経理部門の改善 › 業務改善・システム導入活用案

請求から入金までの流れを、担当・システム・待ち時間で1枚に描く

「請求書を出してから入金を消し込むまで」を、工程/担当/使うシステム/入力と出力/実績の待ち時間/例外の1枚にする方法です。担当者の聞き取りを表と図に整えるのはAI、待ち時間は実績から人が入れ、「あるべき流れ」はAIに描かせません。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具チャット型AI

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。請求から入金までに関わるのは、営業・案件担当・経理・顧客の4者。月末の売掛金が増えていて、部長から「どこで遅れているのか」と聞かれました。

  • 流れを1枚で説明できる人がいない。営業は「検収をもらって経理に回している」、経理は「請求書を出して消し込んでいる」。その間に何があるかは、誰も全体を見ていない。
  • 「検収から請求書発行まで」に平均9日かかっている、らしい。数えたことはない。
  • 案件によって流れが違う。顧客のシステムに請求書を登録する案件、郵送の案件、月次一括の案件。例外が多い。
  • システム導入の話が出ているが、「今の流れ」が書けていないので、何を変えるかも言えない。

やりたいのは、今の流れを、担当・システム・待ち時間つきで1枚に描くこと。あるべき流れではなく、今の流れ。変える議論は、それができてから。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 工程を1行1工程で書き出す … 検収書の受領/請求データの作成/請求書の承認/発行・送付/顧客側の登録/入金/消込。
(b) 各工程に「担当」「使うシステム」「入力(前の工程から受け取るもの)」「出力(次の工程に渡すもの)」を書く … 担当者に聞く。
(c) 工程間の「待ち時間」を、先月の実績(日付)から入れる … 人。案件10件でよい。
(d) 例外(通常と違う流れ)を、別の行にする … 顧客システム登録、郵送、月次一括。
(e) 表を図(箱と矢印)にする … AI。

ここはAIを使わない

「あるべき流れ」を描くこと。AIに「請求から入金までの業務フローを描いて」と頼むと、きれいな図が出てきますが、それは一般的な流れで、貴社の「顧客システムに登録しないと請求が受理されない」のような実態が入っていません。描くのは今の流れ。工程と担当は、その工程をやっている人が言ったとおりに。それから、待ち時間をAIに作らせない。「通常2営業日」のような数字は、実績の日付から人が数えます。流れを変える決定も、図ができてから人が。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 担当者の聞き取りメモ(文章)を、工程/担当/システム/入力/出力の表に整える
  • 人が入れた待ち時間を含めて、箱と矢印の図(テキスト)にする
  • 例外の流れを、通常の流れとの分岐点で示す
  • 「入力と出力がつながっていない工程」(前の工程の出力を、次の工程が使っていない)を指摘する
人が判断する
  • 工程と担当(聞き取り)
  • 待ち時間(実績の日付から)
  • 例外をどこまで図に載せるか
  • 流れを変えるかどうか、システムで何を変えるか

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 4者に聞き、10件の日付を拾う

営業・案件担当・経理に、「自分の工程で、何を受け取って、何をして、何を誰に渡すか」を聞いてメモにします(文章でよい)。あわせて先月の案件10件について、検収日/請求データ作成日/承認日/発行日/入金日を拾います。顧客名・案件名は記号に。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。渡すのは聞き取りメモと日付だけで、金額は要りません。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。当社の「請求から入金まで」の今の流れを、担当・システム・待ち時間つきの1枚にして、部長と各部門に見せたいと考えています。読み手は経理・営業・案件担当・部長です。 【事実/入力】 ・以下に、営業・案件担当・経理からの聞き取りメモを貼ります(文章のまま) ・以下に、先月の案件10件の各工程の日付(検収日/請求データ作成日/承認日/発行日/入金日)を貼ります ・あるべき流れではなく、今の流れを描きます 【依頼】 ①聞き取りメモを、工程/担当/使うシステム/入力/出力の表にしてください。メモにない工程は足さないでください ②10件の日付から、工程間の日数を案件ごとに計算し、中央値を出してください ③①②をもとに、箱と矢印のテキスト図にしてください。例外の流れ(顧客システム登録・郵送・月次一括)は分岐として示してください 【出力の型】 ①表:工程/担当/システム/入力/出力 ②表:工程間/案件ごとの日数/中央値 ③テキスト図(箱に工程と担当、矢印に中央値の日数) 【禁止事項】 ・メモにない工程(承認・確認など)を「一般的にはある」として足さないでください ・日付から計算できない日数を「通常○日」のように作らないでください ・流れの改善案や、システム導入の提案を書かないでください

往復1回目 ― AIが「あるべき工程」を足した

AIの初稿

①の表に、聞き取りメモにない「請求内容の営業上長による承認」「与信限度額の確認」の2工程が入っていた。

ここが問題

この会社には、その工程がありません。AIが一般的な流れから補いました。図にこれが載ると、部長が「承認があるのに遅れている」と誤解します。逆に、承認が無いこと自体が、この会社の流れの特徴かもしれません。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「メモにない工程をすべて削除してください。削除した工程を別に列挙してください。」

修正版

7工程になった。削除した2工程が別に並んだ。

人が最後にやること

削除された2工程を、営業に「本当に無いか」確認します。この架空例では、与信の確認は契約時にやっていて、請求の流れには無い、が正しかった。「無い」と確認できたことが、この図の信頼性になります。

往復2回目 ― 待ち時間が「作られて」いた

AIの初稿

②で「検収日→請求データ作成日:中央値 6日」は日付から計算されていた。ただし「顧客側の登録→入金」は日付がない(顧客の登録日を持っていない)のに「通常15〜30日」と書かれていた。

ここが問題

持っていない日付から、日数は出せません。AIが一般的な支払サイトから作りました。図に「15〜30日」と載ると、それが実測に見えます。

追加で出した指示

「日付のない区間は『(実績なし)』と書いてください。数字を作らないでください。」

修正版

「顧客側の登録→入金:(実績なし)」になった。計算できた区間は、検収→請求データ作成 6日、作成→承認 2日、承認→発行 1日、発行→入金 34日。

人が最後にやること

図を部長に見せます。「検収から請求データ作成までの6日」が、経理の中で最も長い区間でした。検収書が営業の手元に置かれている日数です。顧客側の日数(34日)は顧客の支払サイトなので、経理では縮められません。縮められる区間と縮められない区間が、図で分かれました。どう縮めるかは、営業と経理で決めます。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 聞き取りの内容が人によって違う … 違いをそのまま表に残します(「営業Aは○○、営業Bは△△」)。違いがあること自体が、流れが決まっていない証拠です。
  • 日付が拾えない工程がある … 「(実績なし)」のまま図にします。来月から、その工程の日付を記録し始めます。
  • 例外が多すぎて図が読めない … 通常の流れの図と、例外ごとの図に分けます。1枚に収めようとしない。
  • AIがまた工程や日数を作る … 削除。毎回。「メモと日付にあるものだけ」を最初に書いても出てきます。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 図の工程が、すべて担当者の聞き取りにあるものか。足された工程が残っていないか。
  2. 図の日数が、すべて実績の日付から計算したものか。「通常」「一般に」が残っていないか。
  3. 営業・案件担当・経理の3者が、図を見て「自分の工程はこのとおり」と言えるか。
  4. 部長の「どこで遅れているか」に、区間と日数で答えられたか。

7. 注意点

聞き取りメモと日付には、顧客名・案件名が入ります。記号にします。金額は要りません。社内ルールで確認してください。
「あるべき流れ」はAIに描かせません。今の流れを、やっている人の言葉で。
図は「変える」ためのものではなく「見る」ためのもの。変えるかどうかは、図ができてから人が決めます。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 「どこで遅れているか」が、区間と日数で答えられます。
  • 縮められる区間(社内)と縮められない区間(顧客の支払サイト)が分かれます。
  • システム導入の話が、「今の流れのこの工程を変える」という具体的な話になります。
  • 図が、新しく入った営業・経理への説明資料になります。
明日の仕事で試すこと
  • 先月の案件を3件選び、検収日・発行日・入金日を拾う
  • 「検収から発行まで」の日数を3件分、自分で数える
  • その日数のうち、経理の手元にあった日数と、営業の手元にあった日数を分けてみる

応用 ― 難易度を上げる場合

月次の全作業を棚卸しするなら月次の作業を「誰が・いつ・何を見て・何を出すか」で棚卸しする、締めの詰まりを見るなら月次のどこが詰まっているかを見つけるへ。図ができて、システムで変えるところまで視野に入ったら現行業務をAIに説明して、改善案とRFP項目まで作る。この活用例の図は、あちらの「現行業務の書き出し」がすでに終わった状態です。