選べる」で、現在の設定値を確認して記入。翻訳ツールは規約を読んでも分からず「分からない」と記入して、提供元に問い合わせます。
往復2回目 ― 「分からない」の扱い
埋めた一覧(中身は渡さず、「分からない」の位置だけ渡した)から残っている項目の一覧を頼むと、「『分からない』が残るツールは使用を停止すべきです」と付いていた。
「分からない」の位置が見えたのはよい。「停止すべき」は使ってよい範囲の判断で、翻訳ツールは社外秘を入れない前提で使い続ける、という判断もあります。
「使用の可否に関する記述を削除し、『分からない』の位置の表だけにしてください。」
表だけになった。「分からない」は翻訳ツールの2項目と、個人登録のチャット型AIの4項目。
責任者として決めたのは、個人登録のチャット型AIは、「分からない」が4つある間は業務では使わず会社契約に寄せる。翻訳ツールは、提供元の回答が来るまで社外秘を入れない範囲で使う。理由を一覧の下に書きます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 個人登録のツールが把握しきれない … 責めずに聞きます。「使っているものを教えてほしい。止める話ではなく、一覧に載せる話」と伝えます。
- 規約を読んでも分からない … 「分からない」と書いて提供元か情報システム部門に聞きます。推測で埋めません。
- ツールの設定や規約が変わった … 一覧の「確認日」が古いものから確認し直します。四半期のルール見直しと同じタイミングで。
- AIがまた設定の中身や可否を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 一覧のすべてのセルに、確認した画面と確認日があるか。推測で埋めたセルがないか。
- 「分からない」が、問い合わせ中か、使う範囲を絞る判断つきになっているか。
- 部員が「入れた内容は残る?」と聞かれたとき、一覧を開いて答えられるか。
- 一覧に、AIが書いた一般的な仕様や使用の可否が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「入れた内容は残る?」に、一覧の1行で答えられます。
- 「分からない」ツールが見え、社外秘を入れない範囲で使う判断が明示されます。
- 個人登録のツールが把握され、会社契約に寄せる話ができます。
- 一覧の確認日が、設定変更を追いかける目印になります。
- 自分が今日使ったAIツールを1つ選び、履歴の設定画面を開いてみる
- 「残る・残らない・選べる」のどれかを、画面を見て言えるか試す
- 言えなければ、それが一覧の最初の「分からない」
応用 ― 難易度を上げる場合
ルールの作り方は経理部門のAI利用ルールを、1枚で決める、渡す前の置き換えはAIに渡す前の置き換え(記号化・丸め・削除)を、資料の種類ごとの手順にするへ。四半期の見直しはAI利用ルールを、四半期ごとに「使った場面・困ったこと・変えること」の一覧で見直す。