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一人しかできない作業を見つけて、1つだけ手放す

棚卸し表に「できる人」の列を足し、1人しかできない作業のうち「その人が休んだら締めが止まる」ものから、今月1つだけ手放す方法です。抜き出しと手順書の骨組みはAI、優先順位と「やめる」の判断は人が行います。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★★☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

サンライズソリューションズ株式会社の経理3名。連作①で月次の棚卸し表ができました(約70行)。表を眺めていて、部長が言いました。「Bさんが休んだら、締まらないんじゃないか」。

  • Bさんしかできない作業が、たぶん多い。ただ、何個あるかは数えていない。
  • Bさん本人は「大丈夫です」と言う。本人は手順を知っているので、難しさを感じていない。
  • 手順書を全部書け、と言われても、Bさんにその時間はない。月次の合間に70行分の手順書は書けない。
  • 過去に、Cさんの担当を引き継ごうとして失敗した。一度に全部引き継ごうとして、どれも中途半端になった。

属人化をなくす、という話はよく聞きます。ただ実務では、全部を一度になくすことはできません。1つずつ、確実に手放します。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

棚卸し表に列を1つ足します。

できる人 … その作業を、いま実際にできる人。「教えればできる」は含めない。

これで、「できる人」が1人だけの行が見えます。そのうえで、優先順位をつけます。基準は1つだけ。

その人が休んだら、締めが止まるか。

止まる作業から、1つだけ手放します。手放し方は3つ。

手順書を書く(その人が)/ペアでやる(次の月次で2人でやる)/やめる(実はやらなくてよかった作業)

ここはAIを使わない

優先順位を決めること。AIに「属人化している作業を挙げて」と言うと、「できる人」が1人の行を全部挙げて、「すべて標準化を推奨します」と言います。それでは、去年の失敗(一度に全部)の繰り返しです。どれを先に手放すかは、「休んだら締めが止まるか」を知っている人が決めます。それから、「やめる」の判断もAIに任せません。やめてよいかは、その作業の出力を誰が使っているかで決まり、AIは知りません。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 棚卸し表に「できる人」列を足した状態で、1人だけの行を抜き出す
  • 抜き出した行を、「いつ」の列で並べ替える(締め日前に集中していないか)
  • 1人だけの行について、「何を見て/何を出すか」から、手順書に書くべき項目の骨組みを作る
  • ペアでやるときの「見る側のチェックリスト」の下書き
人が判断する
  • 「できる人」の記入(本人と、周りの両方で)
  • 「休んだら締めが止まるか」の判断
  • 今月手放す1つを選ぶ
  • 手放し方(手順書・ペア・やめる)の選択

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 「できる人」列を埋める

3人で一緒に埋めます。本人が「Cさんもできる」と言っても、Cさんが「できない」と言えば「できない」。できる人の判定は、できる側ではなく、できない側の申告を優先します。

作業誰がいつ何を見て何を出すかできる人
売上仕訳A締め日前営業の検収一覧売上仕訳A・C
前受金の按分B締め日前契約一覧、前月の按分Excel、当月の新規契約振替仕訳B
検収一覧の妥当性確認B締め日前営業の検収一覧確認済み一覧B
銀行明細と帳簿の突合A月初銀行の明細、帳簿差異一覧A・B・C

棚卸し表の例(架空。抜粋)

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。渡すのは棚卸し表だけで、人名はA・B・Cにします。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。経理3名の月次作業のうち、一人しかできない作業を見つけて、優先順位をつけて減らしていきたいと考えています。読み手は経理3名と部長です。 【事実/入力】 ・以下に、月次作業の棚卸し表(作業/誰が/いつ/何を見て/何を出すか/できる人)を貼ります(約70行) ・「できる人」は3名で確認済みの実態です 【依頼】 「できる人」が1人だけの作業を抜き出し、「いつ」の順に並べてください。あわせて、抜き出した作業のうち「締め日前」のものを数えてください。 【出力の型】 表:作業/できる人/いつ/何を見て/何を出すか その下に、「締め日前」の件数と、人ごとの件数 【禁止事項】 ・優先順位や、どれを先に標準化すべきかの提案はしないでください ・「すべて標準化すべき」のような総論は書かないでください ・やめてよい作業の提案はしないでください

往復1回目 ― AIが「全部」を提案した

AIの初稿

抜き出しは正確だった(Bさん18件、Aさん6件、Cさん4件、計28件)。ただし末尾に「28件すべてについて手順書の作成を推奨します。優先度の高いものから順に…」と続いていた。

ここが問題

28件の手順書は、Bさんには書けません。「すべて」は、何もしないのと同じです。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「提案は不要です。表と件数だけにしてください。」

修正版

表と件数だけになった。Bさんの18件のうち、「締め日前」が11件。

人が最後にやること

Bさんの11件を見て、3人で「Bさんが休んだら締めが止まるか」を1件ずつ答えます。この架空例では、止まるのは4件でした。28件が、4件になりました。

往復2回目 ― 1つ選んで、手順書の骨組み

4件のうち、今月手放す1つを選びます。この架空例では「前受金の按分(前任者のExcel)」。続けて、次のように頼みます。「次の作業について、手順書に書くべき項目の骨組みを作ってください。手順の中身は書かないでください(それはBさんが書きます)。項目名だけです。作業:前受金の按分/何を見て:契約一覧、前月の按分Excel、当月の新規契約/何を出すか:当月の振替仕訳」

AIの初稿

骨組みは出た。ただし「1. 前受金の按分とは(会計上の意義)」という項目が最初にあった。

ここが問題

手順書に「意義」は要りません。Bさんが書く時間が、意義の説明に消えます。手順書は「何を開いて、どこを見て、何をするか」だけでよい。

追加で出した指示

「意義・目的・背景の項目は削除してください。『開くもの』『見る場所』『すること』『できあがりの確認』の4項目だけにしてください。」

修正版

4項目の骨組みになった。「開くもの:契約一覧、前月の按分Excel/見る場所:新規契約の行、契約期間の列/すること:期間列を追加して月額を計算/できあがりの確認:前月の振替後残高と当月の期首残高が全件一致」。

人が最後にやること

Bさんが4項目を埋めます。30分で書ける分量にします。書けたら、来月の月次でCさんがその手順書だけを見てやります。Bさんは横で見るが、手は出しません(ペア)。

往復3回目 ― ペアでやるときのチェックリスト

最後に、次のように頼みます。「来月、Cさんがこの手順書を見てやり、Bさんが横で見ます。Bさんが『見る側』として確認する項目のチェックリストを、5項目以内で作ってください。」

AIが出したチェックリスト

見る側チェック:□ Cさんが手順書だけで「開くもの」を全部開けたか □ 「見る場所」で迷った箇所はどこか □ Bさんが口を出したくなった箇所はどこか(そこが手順書に足りない) □ できあがりの確認が一致したか □ 手順書に書き足す項目

人が最後にやること

Bさんが口を出したくなった箇所を、手順書に書き足します。口を出したくなった箇所が、属人化の正体です。2か月目にCさんが一人でできたら、その作業は手放せました。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 本人が「自分しかできない」を認めない … 「できる人」列を、本人以外の2人に先に埋めてもらいます。
  • 「止まる」が4件より多い … それでも1つずつ。今月1つ、来月1つ。1年で12件。
  • 手順書を書いてもCさんができない … 手順書が悪いのではなく、「見る場所」の判断が手順書に書けていません。その判断を判断メモの型(事実・判断・理由・次回)で残します。
  • ペアでやる時間がない … 締め日前でない作業から始めます。締め日前の作業は、時間があるときにやります。
  • 「やめる」に見える作業が出てきた … すぐにやめません。出力を誰が使っているかを1か月追います。誰も使っていなければ、やめる(連作④へ)。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 「できる人」列が、できない側の申告で埋まっているか。
  2. 「休んだら締めが止まる」作業の数が、3人で一致しているか。
  3. 今月選んだ1つについて、手順書が4項目で書けたか。30分で書けたか。
  4. 翌月、Cさんが手順書だけでできたか。Bさんが口を出した回数は何回か。0回になったら、手放せました。

7. 注意点

棚卸し表には人名が入ります。AIに貼るときはA・B・Cにします。どこまで渡してよいかは社内ルールで確認してください。
「できる人」は実態です。「教えればできる」を含めると、属人化が見えなくなります。
1つずつ。一度に全部やろうとして失敗した経験があるなら、その経験が正しい。
手放すことは、その人の価値を下げることではありません。締めが止まらなくなることで、その人が休めるようになります。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 「Bさんが休んだら締まらない」が、「止まる作業は4件、うち1件は今月手放した」という具体的な状態になります。
  • 手順書が、「全部書け」ではなく「今月1つ」で積み上がります。
  • ペアでやることで、手順書に書けない判断が見えます。
  • 1年後、締め日前の属人化がほぼなくなっています。急がないほうが、結局早い。
明日の仕事で試すこと
  • 棚卸し表に「できる人」列を足し、自分の作業だけ埋める(自分しかできない作業に印)
  • 印のついた作業のうち、「自分が休んだら締めが止まる」ものを数える
  • そのうち1つを選んで、「開くもの・見る場所・すること・できあがりの確認」を書く

応用 ― 難易度を上げる場合

棚卸し表がまだない場合は連作①月次の作業を「誰が・いつ・何を見て・何を出すか」で棚卸しするから。手放した先で、締めのどこが詰まっているかを見るのが連作③月次のどこが詰まっているかを見つける。手順書に書けない判断は今月やった判断を、来月の自分が読めるメモにするの型で残します。