経理部門の改善 › ツール運用活用案

会計システムとExcelの年度更新の作業を、去年の記録から順番つきのチェックリストにする

期首に行う年度更新(会計システムの新年度の開始、繰越、Excelの年度切り替え、参照先の付け替え、マスタの有効期限)を、去年のメールとメモから「順番・担当・前提・確認方法」つきのチェックリストにし、順番が決まらない作業と担当が分からない作業をAIに出させる方法です。整理はAI、順番と担当の確定は担当者と責任者、実行は人。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。3月決算で、4月の最初の週に「年度更新」の作業があります。会計システムの新年度の開始、残高の繰越、部門別のExcelの年度切り替え、固定資産台帳の年度、予算の入れ替え。毎年やっているのに、こうなります。

  • 「去年どうやったっけ」から始まる。去年のメールを検索して、順番を思い出す。
  • 順番を間違えて、やり直す。繰越の前にExcelの参照先を新年度に付け替えて、去年の数字が消えた。
  • 誰がやる作業か、はっきりしない。システム側の作業と経理側の作業の境目で、お互いが待っている。
  • 終わったかどうかを確かめる方法がない。「たぶんやった」で進んで、5月に「新年度の部門コードが有効になっていない」と分かる。

システムの操作手順そのものはマニュアルの話。この記事でやるのは、去年の記録から、作業を順番・担当・前提・確認方法つきのチェックリストにして、来年はそれを見ながらやることです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 去年の年度更新に関するメール・チャット・メモを集める … 人。件名で検索して、日付順に並べる。
(b) そこから「作業」を1つずつ抜き出し、日付・担当(職位)・前提(先に終わっていること)・確認方法(何を見れば終わったと分かるか)を付ける … AI。
(c) 前提から順番を組み、順番が決まらない作業と担当が読み取れない作業を出す … AI。
(d) 決まらない部分を埋め、順番と担当を確定する … 担当者と責任者。
(e) 今年は、このリストを見ながら実行し、終わった作業に日付を入れる。ずれたところをリストに直す … 人。

ここはAIを使わない

年度更新の実行そのもの、順番の確定、担当の確定。AIは去年の記録から「たぶんこの順番」を並べますが、去年が正しかったとは限りません(去年もやり直しています)。順番は、前提を1つずつ確かめて人が決めます。それから、会計システムのログイン情報・残高の数字は渡しません。渡すのは作業の名前・日付・職位だけ。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 去年のメール・メモから作業を1つずつ抜き出し、日付・担当・前提・確認方法を付ける
  • 前提の関係から順番を組み、決まらない作業を出す
  • 担当が読み取れない作業、確認方法が書けない作業を出す
  • チェックリストの書式(順番/作業/担当/前提/確認方法/今年の実施日)
人が判断する
  • 順番の確定(前提を確かめて)
  • 担当の確定(システム側・経理側)
  • 年度更新の実行と、実施日の記入
  • 今年ずれたところをリストに直す

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 去年の記録を日付順に

去年3月〜5月の、年度更新に関するメール・チャットの本文を集めます。人名は職位に、ログイン情報・残高の数字は削除。本文が長ければ、作業に関わる部分だけ。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。渡すのは去年の記録の本文(職位・数字を置き換えたもの)だけです。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。期首の年度更新の作業を、去年の記録からチェックリストにしたいと考えています。読み手は私と、来年この作業をする人です。 【事実/入力】 ・以下に、去年の3月から5月の年度更新に関するメール・チャット・メモの本文を、日付順に貼ります(約40通。人名は職位、数字は削除済み) ・対象は、会計システムの新年度開始と繰越、部門別Excelの年度切り替え、固定資産台帳の年度、予算の入れ替え、マスタの有効期限です ・順番と担当は、私と責任者が最終的に決めます 【依頼】 ①記録から「作業」を1つずつ抜き出し、去年の実施日・担当の職位・前提(先に終わっている必要がある作業)・確認方法(何を見れば終わったと分かるか)を付けてください ②前提の関係から順番を組み、順番が一意に決まらない作業を別に出してください ③担当が記録から読み取れない作業、確認方法が記録から分からない作業を出してください ④去年やり直しになった作業と、その直前にやっていた作業を出してください 【出力の型】 ①:表:作業/去年の実施日/担当の職位/前提/確認方法/根拠となる記録の日付 ②:順番つきの一覧+決まらない作業の表(作業/候補の順番/決まらない理由) ③④:表:作業/読み取れない項目または やり直しの内容/記録の日付 【禁止事項】 ・記録にない作業を、一般的な年度更新の知識で足さないでください ・順番を断定しないでください(候補と明記) ・システムの操作手順を書かないでください

往復1回目 ― AIが「一般的な作業」を足した

AIの初稿

①に「消費税の課税区分の年度設定」「電子申告ソフトの年度更新」が入っていた。根拠の記録の日付は空欄。

ここが問題

去年の記録にない作業です。一般的な年度更新の知識で足したもので、この会社ではその作業は税理士側で行っています。リストに載ると、来年の担当者が「やっていない」と慌てます。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「根拠の記録の日付が空欄の作業を①から削除してください。記録にある作業だけにしてください。」

修正版

①は18作業。②で順番が決まらないのが3作業(Excelの参照先の付け替えと繰越の前後、予算の入れ替えとマスタの有効期限の前後)。③で担当が読めないのが4作業。④でやり直しが1件(参照先の付け替え→繰越の順でやって、去年の数字が消えた)。

人が最後にやること

④のやり直しが、②の「決まらない」と同じ作業でした。繰越が先、参照先の付け替えが後、と確定して、前提に「繰越の確認方法(新年度の期首残高が去年の期末残高と一致)が済んでいること」を書きます。決めたのは担当者と責任者。

往復2回目 ― 「担当が読めない」4作業

AIの初稿

③の4作業について、「システムに関する作業のため、情報システム部門の担当と推定します」と担当欄が埋められていた。

ここが問題

推定で担当が埋まると、「読めない」が消えて、来年また待ち合いになります。去年、まさにこの4作業で情報システム部門と経理がお互いを待っていました。

追加で出した指示

「推定の担当を削除し、担当欄は『未定』としてください。」

修正版

4作業が「未定」に戻った。

人が最後にやること

情報システム部門と30分話して、4作業のうち2つは情報システム、2つは経理と決め、境目の作業には「情報システムが終えたら経理に連絡する」の1行を足します。リストは共有フォルダに置き、今年の実施日を両部門が書き込みます。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 去年の記録がほとんどない … 今年の作業を、やりながら1行ずつ書きます。今年の記録が来年のリストの元。
  • システムを入れ替えて、去年と作業が違う … 去年のリストは「確認方法」の部分だけ引き継ぎ、作業は新しいシステムのマニュアルから。
  • リストどおりにやったのに、5月に不備が見つかる … その不備の確認方法をリストに足します。リストは毎年育つもの。
  • AIがまた一般論や推定を足す … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. リストのすべての作業に、担当と確認方法があるか。「未定」が期首までに埋まっているか。
  2. 今年の年度更新が、リストの順番どおりに進み、やり直しがなかったか。
  3. 終わった作業すべてに、今年の実施日が入っているか。
  4. リストに、記録にない作業や推定の担当が混ざっていないか。

7. 注意点

ログイン情報・残高の数字はAIに渡しません。渡すのは作業の名前・日付・職位だけ。社内ルールで確認してください。
去年の順番が正しいとは限りません。前提を1つずつ確かめて、人が順番を決めます。
リストは実行の記録ではありません。終わったら実施日を書き、確認方法で確かめます。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 期首の作業が、「去年どうやったっけ」ではなくリストから始まります。
  • 順番の間違いによるやり直しが、前提の確認で防げます。
  • 情報システム部門と経理の境目の作業で、待ち合いがなくなります。
  • 今年の実施日と直したところが、来年のリストになります。
明日の仕事で試すこと
  • 去年4月のメールを「年度」「繰越」で検索し、何通あるか見る
  • その中で「やり直し」「もう一度」が出てくるメールを探す
  • あれば、その作業の前提が、リストの最初の1行

応用 ― 難易度を上げる場合

月次の作業の棚卸しは月次の作業を「誰が・いつ・何を見て・何を出すか」で棚卸しする、前任者のExcelの扱いは前任者のExcelを渡されたが、どこを触っていいのかわからないときへ。マスタの変更の記録は経理システムのマスタ(取引先・科目・部門)の変更を、月次で「誰が・何を・なぜ」の一覧にする。