税務 › 税務調査対応活用案

税務調査の資料依頼リストを、所在・担当・期限の表にする

税務調査の資料依頼リストを「所在・担当・期限・状況」の管理表にし、集める作業と税理士と相談する作業を分ける方法です。表化と他部署への依頼文はAI、所在・担当・仕分けは人、回答内容と依頼にない資料を足すかどうかは税理士と決めます。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★★☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。税務調査の事前連絡が来ました。税理士と日程を調整し、初日に向けて「用意しておく資料」のリストが届きました。20項目あります。

  • 「総勘定元帳」「売上の請求書控え」「契約書一式」「役員報酬の決定に関する議事録」……。どれがどこにあるか、すぐには言えない。3期分。
  • 経理だけでは揃わない。議事録は総務、契約書は法務、外注先の資料は事業部。
  • 誰が何をいつまでに集めるかが決まらないまま、初日が近づく。
  • 「この資料を出すとどう見られるか」を考え始めて、手が止まる。それは税理士と相談する話であって、資料を集める話とは別。

やりたいのは、依頼リストを「所在・担当・期限・状況」の表にして、集める作業と、税理士と相談する作業を分けることです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 依頼リストを1項目1行にする … 項目名/対象期間/原文のまま。
(b) 各項目に「所在(どのシステム・フォルダ・部署)」「担当」「期限」を書く … 所在と担当は人。決算資料の地図があれば転記できる。
(c) 「経理だけで揃うもの」「他部署に頼むもの」「税理士と相談してから出すもの」に仕分ける … 仕分けは人。
(d) 進捗を毎日更新する。

AIに任せるのは、(a)の表化と、(b)で依頼の文言から「どの種類の資料か」を整理すること、(c)の他部署への依頼文の下書きです。

ここはAIを使わない

「この資料を出すとどう見られるか」「どう説明するか」。それは調査対応の方針で、税理士と協議して決めることです。AIに「この取引は指摘されますか」と聞いても、法令とその年の事実に照らした答えは得られません。AIに任せるのは、依頼リストを表にして、集める作業を回すところまで。それから、依頼リストにない資料を「念のため」と足すかどうかも、税理士と相談して決めること。AIに「他に用意すべき資料は」と聞かない。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 依頼リストを「項目/対象期間/原文」の表にする
  • 各項目を「資料の種類」(帳簿・証憑・契約・議事録・その他)で整理する
  • 他部署への依頼文の下書き(項目・期限・渡し方)
  • 毎日の進捗一覧(未着手/収集中/揃った/税理士確認中)
人が判断する
  • 所在・担当・期限
  • 「税理士と相談してから出す」に仕分ける項目
  • 回答内容・説明の仕方(税理士と)
  • 依頼リストにない資料を用意するかどうか(税理士と)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 依頼リストの原文と所在一覧

依頼リストの原文(社名を記号に)。決算資料の地図があれば、それも。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。貼るのは項目名と期間だけにし、社名・取引先名は記号にします。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。税務調査に向けて受け取った資料の依頼リストを、集める作業の管理表にしたいと考えています。読み手は私・上司・税理士です。 【事実/入力】 ・以下に、資料の依頼リストの原文(20項目)を貼ります ・以下に、当社の決算資料の所在一覧(資料名/保存場所/担当)を貼ります ・回答の内容や説明の方針は、税理士と別途相談します 【依頼】 ①依頼リストを、1項目1行の表にしてください(原文のまま) ②各項目について、資料の種類(帳簿・証憑・契約・議事録・その他)を付けてください ③所在一覧に同じ名前の資料があれば、保存場所と担当を転記してください。なければ空欄にしてください 【出力の型】 表:No./依頼の原文/対象期間/資料の種類/保存場所/担当/期限(空欄)/状況(空欄) 【禁止事項】 ・依頼リストにない資料を「用意すべき」として足さないでください ・各項目について、調査で指摘されそうか、どう説明すべきかを書かないでください ・所在一覧にない保存場所や担当を推測して書かないでください

往復1回目 ― AIが「念のため」の資料を足した

AIの初稿

表の下に「補足:あわせて、次の資料も準備しておくことを推奨します」として5項目が並んでいた。

ここが問題

依頼されていない資料を用意するかどうかは、税理士と相談して決めることです。AIの「推奨」には、貴社の事情も、調査の論点も反映されていません。この5項目が管理表に混ざると、集める側は依頼と区別できません。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「補足を削除してください。依頼リストの20項目だけにしてください。」

修正版

20行だけになった。

人が最後にやること

20行の「保存場所/担当」の空欄を埋めます。この架空例では、20項目中12項目は所在一覧から転記され、残り8項目は経理以外の部署(議事録=総務、契約書=法務、外注の検収記録=事業部)でした。

往復2回目 ― 他部署への依頼文

続けて、次のように頼みます。「表の『担当』が総務・法務・事業部になっている項目について、それぞれの部署宛ての依頼文を下書きしてください。項目・対象期間・期限・渡し方(PDFで共有フォルダに)を含め、理由は『税務調査の資料として』とだけ書いてください。」

AIの初稿

依頼文はできた。ただし法務宛ての文に「契約書のうち、関連当事者との取引に関するものは特に重要です」と付いていた。

ここが問題

「特に重要」は、調査の論点についてのAIの推測です。これが法務に伝わると、法務が「何かあるのか」と身構えます。依頼文は、項目と期限だけ。

追加で出した指示

「重要度や論点に関する記述を削除してください。項目・期間・期限・渡し方だけにしてください。」

修正版

そのとおりになった。

人が最後にやること

依頼文を送る前に、税理士に「この依頼の出し方でよいか」を一度見せます。社内への伝え方も、調査対応の一部です。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 所在一覧がない … 決算資料の地図を先に作るのが理想ですが、時間がないなら、この表の「保存場所/担当」を埋めること自体が地図の第1版になります。
  • 3期分のうち、古い期の資料が見つからない … 見つからないことを、隠さず税理士に伝えます。「探し中」のまま初日を迎えない。
  • 他部署の提出が遅い … 提出が遅い相手に、角を立てずに出してもらうときの型で。期限の根拠が「税務調査の初日」なので、催促の理由は明確です。
  • 依頼リストが初日以降に追加される … 同じ表に行を足します。「追加分」と分かるように日付を書きます。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 表に、依頼リストにない資料が混ざっていないか。
  2. 20項目すべてに、保存場所・担当・期限が入ったか。
  3. 「税理士と相談してから出す」に仕分けた項目を、税理士と確認したか。
  4. 初日に「揃っていない」項目が0か、あれば税理士に事前に伝えたか。

7. 注意点

依頼リストは、調査に関する文書です。貼るのは項目名と期間だけにし、社名・取引先名は記号に。社内ルールと税理士に確認してください。
回答内容・説明はAIに聞きません。税理士と。
依頼されていない資料を足しません。足すかどうかは税理士と。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 依頼リストが届いた当日に、「誰が・何を・いつまでに」の表ができます。
  • 集める作業と、税理士と相談する作業が分かれ、手が止まりません。
  • 他部署への依頼が、論点を含まない事務的な文で出せます。
  • 表がそのまま「次の調査のための所在一覧」になります。
明日の仕事で試すこと
  • 前回の税務調査(または監査法人の往査)で頼まれた資料を5つ思い出す
  • それぞれ「今、どこにあるか」「誰に聞けば出るか」を書いてみる
  • 書けないものが、次の調査で最初に困るもの

応用 ― 難易度を上げる場合

所在一覧は初めて見る決算資料の束が、どうつながっているかわからないとき、申告書の根拠資料は去年の別表を手がかりに、今年の加算・減算項目の元データを集めると共通です。監査法人からの資料依頼は監査法人の資料依頼リストを、前期の提出実績と突き合わせて仕分けるへ。同じ表の型で、依頼元だけが違います。