紙で届いた請求書・領収書の「受け取り→スキャン→保存→原本の扱い」を、担当・期限つきの1枚に描く
紙で届く請求書・領収書・契約書について、「誰が受け取り、誰がいつまでにスキャンし、どこに保存し、原本をどうするか」を書類の種類ごとに1枚の流れ図にし、担当や期限が決まっていない箇所と、書類の種類によって流れが違う箇所をAIに出させる方法です。流れ図と抜けの指摘はAI、担当と期限の確定は経理責任者、保存の要件は税理士と国税庁の公表資料で確認。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。電子取引のデータは棚卸しで所在が分かるようになりました。残っているのは、紙で届くものです。
- 紙の請求書が、総務・営業・経理のどこに届くか、相手によって違う。届いた人がスキャンする人とは限らない。
- 「スキャンした?原本は?」が月末に毎回起きる。スキャンしたが原本を捨ててよいのか、保管するのか、人によって答えが違う。
- 領収書は経費精算の画面に添付されるが、その画像が「保存」なのか、別に保存が要るのかが曖昧。
- 契約書だけは法務が別のフォルダに保管していて、経理はその流れを知らない。
要件の話は税理士と原文で。この記事でやるのは、自社の紙の書類の流れを1枚に描いて、「決まっていない箇所」を見えるようにすることです。決まっていない箇所は、要件を確かめる前に、まず決める相手が要ります。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 紙で届く書類の種類を書き出す … 請求書/領収書(経費精算)/領収書(経理直接)/契約書/納品書・検収書/その他。
(b) 種類ごとに、今の流れを担当者に聞いて書く … 受け取る人/スキャンする人と期限/保存先(フォルダ・システム)/原本の扱い(保管場所・期間・廃棄の可否は税理士に確認)/確認する人。
(c) 1枚の流れ図にし、①担当や期限が空欄の箇所、②種類によって流れが違う箇所、③同じ書類が2か所に保存される箇所、を出す … AI。
(d) 空欄を埋め、違いを揃えるか残すかを決める … 経理責任者。
(e) 原本の扱いと保存の方法が要件を満たすかを、税理士に流れ図を見せて確認する … 責任者と税理士。
保存の要件を満たしているかどうかの判断。流れ図は「今こうしている」を描くだけで、それでよいかは税理士と国税庁の公表資料の原文で確かめます。AIに「原本を捨ててよいか」を聞きません。それから、書類の中身(金額・相手先)はAIに渡しません。渡すのは書類の種類と担当の職位と流れだけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 聞き取った流れを、種類ごとに同じ段階(受取→スキャン→保存→原本→確認)で並べた表と流れ図にする
- 担当・期限が空欄の箇所、種類で流れが違う箇所、二重保存の箇所を出す
- 税理士に見せるための「流れ図+確認したいこと(空欄)」の書式
- 半年ごとに流れを確かめる手順
- 流れの聞き取り(各担当者)
- 空欄の担当・期限の確定と、違いを揃えるかどうか(経理責任者)
- 保存の要件の確認(税理士と原文で)
- 原本の扱いの決定(税理士の確認後、責任者)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 種類ごとの流れの聞き取り
6種類の書類について、受取/スキャン/保存/原本/確認の5段階を、担当者に聞いて箇条書きにします。担当は職位。書類の中身は渡しません。
往復1回目 ― AIが「未定」を埋めた
①で、領収書(経理に直接)の「原本の扱い」が聞き取りでは分からなかったのに、「スキャン後、一定期間保管の上で廃棄」と埋まっていた。
「未定」と書いてほしかった箇所が、一般的な実務で埋まっています。しかも「廃棄」は要件に関わる話で、税理士に確かめる前に流れ図に書かれると、それが自社の決まりのように見えます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「聞き取りにない内容を削除し、その箇所は『未定』に戻してください。原本の扱いは、聞き取りにある表現だけを使ってください。」
①は6×5の表。②で「未定」が9か所(原本の扱いが4種類で未定、スキャンの期限が3種類で未定、など)。③はスキャンの担当が3通り(総務・経理・受け取った人)。④は領収書(経費精算経由)が画面と共有フォルダの2か所。
責任者が「未定」9か所のうち、担当と期限の5か所を決めます(スキャンは受け取った部門が3営業日以内、など)。原本の扱いの4か所は、税理士に流れ図を見せて確認してから決めるので、「税理士確認中」と書きます。
往復2回目 ― 「揃えるべき」
③のスキャンの担当が3通りある点について、「担当を経理に一本化することで、漏れを防げます」と付いていた。
3通りの事実は見たかったもの。「一本化」は運用の判断で、営業に届く請求書を経理に回すと、かえって滞留するかもしれません。
「運用の提案を削除し、③は違いの表だけにしてください。」
表だけになった。
責任者は、スキャンは「受け取った部門」のまま、保存先だけ1か所に揃えると決めました。理由は流れ図の下に。税理士には、流れ図と「原本の扱い4か所」「保存先の1か所」を見せて、要件を満たすかを確認してもらいます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 聞き取りで「人による」と言われる … それが「未定」。人によるのは決まっていないということ。
- 税理士の確認で流れを変える必要が出た … 流れ図を直し、変えた日と理由を書きます。流れ図は要件の確認の道具で、確認の結果で変わるもの。
- 書類の種類が6つに収まらない … 「その他」を分けます。分けた種類にも5段階を聞きます。
- AIがまた未定を埋める、運用を提案する … 戻す・削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 6種類×5段階に、「未定」が残っていないか。残っていれば「税理士確認中」など理由があるか。
- 原本の扱いと保存の方法について、税理士の確認の記録(日付・内容)があるか。
- 「スキャンした?原本は?」が、流れ図を見て答えられるか。
- 流れ図に、AIが一般的な実務で埋めた箇所や運用の提案が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「スキャンした?原本は?」に、流れ図の1行で答えられます。
- 決まっていなかった担当と期限が決まり、月末の滞留が減ります。
- 税理士との要件の確認が、「今こうしている」の図を前提に進みます。
- 流れ図が、新任者への説明と、半年ごとの見直しの元になります。
- 今日届いた紙の請求書を1枚選び、「誰が受け取り、誰がスキャンし、どこに保存し、原本はどうなるか」を書く
- 書けない段階が、流れ図の最初の「未定」
- その「未定」を誰が決めるべきかを、責任者に聞く
応用 ― 難易度を上げる場合
電子取引のデータの所在は電子取引のデータが「実際にどこに、どう残っているか」を棚卸しする、業務の流れの描き方は請求から入金までの流れを、担当・システム・待ち時間で1枚に描くへ。税務調査の資料の所在は税務調査の資料依頼リストを、所在・担当・期限の表にする。