月次決算 › 残高照合活用案

月次の科目残高を「前月比・前年同月比・過去12か月の幅」で並べて、締め前に見る候補を10科目に絞る

残高試算表の科目ごとに、前月比・前年同月比・過去12か月の最小と最大の幅を並べ、「幅の外に出た科目」「前月比の方向が去年と逆の科目」「残高がゼロになった・ゼロから動いた科目」をAIに出させて、締め前に人が見る科目を10に絞る方法です。並べ替えと候補出しはAI、候補が本当に問題かの確認は担当者、締めの判断は責任者。

AI操作難易度★★☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。月次の締めの前に、残高試算表を眺めます(10分の見直し)。眺めるのですが。

  • 科目が200近くあって、上から順に見ていると時間が尽きる。目に付いた科目だけ見て終わる。
  • 「いつもと違う」の「いつも」が、頭の中にしかない。担当者が変わると、違和感の基準も変わる。
  • 前月比だけ見ていると、季節性のある科目(賞与引当、税金)で毎回驚く。去年の同じ月を見れば普通だった。
  • 残高がゼロになった科目に気づかない。ゼロは目立たない。

科目の中身の確認は各担当の話。この記事でやるのは、残高試算表を3つの比較で並べ替えて、締め前に見る科目を10に絞ることです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 過去13か月分の残高試算表(科目/月末残高)を1つの表にする … 人(Excelで)。
(b) 科目ごとに、前月比(額・率)、前年同月比(額・率)、過去12か月の最小・最大を出す … AI(またはExcel)。
(c) ①今月の残高が過去12か月の幅の外に出た科目、②前月比の方向(増・減)が去年の同じ月と逆の科目、③残高がゼロになった・ゼロから動いた科目、を出し、影響の大きい順に10科目に絞る … AI。
(d) 10科目について、担当者が中身(明細・仕訳)を見て、問題か・説明がつくかを書く … 人。
(e) 「説明がつく」の理由を残し、来月は同じ科目で同じ理由なら候補から外す … 人。

ここはAIを使わない

候補の科目が本当に問題かを決めること、締めてよいかを決めること。「幅の外に出た」は、新しい契約や季節性で説明がつくことのほうが多い。説明がつくかは担当者が明細を見て判断し、締めは責任者。それから、AIに渡す残高は丸めるか率にします。科目名は一般的なので渡してよい前提(社内ルールで確認)。取引先名は出しません。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 13か月の残高から、前月比・前年同月比・12か月の幅を科目ごとに出す
  • 幅の外・方向が逆・ゼロの変化、の3つの候補を出し、影響の大きい順に10に絞る
  • 先月の「説明がつく」理由の一覧と照らして、同じ理由で説明できそうな候補に印を付ける
  • 締め前の確認の1枚(10科目/候補の理由/担当者の確認欄)の書式
人が判断する
  • 10科目の中身の確認(担当者が明細を見て)
  • 問題か・説明がつくかの判断と、理由の記録
  • 締めの判断(責任者)
  • 候補の絞り方(10でよいか、しきい値)の見直し

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 13か月の残高(丸め)

科目/13か月分の月末残高(万円単位に丸め)。先月の候補と「説明がつく」理由の一覧。取引先名・明細は渡しません。

用語:チャット型AIと、手元のExcelでの前処理(13か月分の並べ替え・丸め)を組み合わせます。科目名と丸めた残高だけを渡します。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。月次の締めの前に、残高試算表の科目を3つの比較で並べ替えて、見るべき科目を10に絞りたいと考えています。読み手は私と経理責任者です。 【事実/入力】 ・以下に、科目ごとの過去13か月の月末残高(万円単位)を貼ります(約190科目) ・以下に、先月の候補科目と「説明がつく」理由の一覧を貼ります ・候補が問題かどうかは私が明細を見て判断し、締めは責任者が決めます 【依頼】 ①科目ごとに、前月比(額・率)、前年同月比(額・率)、過去12か月の最小・最大を出してください ②今月の残高が過去12か月の最小〜最大の幅の外に出た科目、前月比の増減の方向が去年の同じ月と逆の科目、残高がゼロになった・ゼロから動いた科目を出してください ③②を、前月比の額の大きい順に並べ、上位10科目に絞ってください。それぞれに候補になった理由(3つのどれか)を付けてください ④③のうち、先月の「説明がつく」理由と同じ理由で説明できそうな科目に印を付けてください 【出力の型】 ①:表:科目/今月/前月比額/前月比率/前年同月比額/前年同月比率/12か月最小/12か月最大 ②:表:科目/候補の理由 ③:表:順位/科目/候補の理由/前月比額/担当者の確認(空欄) ④:③に印の列を追加 【禁止事項】 ・残高の変動の原因を推測して書かないでください ・問題がある・ないを判定しないでください ・貼っていない科目や月を足さないでください

往復1回目 ― AIが「原因」を書いた

AIの初稿

③の上位に「前受金」(12か月の幅の外、前月比で大きく増加)。理由の欄に「大型案件の前受けによる増加と考えられます」と書かれていた。

ここが問題

前受金が候補に上がったのは、これが見たかったもの。「大型案件の前受け」は原因の推測で、実際は入金の消込の誤りで前受金に入っていたものでした。推測が書かれると、担当者が「そうか」と流します。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「原因の推測を削除し、候補の理由は『幅の外』『方向が逆』『ゼロの変化』の3つのどれかだけにしてください。」

修正版

②は候補が27科目。③は上位10科目(前受金・未払金・仮払金・ソフトウェア仮勘定・預り金・賞与引当金・未収入金・前払費用・売掛金・その他流動負債)。④で賞与引当金と前払費用に「先月と同じ理由(季節性)」の印。

人が最後にやること

10科目の明細を見ます。前受金は消込の誤りで、修正。仮払金は精算漏れの一覧で対応中。残りは説明がつき、理由を記録。責任者が締めを決めます。

往復2回目 ― 「ゼロになった科目」

AIの初稿

②で「ゼロになった科目」が3つ出たが、③の上位10には前月比の額が小さいため入っていなかった。

ここが問題

額の大きい順に絞ると、ゼロになった科目は小さくても意味がある(契約が終わった、処理が漏れた)のに落ちます。絞り方の問題で、AIの間違いではありません。

追加で出した指示

「③を、『ゼロの変化』の科目は額にかかわらず必ず含め、残りを額の大きい順で埋めて10にしてください。」

修正版

ゼロの変化3科目+額の大きい7科目で10科目。

人が最後にやること

ゼロになった3科目のうち、1つは「未払配当金」で支払済み(説明がつく)、1つは「立替金」で精算済み、1つは「保証金」で、返還されたはずがまだ入金されていなかった(入金の記録漏れ)。額は小さいが、見てよかった科目。絞り方をこの形に固定します。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 13か月分の残高が揃わない(システム変更で科目が変わった) … 揃う期間だけで幅を出します。科目の対応表を作るのはその後。
  • 候補が毎月同じ科目ばかり … 「説明がつく」理由が同じなら候補から外す仕組み(④)で減ります。それでも残るなら、その科目は本当に毎月動く科目。
  • 10科目では足りない気がする … 増やすより、しきい値を見直します。10で見きれない月は、締めの前日が遅すぎる。
  • AIがまた原因を書く … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 10科目すべてに、担当者の確認(問題・説明がつく)と理由があるか。
  2. 締め後に見つかった修正が、候補に入っていた科目か。入っていなければ、絞り方を見直す材料。
  3. 「説明がつく」理由が翌月に引き継がれ、同じ理由の候補が減っているか。
  4. 候補の表に、AIの原因の推測が混ざっていないか。

7. 注意点

残高は丸め、取引先名と明細はAIに渡しません。社内ルールで確認してください。
候補は候補です。問題かどうかは担当者が明細を見て決め、締めは責任者。AIの原因の推測は消します。
額の小さい科目を落としません。ゼロになった科目は額にかかわらず見ます。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 締め前に見る科目が、「目に付いた科目」から「3つの比較で絞った10科目」になります。
  • 「いつもと違う」の基準が、頭の中から表に移ります。担当者が変わっても同じ。
  • 季節性の科目で毎回驚くことがなくなります。
  • ゼロになった科目の見落としが減ります。
明日の仕事で試すこと
  • 今月の残高試算表と去年の同じ月の残高試算表を横に並べる
  • 前年同月比の率が一番大きい科目を1つ見つける
  • その理由を言えるか試す。言えなければ、それが締め前に見る最初の科目

応用 ― 難易度を上げる場合

締め前の見直しは月次を締める前に、自分で10分だけ見直したいとき、変動分析のコメントは月次決算の変動分析コメントを下書きするへ。仮払金の精算は従業員の立替金・仮払の精算漏れを、月次で「発生日・相手・用途・経過日数」の一覧にして本人と上司に知らせる。