資金繰り・財務 › 為替・金利活用案

外貨口座の入出金予定を通貨ごとに並べて、「両替が要る日」と「余る通貨」を出す

外貨建ての売掛金の入金予定・買掛金の支払予定・外貨口座の残高を通貨ごとに日付順に並べ、「残高が足りなくなる日」「入金があるのに同じ通貨の支払がなく余る通貨」「同じ日に入金と支払がある通貨」をAIに出させる方法です。整理と抽出はAI、両替の要否・時期・為替予約は財務責任者、レートの判断は人。

AI操作難易度★★☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。海外の顧客からドルとユーロで入金があり、海外のクラウドサービスにドルで支払い、海外の協力会社にユーロで支払っています。外貨口座はドルとユーロの2つ。円の資金繰り表(資金繰り表)はあるのですが、外貨は。

  • ドルの支払日に、ドル口座の残高が足りなかった。慌てて円から両替。その日のレートで。
  • ユーロは入金が続いて口座に溜まっている。ユーロの支払は少なく、使い道がないまま残高だけ増える。
  • 同じ週にドルの入金とドルの支払があるのに、入金前に両替してしまった。待てば要らなかった。
  • 外貨の入金予定は営業が、支払予定は購買が持っていて、通貨ごとに並べた人がいない。

為替の見通しや予約の判断は財務責任者と銀行の話。この記事でやるのは、通貨ごとに入金・支払・残高を日付順に並べて、「両替が要る日」を前もって見えるようにすることです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 通貨ごとに、外貨口座の残高(今日)、外貨建て売掛金の入金予定(日付・金額)、外貨建て買掛金の支払予定(日付・金額)を集める … 人。営業と購買から。
(b) 通貨ごとに日付順に並べ、日ごとの残高の推移を出す。①残高がマイナスになる日、②入金だけが続いて残高が増える通貨、③同じ週に入金と支払がある通貨と日付、を出す … AI。
(c) ①について、両替するか、入金を待つか、支払日をずらす相談をするかを決める … 財務責任者。
(d) ②について、両替して円に戻すか、持っておくかを決める … 財務責任者。
(e) 週次で(a)(b)を回し、予定の日付がずれたら直す … 担当者。

ここはAIを使わない

両替するかどうか、いつするか、為替予約をするか。AIは「10月14日にドルが足りなくなる」までは出せますが、そこで両替するか入金を待つかは、レートの見通しと資金の余裕の話で、財務責任者が決めます。AIに為替の見通しを聞きません。それから、顧客名・取引先名は記号に置き換え、口座番号は渡しません。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 通貨ごとに入金予定・支払予定・残高を日付順に並べ、日ごとの残高推移を出す
  • 残高がマイナスになる日と、その不足額を出す
  • 入金だけが続いて増える通貨、同じ週に入金と支払がある通貨を出す
  • 先週の表と比べて、日付がずれた予定を出す
人が判断する
  • 両替の要否・時期・金額(財務責任者)
  • 為替予約の要否(財務責任者と銀行)
  • 入金予定の確からしさ(営業に聞く)
  • 支払日をずらす相談(購買と取引先)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 通貨ごとの予定と残高

通貨(USD・EUR)ごとに、今日の口座残高、入金予定(日付/顧客記号/金額)、支払予定(日付/取引先記号/金額)。顧客・取引先は記号、口座番号は渡しません。金額は外貨のまま。

用語:チャット型AIと、手元のExcelでの前処理(相手先の記号化)を組み合わせます。渡すのは通貨・日付・記号・金額だけです。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は財務担当です。外貨口座の残高と、外貨建ての入金予定・支払予定を通貨ごとに日付順に並べて、残高が足りなくなる日と余る通貨を見つけたいと考えています。読み手は私と財務責任者です。 【事実/入力】 ・通貨はUSDとEURの2つ。今日は9月16日、見る期間は12月末までです ・以下に、通貨ごとの今日の口座残高を貼ります ・以下に、入金予定(通貨/日付/顧客記号/金額)を貼ります(約30件) ・以下に、支払予定(通貨/日付/取引先記号/金額)を貼ります(約40件) ・両替の要否と時期、為替予約は財務責任者が決めます 【依頼】 ①通貨ごとに、入金と支払を日付順に並べ、その日の後の残高を出してください ②残高がマイナスになる最初の日と、その日の不足額を通貨ごとに出してください ③12月末時点の残高が今日より増える通貨と、その増加額を出してください ④同じ通貨で、同じ週に入金と支払の両方がある週を出してください 【出力の型】 ①:通貨ごとの表:日付/入金または支払/相手先記号/金額/残高 ②:表:通貨/最初にマイナスになる日/不足額 ③:表:通貨/今日の残高/12月末の残高/増減 ④:表:通貨/週(月曜の日付)/入金合計/支払合計 【禁止事項】 ・両替すべき、予約すべき、為替の見通しについて書かないでください ・円換算をしないでください(外貨のままで) ・貼っていない予定を足さないでください

往復1回目 ― AIが「両替を推奨」した

AIの初稿

②で「USD:10月14日にマイナス、不足 32,000」。その下に「10月10日までに円からUSDへ両替することを推奨します。なお、10月20日に大口入金があるため、支払を延期できれば両替は不要です」と付いていた。

ここが問題

不足の日と額は見たかったもの。「両替を推奨」「支払を延期できれば」は、財務責任者の判断と取引先との関係の話です。禁止事項に書いていてもこうなります。ただ、「10月20日に入金がある」という事実の指摘は使えます。

追加で出した指示

「推奨と延期の記述を削除してください。②に『マイナスになる日の後、最初に残高がプラスに戻る日』の列を足してください。」

修正版

②はUSDが10/14にマイナス、10/20にプラスに戻る。EURはマイナスなし。③はEURが12月末に今日の約2倍。④はUSDで3週、EURで1週。

人が最後にやること

財務責任者に「USDは10/14〜10/20の6日間だけ足りない」と伝えます。責任者は、10/14の支払先に支払日を10/21にできるか購買から聞いてもらい、無理なら不足分だけ両替する、と決めました。決めたのは責任者。表は事実だけ。

往復2回目 ― 入金予定の「確からしさ」

AIの初稿

①のUSDの表で、10/20の大口入金(顧客C3)が残高を大きく戻していた。先週の表と比べると、この入金は先週「10/10」だった。AIは日付のずれを出さず、そのまま並べていた。

ここが問題

入金予定は動きます。先週10/10だった入金が今週10/20になっているなら、来週は11月かもしれない。この入金を当てにして両替を待つのは危ない。AIは頼まなければ、先週との違いを出しません。

追加で出した指示

「先週の入金予定(以下に貼ります)と比べて、日付が変わった予定と金額が変わった予定を出してください。」

修正版

日付が変わったのが4件(うちC3は2度目のずれ)、金額が変わったのが1件。

人が最後にやること

C3の入金を営業に聞くと、顧客側の検収が遅れていて、10/20も確実ではないとのこと。責任者は、C3の入金を当てにせず10/14の不足分は両替する、に判断を変えました。表に「C3:2度ずれ、営業確認中」と書き添えます。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 入金予定を営業が出してくれない … 売掛金の一覧の支払期日を入金予定の代わりにします。実績とのずれは週次で直します。
  • 通貨が3つ以上ある … 通貨ごとにシートを分けます。やり方は同じ。
  • 外貨口座の残高が銀行の画面でしか分からない … 毎週の同じ曜日に写します。毎朝の残高に外貨の行を足すのも手。
  • AIがまた両替や見通しを書く … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 通貨ごとの今日の残高が、銀行の画面と一致しているか。
  2. 残高がマイナスになる日が、その日の2週間以上前に見えているか。当日に慌てていないか。
  3. 2度以上日付がずれた入金予定に、営業の確認がついているか。
  4. 表に、AIの両替の推奨や為替の見通しが混ざっていないか。

7. 注意点

顧客・取引先は記号、口座番号は渡しません。社内ルールで確認してください。
両替・予約の判断と為替の見通しは、AIに聞きません。財務責任者と取引銀行で決めます。この記事は資金の予定を並べるところまで。
入金予定は動きます。先週との違いを毎週出し、2度ずれた予定は当てにしません。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 外貨が足りなくなる日が、当日ではなく2週間前に見えます。
  • 同じ通貨の入金を待てば要らない両替が、減ります。
  • 溜まる通貨が見え、持つか戻すかの判断が責任者に上がります。
  • 入金予定のずれの記録が、営業との「予定の精度」の話の元になります。
明日の仕事で試すこと
  • 外貨口座の今日の残高と、次の外貨の支払日・金額を紙に書く
  • その支払日までに、同じ通貨の入金予定があるかを営業に聞く
  • 「分からない」なら、それが通貨ごとの表を作る理由

応用 ― 難易度を上げる場合

為替予約との突き合わせは為替予約の契約・期日を一覧にして、外貨の支払予定と突き合わせる、円の資金繰り表は資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行うへ。毎朝の残高は複数口座の残高を、毎朝1枚にまとめて「いつもと違う」を見る。