為替予約の契約・期日を一覧にして、外貨の支払予定と突き合わせる
銀行との為替予約の契約(通貨・金額・レート・受渡日)を契約確認書から一覧にし、外貨建ての支払予定(輸入・海外外注)と期日・金額で突き合わせて、予約が付いていない支払と支払のない予約をAIに出させる方法です。突合はAI、契約確認書との照合と予約の要否は人、会計処理は基準の原文と監査法人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。海外の外注先とクラウドサービスへの支払が外貨建てで、毎月あります。財務が銀行と為替予約を結んでいますが、予約と支払の対応が管理されていません。
- 為替予約の契約確認書は、財務のフォルダにPDFで溜まっている。一覧にはなっていない。
- 受渡日に、予約した金額と実際の支払金額が合わない。差額を直物で買っている。予約が多すぎた月もある。
- 予約を付けた支払と、付けていない支払が混ざっている。どの支払に予約を当てる方針だったか、前任者しか知らない。
- 監査法人から「為替予約の一覧と、対応する取引を」と言われた。PDFを1つずつ開いて答えた。
予約の要否と会計処理は、財務の方針と基準・監査法人の話。この記事でやるのは、予約の契約を一覧にし、支払予定と突き合わせて、対応の取れていないものを出すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 契約確認書から、予約を一覧にする … 予約番号/銀行記号/通貨/外貨金額/レート/受渡日/契約日。AI(PDFの文字から)。人が原文と照合。
(b) 外貨建ての支払予定を一覧にする … 相手記号/通貨/外貨金額/支払予定日/対応する予約番号(分かれば)。
(c) 突き合わせる … 受渡日と支払予定日が近く、通貨・金額が対応する組/予約が付いていない支払/支払のない予約/金額の差。AI。
(d) 対応の取れていないものについて、財務の方針に照らして予約を追加・調整する … 人。銀行と。
予約を付けるかどうか、いくら付けるか、そして会計処理。AIに「この支払に予約を付けるべきか」と聞くと、「為替リスクを回避するため予約を推奨」と答えますが、それは財務の方針(どの通貨・どの期間・どの割合を予約するか)で決まることです。会計処理(ヘッジ会計の適用・換算)は基準の原文と監査法人と。それから、レートの数値をAIに聞かない(AIは為替データを持っていません)。AIに任せるのは、契約確認書から一覧を作り、支払予定と突き合わせるまで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 契約確認書の文字から、予約の条件を一覧に抜き出す(人が原文と照合)
- 予約の一覧と支払予定を、通貨・金額・日付で突き合わせ、対応の候補を出す
- 予約が付いていない支払、支払のない予約、金額の差を出す
- 受渡日を月別に集計し、月ごとの予約残高を出す
- 抜き出した条件が契約確認書と一致しているか
- 対応の候補が正しいか(財務の記録で)
- 予約の追加・調整(財務の方針・銀行)
- 会計処理(基準の原文・監査法人)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 契約確認書と支払予定
為替予約の契約確認書の文字(PDFからコピー。銀行名は記号)、外貨建ての支払予定(相手記号/通貨/外貨金額/支払予定日)。金額は外貨のまま、円換算は不要。
往復1回目 ― AIが「予約を推奨」した
③の「予約なし」の支払4件に「為替リスク回避のため予約の締結を推奨します」と付き、②の末尾に「現在のレート水準を考慮すると…」という一文があった。
予約の要否は財務の方針で、レートの水準はAIが知らないことです。この一文が上司に渡ると、方針の議論ではなく「AIが推奨している」から始まります。禁止事項に書いていてもこうなります。
「推奨とレートに関する記述をすべて削除してください。②③は事実の表だけにしてください。」
①は予約12本。②で対応の候補が9組。③は「予約なしの支払4件」「支払のない予約2本」「金額差1組(予約 50,000 USD/支払 42,000 USD)」。
①の12本を、契約確認書の原文と照合します。②の9組を財務の記録(どの支払のために予約したか)で確かめます。「支払のない予約2本」は、予約したあとに支払が取消になったもので、受渡日にどうするかを銀行と相談します。方針に照らして、上司と。
往復2回目 ― 月別の予約残高
続けて「受渡日を月別に集計し、通貨ごとの予約残高と、同じ月の支払予定の合計を並べてください」と頼みます。
月別の表はできた。11月に「予約 120,000 USD/支払予定 60,000 USD」と、予約が支払の2倍になっていた。「過剰な予約はリスクとなるため見直しが必要です」と付いていた。
2倍という事実は、これが見たかったもの。ただし「見直しが必要」は方針の判断で、11月に大型の支払予定がまだ登録されていないだけかもしれません。
「評価を削除し、月別の表だけにしてください。」
表だけになった。
11月の支払予定を購買と確認します。この架空例では、大型の外注の支払予定が支払予定の一覧に登録されていませんでした。予約が多いのではなく、支払予定の登録が漏れていた。支払予定の一覧を購買と毎月揃える運用にします。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 契約確認書の様式が銀行ごとに違う … 銀行ごとに分けて貼ります。項目名が違っても、①の列は同じ。
- 支払予定が外貨で管理されていない … 購買に「外貨金額」の列を足してもらいます。円換算後の金額では突き合わせになりません。
- 予約を複数の支払に分けて当てている … ②の「対応」を1対多にします。AIに「1本の予約を複数の支払に対応づけてよい」と指示します。確認は財務の記録で。
- AIがまた推奨やレートを書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- ①の全予約が、契約確認書の原文と一致しているか。
- ②の対応が、財務の記録で確かめられたか。
- ③の「予約なし」「支払なし」「金額差」について、方針に照らして扱いを決めたか。
- 監査法人の「予約の一覧と対応する取引」に、一覧で答えられたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「予約の一覧と対応する取引」に、一覧で即答できます。
- 予約と支払の対応が毎月確かめられ、受渡日の差額が減ります。
- 支払予定の登録漏れが、予約の突合から見つかります。
- 一覧が、会計処理の資料と監査法人への説明資料になります。
- 為替予約の契約確認書を3通開き、通貨・金額・受渡日を書き出す
- その受渡日の前後5営業日に、同じ通貨の支払予定があるか探す
- なければ、それが「支払のない予約」の第1号
応用 ― 難易度を上げる場合
借入の契約の一覧は借入金の一覧(返済日・金利・担保・条項)を契約書から作り、返済予定表と帳簿残高を突き合わせると同じ型です。為替の変動が資金繰りに与える影響は資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行うのシナリオで。在外子会社の換算レートは在外子会社の換算に使うレートと決算日を、子会社ごとの一覧にして毎期確かめる。