部門長向けの予実の報告を、「部門が動かせる数字」と「配賦で来る数字」に分けて出す
部門別損益の各科目を「部門が自分で動かせる(人件費の残業、外注、旅費など)」「部門の活動に連動するが単価は動かせない(システム利用料など)」「配賦で来る(本社費、共通費)」の3つに分け、予実の差を3つの区分ごとに出して、部門長に「動かせる数字の差」から説明する方法です。区分の候補と集計はAI、区分の確定と配賦のルールは経理と部門の合意、報告の内容は経理責任者。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。部門別損益を月次で出し、予実の差は数量・単価・時期に分け、決めることで並べ直しています。部門長に報告すると、こうなります。
- 「配賦のせいで自分たちには関係ない」と言われる。本社費の配賦が増えて、部門の利益が減った月。部門長は自分の数字を見なくなる。
- 部門が動かせる数字(残業・外注・旅費)の差が、配賦の差に埋もれる。本当は外注が予算の2倍なのに、話が配賦に行く。
- どの科目が「動かせる」かを、経理と部門で合意していない。部門長は「システム利用料も本社が決めた」と言う。
- 報告の形が毎月同じで、部門長が読まない。
配賦のルールそのものは別の一覧の話。この記事でやるのは、科目を「動かせる・連動する・配賦」の3つに分けて、予実の差をその順で報告することです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 部門別損益の科目を3つに分ける案を作る … AI(候補)。①動かせる:部門長の判断で増減する科目。②連動する:部門の活動量で決まるが単価は部門が決めない科目。③配賦:本社・共通費の配賦。
(b) 案を経理と部門長で合意して確定する … 人。部門によって違ってよい。
(c) 月次で、3つの区分ごとに予算・実績・差を集計し、①の差の大きい科目を上位3つ、②の差を活動量の差で、③の差を配賦の元の差で、出す … AI。
(d) 部門長への報告を、①→②→③の順で作る … 経理。①は部門長が決めること、③は「お知らせ」。
(e) ③の差が大きい月は、配賦のルールの見直しの議題に … 経理責任者。
科目の区分の確定、配賦のルール、報告の内容。「動かせる」かどうかは、この会社の決裁の仕組みで決まることで、AIの候補は一般論です。経理と部門長で合意して確定します。それから、金額は丸めるか率で渡します。部門名は記号でも、科目名はそのまま。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 科目を3つに分ける案(理由つき)
- 3つの区分ごとの予算・実績・差の集計
- ①の差の大きい科目の上位3つ、②の差と活動量の差の並記、③の差と配賦の元の差の並記
- 部門長向けの報告の書式(①→②→③の順)
- 区分の確定(経理と部門長の合意)
- 配賦のルール(経理責任者と部門)
- 報告の内容と、部門長に聞くこと(経理)
- 配賦の差が大きいときの対応(経理責任者)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 科目の一覧と、区分の確定案
部門別損益の科目の一覧(科目名と、何の費用かの1行)。区分を確定したあとは、月次の予算・実績(万円単位に丸め)と活動量(人数・件数)。部門は記号、金額は丸め。
往復1回目 ― AIが「理由」と「運営」を書いた
③で「外注費」が予算の2倍。表の下に「外注費の超過は人員不足による外注依存が原因と考えられ、採用の検討を推奨します」と付いていた。
外注費の差は見たかったもの。「人員不足」「採用の検討」は理由の推測と部門の運営の話で、部門長が決めることです。禁止事項に書いていてもこうなります。報告に残ると、部門長は「経理に言われた」と受け取ります。
「理由と運営の記述を削除し、③は表だけにしてください。」
①は動かせるが12科目、連動するが8科目、配賦が7科目、要確認が3科目。②は区分ごとの合計。③は外注費・残業代・旅費。④は連動する科目の差と活動量、配賦の差。
①の案を部門長と30分話して、要確認の3科目を決め、「システム利用料」は部門長の主張どおり「連動する」に。報告は③の3科目から始め、外注費については「予算の2倍ですが、何が起きていますか」と聞くだけ。理由は部門長が話します。
往復2回目 ― 配賦の差
④の配賦の差が大きく、「本社費の配賦基準が部門の実態に合っていない可能性があり、基準の見直しを提案します」と付いていた。
配賦の差の一覧はよい。「基準の見直し」は経理責任者と全部門の話で、1部門の報告に書くことではありません。配賦の元(本社費そのもの)が増えただけかもしれません。
「基準の見直しの記述を削除し、④の配賦の表に『配賦の元の差(全社の本社費の予実差)』の列を足してください。」
配賦の差の隣に、全社の本社費の予実差が並んだ。配賦の差の大半は、本社費そのものの増加。
報告の③の区分は、「本社費が全社で増えたため、配賦も増えています。基準の変更はありません」の1行にします。部門長に「関係ない」と言われる前に、関係ないことを先に言う。本社費の増加は、経理責任者が別に見ます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 部門長が「全部本社が決めた」と言う … 区分の合意の場で、「では残業と外注は誰が決めますか」と聞きます。1つでも「自分」があれば、そこから。
- 区分が部門によって違って、全社の集計がしにくい … 部門ごとの区分でよい。全社の集計は科目のまま。区分は報告の順番のため。
- 「動かせる」の差が毎月小さくて、報告が薄い … それはよい部門。報告は短く。差のない月に長く書くことはありません。
- AIがまた理由や運営や基準の話を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- すべての科目に、部門長と合意した区分があるか。「要確認」が残っていないか。
- 報告が「動かせる」の差から始まり、配賦は最後に1行になっているか。
- 部門長からの「配賦のせい」が減り、「動かせる」の差の話ができたか。
- 報告に、AIの理由の推測や運営の提案が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 部門長との話が、配賦ではなく「動かせる数字」から始まります。
- 外注や残業の差が、配賦の差に埋もれなくなります。
- 「関係ない」と言われる前に、関係ないことを先に伝えられます。
- 配賦の元の差が、経理責任者の議題として分かれます。
- 1つの部門の損益の科目を上から見て、「部門長が自分で増減させられる科目」に印を付ける
- 印の科目の予実の差だけを合計する
- その差を部門長に見せたとき、「関係ない」と言われるかを想像する
応用 ― 難易度を上げる場合
差の3分解は予実差異を「数量・単価・時期のずれ」の3つに分けて、部門長に聞く質問にする、決めることで並べるのは予算と実績の差を、「誰が次に何を決めるか」で並べ直すへ。配賦基準の一覧は共通費の配賦基準を、「根拠・決めた日・見直し条件」つきの一覧にする。