監査役からの質問と回答を、テーマ・回答者・根拠資料つきの一覧にして次回に備える
監査役との定例や往査で受けた質問と、経理が答えた内容を「日付/テーマ/質問の要旨/回答の要旨/回答者/根拠資料/宿題の有無」の一覧にし、次回の前に「宿題が残っている質問」「同じテーマで繰り返し聞かれている質問」「根拠資料が空欄の回答」をAIに出させる方法です。整理と抽出はAI、回答の内容と宿題の対応は経理責任者、監査役への説明は人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。監査役との定例が四半期に1回、それとは別に往査が年1回あります。月次の報告は「変わったこと」に絞る形で回っています。定例の場で、こう言われました。
- 「前回も同じことを聞きましたが、その後どうなりましたか」前回、何と答えたか、経理の側が思い出せない。
- 「あのとき『確認します』と言われた件は?」宿題になっていたことを、議事メモに書いていなかった。
- 同じテーマ(滞留債権、子会社の資金)が、毎回聞かれる。毎回、その場で数字を探している。
- 回答の根拠を「あとで送ります」と言って、送っていない。
監査役への説明そのものは責任者の話。この記事でやるのは、質問と回答を一覧にして、次回の前に「残っていること」を見られるようにすることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 一覧の型を決める … 日付/場(定例・往査・個別)/テーマ/質問の要旨/回答の要旨/回答者(職位)/根拠資料(名前と所在)/宿題(あり・なし・完了日)。
(b) 定例のあと、その日のうちに質問と回答を1行ずつ書く … 出席した経理担当。
(c) 次回の1週間前に、①宿題が「あり」のまま完了日がない行、②同じテーマで3回以上聞かれている質問、③根拠資料が空欄の回答、を出す … AI。
(d) ①の宿題を片づけ、②のテーマは次回の資料に先に入れ、③の根拠を送る … 経理責任者。
(e) 一覧を年1回、監査役にも見せて「聞いたこと・答えたこと」を揃える … 責任者。
回答の内容を作ること、宿題にどう対応するかを決めること、監査役に説明すること。一覧は「何を聞かれ、何と答えたか」の記録で、次に何と答えるかはAIが作るものではありません。特に、会計処理の妥当性に関わる質問への回答は、責任者が監査法人とも確認して作ります。それから、回答の要旨に、社外秘の数字は書きません。数字は根拠資料の側に置き、一覧には資料の名前だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 議事メモの文章から、質問と回答を1行ずつに分ける(型に沿って)
- 宿題が完了していない行、同じテーマの繰り返し、根拠資料が空欄の回答を出す
- テーマごとの質問の件数と、初めて聞かれた日の一覧
- 次回の前に見る1枚(残っていること)の下書き
- 回答の内容(責任者。会計処理に関わるものは監査法人とも)
- 宿題の対応と完了の判断
- 繰り返されるテーマを、次回の資料にどう入れるか
- 一覧を監査役と共有するかどうか
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 議事メモの本文と、これまでの一覧
直近の定例の議事メモ(発言者は職位に、数字は削除か丸め)と、これまでの一覧。根拠資料そのものは渡しません。名前だけ。
往復1回目 ― AIが「回答案」を書いた
②で宿題が残っている行が4件。そのうち「子会社S3の貸付の回収見込み」について、「次回は回収計画と担保の状況を説明することで質問に応えられます」と付いていた。
4件の抽出は見たかったもの。「こう説明すれば応えられる」は回答案で、S3の貸付の回収見込みは、責任者が監査法人とも確認して答える内容です。禁止事項に書いていてもこうなります。
「回答案や説明の方法に関する記述を削除し、②は表だけにしてください。」
①は今回の定例から質問9件。②は宿題4件(うち2件は2回前から)。③は「滞留債権」5回、「子会社の資金」4回、「経理の人員」3回。④は根拠資料が空欄の回答が11件。
責任者と、②の4件の対応を決めます。S3の件は、責任者が監査法人と話してから次回に説明。③の3テーマは、次回の資料の最初の3ページに固定します。毎回その場で探さない。
往復2回目 ― 「根拠資料が空欄」の11件
④の11件について、「根拠資料のない回答は信頼性に欠けるため、監査役への説明として不十分です」と付いていた。
11件は見たかったもの。「信頼性に欠ける」「不十分」は回答の評価で、口頭で答えて済んだ質問(資料の要らない事実の確認)もあります。空欄は「送っていない」か「要らない」かのどちらか。
「評価の記述を削除し、④に『根拠資料が必要か(要・不要・未定)』の空欄の列を足してください。」
表に空欄の列が足された。
11件を責任者と見て、「要」が5件、「不要」が6件。5件は「あとで送ります」と言って送っていなかったもの。次回の前に送り、一覧の根拠資料を埋めます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 議事メモがない、口頭のやりとりだけ … 定例のその日に、覚えている質問だけでも1行ずつ書きます。翌日には忘れます。
- 監査役が複数で、それぞれ聞くことが違う … 質問者の列を足します(職位で)。テーマの繰り返しは、監査役ごとにも見ます。
- 会計処理の妥当性に関わる質問が多い … 一覧は記録まで。回答は責任者が監査法人と確認します。AIには回答を作らせません。
- AIがまた回答案や評価を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 定例のたびに、質問がすべて一覧に入っているか。監査役に「前回聞いた」と言われて一覧にない、がないか。
- 次回の前に、宿題「あり」の行がすべて対応済みか、対応中と分かる状態か。
- 「要」の根拠資料が、すべて送られて一覧に名前があるか。
- 一覧に、AIの回答案や評価が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「前回も聞きましたが」に、前回の回答を一覧で答えられます。
- 宿題が、次回の前に片づくか、対応中と説明できる状態になります。
- 繰り返されるテーマが、資料の固定ページになり、その場で探さなくなります。
- 一覧が、監査役の交代のときの引き継ぎ資料になります。
- 前回の監査役との定例で聞かれた質問を、思い出せるだけ書き出す
- そのうち「確認します」と答えたものに印を付ける
- 印のうち、まだ返していないものが、一覧の最初の宿題
応用 ― 難易度を上げる場合
月次報告の絞り方は監査役への月次報告を、「変わったこと」と「経理が判断したこと」に絞る、監査法人からの指摘の対応表は監査法人からの指摘・改善提案を、翌期の対応表にして四半期ごとに進捗を残すへ。株主総会の想定問答は株主総会の想定問答のうち数字の質問を、計算書類のどこで答えるかに紐づける。