借入金の一覧(返済日・金利・担保・条項)を契約書から作り、返済予定表と帳簿残高を突き合わせる
借入契約書から「借入先/金額/返済日と方法/金利の種類/担保・保証/特約」を原文のまま抜き出して一覧にし、返済予定表と帳簿の残高を突き合わせて、合わない借入と一覧にない借入をAIに出させる方法です。抜き出しと突合はAI、契約書との照合と差額の原因は人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。銀行からの借入が5本あります。証書貸付が3本、当座貸越が1本、リース会社からの借入が1本。契約書は金庫、返済予定表は財務のExcel、残高は帳簿。
- 「借入の一覧をください」と言われて、返済予定表を渡した。金利の種類(固定・変動)、担保、特約は載っていない。
- 返済予定表の残高と、帳簿の残高が、1本だけ合わない。繰上返済したのか、予定表の更新漏れか、帳簿の計上漏れか。
- 当座貸越の残高が、予定表に載っていない。日々変わるので、誰も表にしていなかった。
- 金利の見直し日(変動金利の基準日)が、契約書のどこに書いてあるか、すぐに言えない。
やりたいのは、契約書から条件を原文のまま一覧にし、返済予定表と帳簿残高と突き合わせて、合わないものを出すことです。財務制限条項の中身は別の記事で扱います。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 契約書ごとに、条件を原文のまま抜き出す … 借入先/契約日/金額/返済日と方法/金利(種類・見直し日)/担保・保証/特約の有無。AI。人が原文と照合。
(b) 返済予定表の各借入の「今月末の予定残高」と、帳簿の残高を並べる … AI。
(c) 合わない借入、一覧にない残高(帳簿にあって一覧にない)、一覧にあって帳簿にない借入を出す … AI。
(d) 差額の原因を、返済の記録と銀行の残高証明で確かめる … 人。
契約条件の解釈と、差額の原因の決定。AIは「差額は繰上返済によるものと思われます」と書きますが、返済の記録と銀行の残高証明を見た人にしか分かりません。それから、契約書の条件を要約させない。「変動金利(基準日:毎年4月1日)」が「変動金利」に要約されると、見直し日が消えます。引用は原文のまま、照合は人。AIに任せるのは、抜き出しと突合まで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 契約書の該当条項から、条件を原文のまま一覧に抜き出す
- 返済予定表の予定残高と帳簿残高を並べ、差額を出す
- 帳簿にあって一覧にない残高、一覧にあって帳簿にない借入を出す
- 金利の見直し日・返済日を、今後12か月のカレンダーに並べる
- 抜き出した条件が契約書の原文と一致しているか
- 差額の原因(返済の記録・残高証明)
- 返済予定表の更新と帳簿の修正
- 契約条件の解釈(銀行・法務)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 契約書の該当条項・返済予定表・帳簿残高
各契約書の「金額・返済・金利・担保・特約」の条(金庫から出して該当ページだけ)。返済予定表の今月末の予定残高、帳簿の借入金の残高明細。銀行名は記号、金額は千円単位。
往復1回目 ― 条件が要約されていた
①で借入Cの金利が「変動金利」とだけ書かれていた。原文は「短期プライムレートに連動する変動金利とし、毎年4月1日および10月1日に見直す」。
見直し日が消えています。一覧を見て「Cは変動」までしか分からないと、見直し日の前に銀行に確認する、という動きが取れません。禁止事項に書いていてもこうなります。
「①の引用をすべて原文どおりに書き直してください。省略した語句がないか、1件ずつ確認してください。」
原文どおりになった。5本のうち、担保ありが2本、保証ありが1本、特約(財務制限条項)ありが2本。
①の引用を、契約書の原文と1件ずつ照合します。照合が済んだら、金利の見直し日と返済日を12か月のカレンダーに並べさせ、財務のスケジュールに入れます。
往復2回目 ― 合わない残高
②で借入Bの差額が −3,000(帳簿が予定表より少ない)。③で「帳簿にあって①にない残高:短期借入金 12,500」。Bの差額に「繰上返済の可能性」と付いていた。
差額と、一覧にない残高の抽出は、これが見たかったもの。ただし「繰上返済の可能性」は推測で、予定表の更新漏れかもしれないし、帳簿の計上誤りかもしれません。
「原因の記述を削除し、差額と金額だけにしてください。」
表だけになった。
Bは返済の記録を見ると、半年前に一部繰上返済していて、予定表が更新されていませんでした。予定表を直します。12,500の短期借入金は当座貸越の残高で、契約書を金庫から出していなかったもの。契約書を出して①に足します。「一覧にない残高」は、一覧の漏れを教えてくれます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 契約書が古くて条項が読みにくい … 該当条項だけ手で打ち直して貼ります。全文は不要。
- 当座貸越のように残高が日々変わる … 一覧には「極度額」と「契約条件」を載せ、残高は月末時点で帳簿から。予定残高は「なし(随時)」と書きます。
- リース会社からの借入が、帳簿ではリース債務になっている … 一覧に「帳簿上の科目」の列を足します。科目が違っても、契約は契約。
- AIがまた要約する … 「原文のまま」を毎回入れ、照合します。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- ①の引用が、契約書の原文と1件ずつ一致しているか。
- ②の差額が0でない借入について、原因を記録で確かめ、予定表か帳簿を直したか。
- ③の「一覧にない残高」が0になったか(全借入が一覧に載ったか)。
- 金利の見直し日・返済日が、財務のスケジュールに入ったか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「借入の一覧をください」に、契約条件つきの一覧で答えられます。
- 予定表の更新漏れ・帳簿の計上漏れが、毎月の突合で見つかります。
- 金利の見直し日の前に、銀行に確認する動きが取れます。
- 一覧が、監査法人への借入の説明資料と、次の担当者への引き継ぎ資料になります。
- 帳簿の借入金の残高明細を開き、借入の本数を数える
- 返済予定表に載っている本数と比べる。違えば、それが「一覧にない残高」
- 1本選んで、契約書の金利の条を原文のまま書き写す
応用 ― 難易度を上げる場合
特約(財務制限条項)の中身は借入契約の財務制限条項を、決算前に確認するへ。返済予定をシナリオで見るなら資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行う。子会社への貸付は、貸す側として同じ型で子会社への貸付の契約・利息・残高を、子会社側の記録と突き合わせる一覧にする。