契約書・領収書の一覧から、印紙の要否を税理士に確認する候補を拾う
今月作成・受領した契約書と発行した領収書の一覧から、人が決めた拾い方(文書の種類・金額・紙か電子か)に当てはまる文書をAIに抜き出させ、確認済み一覧で消し込んだ新規分だけを税理士に確認する方法です。要否・金額は国税庁の公表資料の原文と税理士、AIには判定させません。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。契約書は法務と各部門が作り、領収書は経理が発行します。印紙は、気づいた人が貼っています。
- 去年、業務委託の契約書に印紙が貼られていなかったと、税理士に指摘された。契約を結んだ部門は「印紙が要るとは思わなかった」。
- 「どの文書に印紙が要るか」を、経理の中で1人だけが何となく知っている。その人が見ていない契約書は、素通りする。
- 電子契約が増えた。電子なら要らないと聞いた気がするが、誰も確かめていない。
- 領収書を経理が発行するとき、金額によって貼ったり貼らなかったりしている。基準は、その人の記憶。
要否と金額は、国税庁の公表資料と税理士の話。この記事でやるのは、文書の一覧から「印紙が要りそうな文書」を候補として拾い、新規分だけを税理士に確認することです。源泉徴収の候補拾いと同じ型です。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 今月の文書の一覧を作る … 契約書(法務の契約台帳から:文書の種類/相手記号/金額/紙か電子か/作成日)、領収書(経理の発行記録から:金額/紙か電子か)。
(b) 候補の拾い方を、人が決めておく … 「文書の種類が契約書・覚書・注文請書のもの」「一定金額以上の領収書」「紙のもの」など。拾い方は税理士と相談して決める。
(c) AIに、(b)に当てはまる文書だけを拾わせる … 判定はしない。
(d) 確認済み一覧(同じ種類・同じ相手・同じ形で税理士が回答済み)で消し込み、新規だけ税理士に聞く … 人。
印紙の要否と金額。AIに「この契約書に印紙は必要ですか」と聞くと、文書の種類と金額から、もっともらしい答えと金額が返ってきます。しかし、文書の内容(何を約束しているか)で扱いが変わり、法令も改正されます。要否・金額は国税庁の公表資料の原文と税理士。それから、拾い方(b)を決めるのも人(税理士と相談して)。AIに任せるのは、決めた拾い方に当てはまる文書を出すまで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 契約台帳と領収書の発行記録から、人が決めた拾い方に当てはまる文書を抜き出す
- 確認済み一覧と突き合わせ、今回新たに確認が要る文書だけを出す
- 税理士に送る確認文の下書き(文書の種類・金額・紙か電子か・内容の要約は文書の題名まで)
- 拾い方の条件に「文書の種類が空欄」の文書を別に出す
- 拾い方の条件(税理士と)
- 文書の内容の確認(題名だけで分からないもの)
- 印紙の要否・金額(税理士)
- 確認済み一覧の更新と、貼付・納付の実行
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 文書の一覧と確認済み一覧
今月の契約台帳(文書の種類/相手記号/金額/紙・電子/作成日/題名)、領収書の発行記録(金額/紙・電子/発行日)、確認済み一覧(文書の種類/相手記号/紙・電子/税理士の回答/回答日)。相手名は記号、金額は千円単位。
往復1回目 ― AIが要否と金額を書いた
表に「印紙:要(○○円)」「不要(電子契約のため)」の列が付いていた。
要否も金額も判定で、「電子なら不要」も一般論です。文書の内容と、その年の法令に照らして正しいかは、AIには確かめられません。この列が残ると、担当者が「AIが不要と言っているから貼らない」になります。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『印紙』の列と、要否・金額・電子に関する記述をすべて削除してください。候補の表だけにしてください。」
候補11件。うち6件は確認済み一覧に一致(去年回答済みの同じ相手・同じ種類)。新規は5件。③の「種類が空欄」が2件。
新規5件の文書の題名と内容を見て、税理士に送ります。この架空例では、1件が業務委託の変更契約で、去年指摘された種類の文書が、今年は税理士に確認する前に止まりました。回答は確認済み一覧に、回答日つきで書きます。
往復2回目 ― 「種類が空欄」の文書
③の2件について、「題名から判断すると、1件は秘密保持契約、1件は覚書と考えられます」と付いていた。
題名からの推測としては参考になりますが、種類は文書を開いて人が確かめるもので、推測で台帳を埋めない。特に「覚書」は内容によって扱いが変わり得ます。
「推測を削除し、③は『種類:空欄』のままにしてください。」
2件が「空欄」のまま別に列挙された。
2件を開いて種類を確かめ、法務の契約台帳に種類を書いてもらいます。「空欄」は、台帳の入力のルールがないから生まれます。法務に「種類の欄を必須に」と頼みます。来月から③は減ります。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 契約台帳に載っていない契約がある … 各部門が個別に結んだもの。経費の支払先一覧から逆に探します(リース契約の棚卸しと同じ)。
- 紙か電子かが台帳に書いていない … 列を足してもらいます。電子でも「印刷して押印した」場合があるので、実態を聞きます。扱いは税理士。
- 税理士の回答が「内容による」 … その条件を確認済み一覧の備考に書きます。次回、同じ種類でも内容が違えば聞き直します。
- AIがまた要否を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 候補の表に、要否・金額・「電子なら不要」の記述が残っていないか。
- 新規の候補について、税理士に確認し、回答を確認済み一覧に回答日つきで書いたか。
- 「種類が空欄」の文書が、先月より減ったか。
- 印紙の貼り漏れが、税理士の事後指摘ではなく、作成時に見つかるようになったか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「印紙が要るかも」と気づく人が1人から、月次の候補拾いの仕組みになります。
- 税理士への確認が、月に数件の新規だけになります。
- 契約台帳に「種類」「紙・電子」が入り、拾い方が効くようになります。
- 確認済み一覧が育ち、同じ種類の文書で毎回迷わなくなります。
- 今月の契約台帳を開き、「文書の種類」が空欄の行を数える
- 種類が「契約書」の行を3件選び、印紙が貼られているかを現物で見る
- 貼られていないものがあれば、それが税理士に聞く最初の1件
応用 ― 難易度を上げる場合
同じ「候補を拾って税理士に聞く」型は支払う前に「源泉徴収が要りそうな支払」を候補として拾うと共通です。契約台帳の整備は新しいリース基準に向けて、契約書からリースを含む契約の台帳を作ると同じ台帳が使えます。税務調査で契約書を求められたときは税務調査の資料依頼リストを、所在・担当・期限の表にするへ。