部門間の費用振替の依頼を、根拠(配賦か実費か)つきの一覧にして処理する
部門から来る「この費用は○部門に振り替えて」の依頼を、依頼元/振替先/金額/根拠(実費・按分・合意)/承認者の一覧にし、根拠のない依頼と、毎月同じ振替をAIに出させる方法です。整理と抽出はAI、振替を認めるかと根拠の確認は人、配賦のルールは経理と部門の合意。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。部門別の損益を出しているので、「この費用はうちではなく○部門の分」という振替の依頼が、月末に経理へ来ます。
- 依頼がメール・チャット・口頭で来て、一覧がない。処理したかどうかも、依頼元しか覚えていない。
- 根拠が「うちの分ではないので」だけの依頼がある。実費の内訳があるのか、按分の合意があるのか、分からない。
- 毎月同じ振替をしている。共通のライセンス費を、毎月同じ比率で3部門に振り替える。最初から配賦すればよいのに。
- 振替で部門別損益が動くと、部門長から「先月と違う」と聞かれる。振替の一覧がないので説明できない。
振替を認めるかどうかと配賦のルールは、経理と部門の合意の話。この記事でやるのは、依頼を根拠つきの一覧にし、根拠のないものと毎月同じものを出すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 振替の依頼を1件1行にする … 依頼日/依頼元部門/振替元/振替先/科目/金額/根拠の種類(実費の内訳・按分の合意・その他)/根拠の資料/承認者。
(b) 根拠の種類が「その他」または空欄のものを出す … AI。
(c) 3か月分を並べ、毎月同じ振替(同じ科目・同じ部門間・近い金額)を出す … AI。
(d) 根拠のない依頼は依頼元に根拠を求め、毎月同じ振替は配賦のルールにするかを部門と決める … 人。
(e) 振替の一覧を部門長に見せる … 部門別損益の「先月と違う」の説明資料。
振替を認めるかどうか、配賦のルールを決めること。AIに「この振替は妥当か」と聞くと、根拠の資料の有無だけで答えますが、部門間の合意や、費用の実態は経理と部門が知っていることです。認めるかは経理、配賦のルールは部門との合意。AIに任せるのは、一覧の整理と、根拠のないもの・毎月同じものの抽出まで。それから、「実費の内訳」が本当に実費かの確認も人(内訳の資料を見る)。
3. AIに任せること/人が判断すること
- メール・チャットの依頼文から、依頼の項目を一覧に整える(根拠の種類は文面から読み取れるものだけ)
- 根拠の種類が空欄・「その他」のものを出す
- 3か月分から、毎月同じ振替を出す
- 部門長に見せる「今月の振替一覧」の形に整える
- 根拠の資料の確認(実費の内訳・按分の合意)
- 振替を認めるかどうか
- 毎月同じ振替を配賦のルールにするか(部門と)
- 振替の仕訳と承認
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 依頼の文面と過去の一覧
今月の振替依頼(メール・チャットの文面。部門は記号、人名は削除)と、過去2か月の振替一覧。金額は千円単位。
往復1回目 ― AIが根拠を推測した
①で、文面が「先月の外注費、うちの分ではないので開発部へ」だけの依頼に、根拠の種類が「実費の内訳(推定)」と入っていた。「妥当と考えられます」とも。
文面には根拠がありません。「うちの分ではない」は主張で、内訳の資料があるかは依頼元に聞くこと。推定で「実費」になると、根拠を求めずに振り替えてしまいます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「推定と妥当性の記述を削除し、根拠が読み取れないものは『読み取れず』にしてください。」
今月の依頼は11件。根拠が読み取れるもの6件、「読み取れず」5件。③で毎月ある振替が2つ(ライセンス費の3部門への振替、共用サーバー費の2部門への振替)。
「読み取れず」5件の依頼元に、「実費の内訳か、按分の合意のどちらかを付けてください」と返します。根拠が来てから振り替える。来ないものは振り替えない。
往復2回目 ― 毎月同じ振替
③の2つについて、「配賦基準を設定し、月初に自動配賦することを推奨します」と付いていた。
毎月同じ振替が2つある事実は、これが見たかったもの。「配賦基準を設定」は部門との合意の話で、比率をどう決めるかは配賦基準の一覧の話です。
「推奨の記述を削除し、③は表だけにしてください。」
表だけになった。
2つの振替について、関係する部門と「毎月の振替依頼をやめて、月初の配賦にする」かを話します。合意できれば、配賦基準の一覧に載せ、振替依頼は来なくなります。合意できなければ、毎月の依頼のまま。決めるのは部門と経理。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 依頼が口頭で来る … 「振替は依頼の型(依頼元/振替先/金額/根拠)で送ってください」を各部門に伝えます。型があれば、AIの整理も要らなくなります。
- 根拠を求めると部門が怒る … 「部門別損益を正しくするため、監査法人にも説明が要る」と伝えます。根拠のない振替を認めると、逆の依頼が来たときに断れません。
- 振替で部門長の評価が変わる … だからこそ根拠と承認者を残します。一覧を部門長に毎月見せると、依頼が減ります。
- AIがまた推定や推奨を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 一覧の根拠の種類が、すべて文面か資料から読み取れたものか(推定が残っていないか)。
- 「読み取れず」の依頼を、根拠が来るまで振り替えなかったか。
- 毎月同じ振替について、配賦にするかを部門と決めたか。
- 部門長の「先月と違う」に、振替一覧で答えられたか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 振替依頼が根拠つきの一覧になり、部門長に説明できます。
- 「読み取れず」の依頼が、根拠つきで来るようになります。
- 毎月同じ振替が配賦になり、月末の依頼が減ります。
- 振替の承認者が残り、監査法人にも説明できます。
- 先月処理した振替を、思い出せるだけ数える
- それぞれ「根拠は実費か按分か」を自分で書いてみる。書けない振替に印をつける
- 印のついた振替の依頼元に、次回から根拠を付けてもらう
応用 ― 難易度を上げる場合
配賦の基準は共通費の配賦基準を、「根拠・決めた日・見直し条件」つきの一覧にする、締め後の修正は締め後に入れた修正仕訳を、理由・依頼者・影響科目つきの一覧にして翌月に活かすへ。部門長への予実の説明は予算と実績の差を、「誰が次に何を決めるか」で並べ直す。