前払費用の償却予定表を契約ごとに作り、「契約は終わったのに償却が続いている」「更新したのに予定表にない」を出す
年払いの保守料・保険料・ライセンス料などの前払費用を、契約ごとに「契約期間/支払日/総額の規模/月々の償却/償却の終わり」の予定表にし、契約の一覧(更新・解約の記録)と突き合わせて「契約が終わったのに償却が残っている」「更新して支払ったのに予定表に新しい行がない」「予定表の残高の合計と帳簿の残高が合わない」をAIに出させる方法です。整理と突合はAI、契約の確認は担当者、償却の計算方法と処理は経理の判断。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。年払いの保守料・保険料・ソフトウェアのライセンス料を前払費用にして、毎月償却しています。償却のExcelは前任者から引き継いだもの(触ってよい場所は確かめました)。それでも。
- 前払費用の残高が、何の契約の分か、Excelを遡らないと分からない。監査法人に聞かれて、30分探す。
- 契約を解約したのに、償却が続いている。解約の連絡が経理に来ていなかった。
- 契約を更新して支払ったのに、償却のExcelに新しい行がない。支払のときに前払費用にしたが、予定表に足すのを忘れた。
- Excelの残高の合計と、帳簿の前払費用の残高が合わない。差が何かを、毎月「たぶんこれ」で流している。
償却の計算方法は経理の判断。この記事でやるのは、契約ごとの予定表を作って、契約の一覧と帳簿の残高の両方と突き合わせることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 予定表の型を決める … 契約記号/内容の区分(保守・保険・ライセンス・その他)/契約期間(開始・終了)/支払日/総額の規模/月々の償却額(規模)/償却の終わりの月/今月末の残高(規模)/更新・解約の状況。
(b) 償却のExcelから予定表を作り、契約の一覧(契約記号/期間/更新・解約の記録)と、帳簿の前払費用の残高を集める … 人。
(c) 契約記号で突き合わせ、①契約の終了日や解約日を過ぎているのに償却が残っている行、②契約の一覧で更新・新規なのに予定表にない契約、③予定表の残高の合計と帳簿の残高の差、④償却の終わりの月が契約の終了月と違う行、を出す … AI。
(d) ①②④の理由を確かめ、予定表と帳簿を直す。③の差を特定する … 経理。
(e) 支払のときに予定表に1行足す運用にする … 経理。
償却の計算方法(月割りの起点、端数の扱い)と、帳簿の修正。予定表は突合の道具で、どう償却するかは経理が決めます。AIに「この契約はどう償却すべきか」を聞きません。それから、契約の相手先名と実際の金額はAIに渡しません。契約記号と規模と日付だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 償却のExcelを予定表の型に並べ直す(金額は規模で)
- 契約の一覧と突き合わせ、終了後も償却が残る行・更新なのに予定表にない契約・終わりの月のずれを出す
- 予定表の残高の合計と帳簿の残高の差の額(規模)と、差に近い行の候補
- 月次の突合の手順と記録の書式
- 契約の状況の確認(担当者が契約書・解約通知を見て)
- 償却の計算方法と帳簿の修正(経理)
- 差の特定と処理(経理)
- 支払時に予定表に足す運用(責任者)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 記号・日付・規模
予定表(契約記号/区分/期間/支払日/総額の規模/月々の償却の規模/終わりの月/今月末残高の規模)、契約の一覧(契約記号/期間/更新・解約の記録と日付)、帳簿の残高(規模)。相手先名と実際の金額は渡しません。
往復1回目 ― AIが「処理」を書いた
①で、解約日を過ぎているのに残高が残っている行が3行。表の下に「解約後の残高は、解約月に一括で費用処理するのが適切です」と付いていた。
3行は見たかったもの。「一括で費用処理」は会計処理の判断で、解約の条件(返金の有無)によって扱いが変わり、経理が決めることです。禁止事項に書いていてもこうなります。
「処理に関する記述を削除し、①は表だけにしてください。」
①は3行。②は更新の記録があるのに予定表に新しい行がない契約が2つ。③は差が1行分の規模で、候補は1行(保険料の行)。④は終わりの月が違う行が4行。
①の3行は、担当者が解約通知を確かめ、2件は返金あり(未収に振り替え)、1件は返金なし。処理は経理が決めます。②の2契約は、支払のときに予定表に足し忘れていたので足します。
往復2回目 ― 帳簿との差
③の候補が「保険料の行」1つ。AIは「この行が二重に計上されている可能性が高い」と付けていた。
候補の行はよい。「二重計上」は推測で、実際は②で見つかった足し忘れの契約の支払が帳簿に入っていて、予定表にないだけでした。
「推測を削除し、③は差の規模と候補の行だけにしてください。」
差の規模と候補だけになった。
②の2契約を予定表に足すと、③の差が消えました。差の原因は足し忘れ。支払のときに予定表に1行足す運用を、支払の手順に組み込みます。④の4行は、契約期間の入力ミスが3行、契約の途中変更が1行。直します。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 契約の一覧がない(契約書が各部門にある) … 前払費用にした支払から契約記号を起こし、各部門に期間と更新・解約を聞きます。契約の一覧はその後に育てます。
- 償却のExcelの計算式が壊れている … 予定表を型で作り直します。計算方法は経理が決め、式は人が確かめます。
- 差が1行では説明できない … 2行の組み合わせまでAIに候補を出させ、それでも合わなければ、帳簿の仕訳を人が遡ります。
- AIがまた処理や推測を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 予定表の今月末残高の合計が、帳簿の前払費用の残高と一致しているか。
- 解約・終了した契約の行に、残高が残っていないか。残っていれば処理の記録があるか。
- 今年の更新・新規の契約すべてに、予定表の新しい行があるか。
- 予定表に、AIの処理や推測が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 前払費用の残高が、契約ごとの予定表で「何の分」と答えられます。
- 解約後の償却の続きが、月次で見つかります。
- 予定表と帳簿の差が、毎月ゼロか、理由つきになります。
- 支払のときに予定表に足す運用で、足し忘れがなくなります。
- 前払費用の残高の一番大きい行を1つ選び、契約の終了日を言えるか試す
- 言えなければ、契約書を探して「契約記号/期間/終わりの月」の1行を書く
- それが予定表の最初の行
応用 ― 難易度を上げる場合
前受金の管理は前受金の残高を、契約ごとの「いつ売上になるか」の一覧にして毎月消し込む、締め後の請求書は締め後に届いた請求書を集計して、翌月の未払計上の漏れ候補にするへ。前任者のExcelは前任者のExcelを渡されたが、どこを触っていいのかわからないとき。