月次決算 › 引当・経過勘定活用案

仮払金・仮受金の残高を、発生日・相手・理由つきの一覧にして精算候補を出す

仮払金・仮受金の残高明細を、発生日/相手/発生時の理由/担当/経過月数の一覧にし、「3か月を超えたもの」「理由が書かれていないもの」「同じ相手で仮払と仮受が両方あるもの」をAIに出させる方法です。整理と抽出はAI、精算の中身(どの科目に振り替えるか)と相手への確認は人、科目の判断はAIにさせません。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。仮払金(出張の前渡し、内容未確定の支払)と仮受金(内容不明の入金、精算待ちの受取)が、月末に残ります。

  • 仮払金の残高明細に、1年前の出張前渡しが残っている。本人は精算したつもりで、仕訳が仮払金を消していない。
  • 仮受金に、相手不明の入金が半年前からある。営業に聞いたが、返事がなく、そのまま。
  • 「なぜ仮払にしたか」が、仕訳の摘要にない。精算しようにも、何の支払だったか分からない。
  • 監査法人から「仮払金・仮受金の内訳と精算の見込み」を聞かれて、明細を印刷して渡した。見込みは答えられなかった。

どの科目に振り替えるかは、内容を確かめた人が決めること。この記事でやるのは、残高を理由つきの一覧にし、精算すべきものを月次で出すことです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 残高明細を出す … 仕訳番号/発生日/相手記号/金額/摘要/担当。
(b) 各行に「発生時の理由」「精算の予定(誰が・いつ)」を書く … 人。摘要から分かるものはAIが転記。
(c) 3か月超/理由が空欄/同じ相手で仮払と仮受が両方/金額が同じで符号が逆(相殺されるべき)を出す … AI。
(d) 出た行を、担当者・営業に確認し、精算する … 人。
(e) 精算できないものは、上司と扱いを決める … 人。

ここはAIを使わない

精算の仕訳(どの科目に振り替えるか)と、精算できない残高の扱い。AIに「この仮払金はどの科目に振り替えるべきか」と聞くと、摘要から科目を当ててきますが、それは内容を確かめた人が決めることです(科目の候補出しの考え方)。精算できない残高をどうするかは上司と、金額が大きければ監査法人と。AIに任せるのは、一覧の整理と、精算候補の抽出まで。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 残高明細を一覧の型に整え、摘要から読み取れる理由を転記する(読み取れないものは空欄)
  • 経過月数を計算し、3か月超・理由空欄・同じ相手の仮払と仮受・相殺候補を出す
  • 担当者・営業への確認文の下書き
  • 監査法人に渡す「内訳と精算の予定」の一覧の形に整える
人が判断する
  • 発生時の理由(担当者に聞く)と精算の予定
  • 精算の仕訳(科目)
  • 相手不明の入金の扱い(営業・上司)
  • 精算できない残高の扱い(上司・監査法人)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 残高明細

仮払金・仮受金の残高明細(仕訳番号/発生日/相手記号/金額/摘要/担当の職位)。相手は記号、金額は千円単位。先月の一覧があればそれも。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。相手は記号、担当は職位、金額は千円単位。科目の判断はAIにさせません。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理担当です。仮払金・仮受金の残高を理由つきの一覧にし、今月精算すべきものを見つけたいと考えています。読み手は私・上司・監査法人です。 【事実/入力】 ・以下に、仮払金・仮受金の残高明細(仕訳番号/発生日/相手記号/金額/摘要/担当の職位、千円単位)を貼ります ・以下に、先月の一覧(理由と精算の予定を書き足したもの)を貼ります ・精算の仕訳と、精算できない残高の扱いは、私と上司が決めます 【依頼】 ①残高明細を一覧(仕訳番号/科目/発生日/経過月数/相手/金額/理由/精算の予定/担当)に整えてください。理由は摘要と先月の一覧から転記し、読み取れないものは空欄にしてください ②次を出してください:経過3か月超/理由が空欄/同じ相手に仮払と仮受の両方がある/金額が同じで符号が逆(相殺の候補) ③②の各行について、担当者または営業に聞く質問文を1行添えてください 【出力の型】 ①表 ②表:種類/仕訳番号/相手/金額/経過月数 ③表:仕訳番号/質問文 【禁止事項】 ・理由を推測して埋めないでください(空欄は空欄のまま) ・精算の科目や仕訳を書かないでください ・私が貼っていない残高を足さないでください

往復1回目 ― AIが理由と科目を埋めた

AIの初稿

①の「理由」が空欄のはずの行に「(出張の前渡しと推定)」「(顧客からの前受と思われる)」と入り、「精算先の科目:旅費交通費」の列まで付いていた。

ここが問題

理由の推定が入ると、担当者に聞く前に「そうそう」で流れます。科目は、内容を確かめた人が決めること。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「( )書きの推定を削除して空欄に戻し、『精算先の科目』の列を削除してください。」

修正版

①は仮払金14件、仮受金6件。②は「3か月超 9件」「理由空欄 5件」「同じ相手に両方 1組」「相殺候補 1組」。

人が最後にやること

③の質問文を担当者と営業に送ります。この架空例では、1年前の出張前渡しは精算済みで仕訳が仮払金を消していなかった(仕訳の修正)、相手不明の入金は別の顧客の前受だった(営業が確認)。理由が分かったものから、科目を決めて精算します。

往復2回目 ― 「同じ相手に仮払と仮受」

AIの初稿

②の「同じ相手に両方」は、相手Pに仮払 300 と仮受 300。「相殺して精算可能です」と付いていた。

ここが問題

同じ相手・同じ金額の抽出は、これが見たかったもの。「相殺可能」は判断で、仮払300が立替、仮受300が別件の入金なら、相殺すると両方の中身が消えます。

追加で出した指示

「『相殺可能』の記述を削除し、事実の表だけにしてください。」

修正版

表だけになった。

人が最後にやること

相手Pの2件を調べると、同じ取引の前渡しと返金で、相殺してよいものでした。ただし、それは調べたから言えること。精算の仕訳を入れ、一覧から消します。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 摘要に何も書いていない … 今月から、仮払・仮受の仕訳の摘要に「理由と精算予定」を書く運用にします。過去分は担当者に聞くしかない。
  • 担当者が退職していて理由が分からない … 「理由不明(担当退職)」と書き、金額と上司の判断で扱いを決めます。監査法人にも伝えます。
  • 相手不明の入金が精算できない … 営業・上司と扱いを決めます。長く残すほど分からなくなるので、期限を決めます。
  • AIがまた理由や科目を書く … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. 一覧の理由が、すべて担当者に確かめたものか(AIの推定が残っていないか)。
  2. 「3か月超」の全件について、精算するか、扱いを決めたか。
  3. 今月の残高が先月より減ったか。新規の仮払・仮受に理由と精算予定が書いてあるか。
  4. 監査法人の「内訳と精算の見込み」に、一覧で答えられたか。

7. 注意点

仮払金・仮受金の明細には相手と担当者が入ります。相手は記号、担当は職位、金額は千円単位。社内ルールで確認してください。
理由と科目はAIに書かせません。担当者に聞き、内容を確かめた人が決めます。
精算できない残高の扱いは、上司と(金額が大きければ監査法人と)。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 「半年前から減らない残高」が、理由と精算予定つきの一覧になります。
  • 3か月超の残高が、毎月の抽出で精算に回ります。
  • 新規の仮払・仮受に理由が書かれ、来月の「理由空欄」が減ります。
  • 監査法人への内訳の説明が、一覧を見せる1分になります。
明日の仕事で試すこと
  • 仮払金の残高明細で、いちばん古い1件を選ぶ
  • 「なぜ仮払にしたか」を摘要から読み取れるか見る
  • 読み取れなければ、担当者に聞く。それが一覧の最初の「理由」

応用 ― 難易度を上げる場合

相手不明の入金は入金があったが、どの請求か分からないとき、精算の科目に迷ったら経費の科目に迷ったとき、自社の過去仕訳から候補を出すへ。前受金の管理は前受金の残高を、契約ごとの「いつ売上になるか」の一覧にして毎月消し込むと同じ「残高を理由つきで管理する」型です。