税務調査で聞かれた質問・答えた内容・出した資料を、テーマ別の記録にして次回と税理士に備える
税務調査の期間中に受けた質問と、経理・税理士が答えた内容、提出した資料を「日付/テーマ/質問の要旨/回答者/回答の要旨/提出資料の名前/宿題」の1行ずつの記録にし、「宿題が残っている質問」「同じテーマで繰り返し聞かれた質問」「回答の要旨が空欄の質問」をAIに出させ、調査の終盤と次回の調査に備える方法です。整理と抽出はAI、回答の内容は税理士と経理責任者、資料の提出の判断は責任者。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。税務調査が入り、資料依頼は所在・担当・期限の表で回しています。資料は出せる。問題は「質問と回答」の側です。
- 調査官に「先日の質問の件は?」と言われ、誰が何と答えたか分からない。その場にいた人の記憶だけ。
- 同じテーマ(外注費の実態、交際費の区分)を、日を変えて何度も聞かれる。前に答えた内容と今日の答えが食い違うと困る。
- 「確認して後日お答えします」と言った宿題が、調査の終盤に山になる。
- 税理士に相談するとき、「何を聞かれて何と答えたか」を口頭で伝えている。伝わりきらない。
回答の内容は税理士と責任者の話。この記事でやるのは、質問と回答と提出資料を1行ずつ記録して、調査の間と次回に「何を聞かれ、何と答えたか」を揃えることです(監査役の質問一覧の税務調査版)。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 記録の型を決める … 日付/テーマ(科目や取引の種類)/質問の要旨/回答者(経理・税理士、職位)/回答の要旨/提出資料の名前と提出日/宿題(あり・なし・回答日)/税理士への相談(済・未)。
(b) 調査の日ごとに、その日のうちに1行ずつ書く … 同席した経理担当。
(c) 毎日の終わりに、①宿題が「あり」のまま回答日がない質問、②同じテーマで2回以上聞かれた質問(前の回答の要旨つき)、③回答の要旨が空欄の質問、④税理士への相談が「未」の宿題、を出す … AI。
(d) ①④を税理士と責任者で確かめ、回答を決める。②は前の回答と揃える … 税理士と責任者。
(e) 調査が終わったら、記録をテーマ別にまとめ、次回の調査と、日々の処理の見直しに使う … 責任者と税理士。
回答の内容を作ること、資料を出すかどうか、税法の解釈。記録は「聞かれた・答えた・出した」の事実で、次に何と答えるかは税理士と責任者が決めます。AIに「この質問にどう答えるべきか」を聞きません。それから、取引先名・金額・調査官の名前はAIに渡しません。記号と要旨だけ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- その日の記録(要旨)を型に沿って整える
- 宿題が残る質問、同じテーマの繰り返し、回答の要旨が空欄の質問を出す
- テーマごとの質問の件数と、初めて聞かれた日の一覧
- 税理士に相談するときの1枚(宿題と繰り返しのテーマ)の書式
- 回答の内容(税理士と経理責任者)
- 資料を出すかどうかと出し方(責任者と税理士)
- 宿題の対応(税理士と責任者)
- 調査後の処理の見直し(責任者と税理士)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― その日の記録の要旨
その日に聞かれた質問と答えた内容を、同席者が要旨で書く(取引先は記号、金額は規模、調査官は「調査官」)。これまでの記録の一覧。提出した資料そのものは渡しません。名前だけ。
往復1回目 ― AIが「回答案」を書いた
②で宿題が5件。そのうち「外注先K3への支払の実態」について、「契約書と成果物、支払の記録を提示すれば実態を説明できます」と回答案が付いていた。
5件の抽出は見たかったもの。「提示すれば説明できる」は回答案と資料の提出の判断で、税理士と責任者が決めることです。禁止事項に書いていてもこうなります。
「回答案と資料の提示に関する記述を削除し、②は表だけにしてください。」
①は今日の質問が9件。②は宿題5件(うち2件は初日から)。③は「外注費」が3日連続、「交際費」が2回。④は税理士への相談が未のものが3件。
その日の夕方、④の3件を税理士に送ります(記録の表をそのまま)。回答は税理士と責任者が決め、翌日の回答者を決めます。③の外注費は、3日分の回答の要旨を並べて、食い違いがないかを責任者が確かめます。
往復2回目 ― 「回答の要旨が空欄」
①で回答の要旨が空欄の質問が2件。AIは「同席者の記憶から補完しました」として、要旨を埋めていた。
「記憶から補完」は、AIには記憶がないので、推測で埋めたということです。空欄は空欄で、同席者に聞く。埋まった記録は、答えていないことを答えたことにします。
「補完した要旨を削除し、空欄に戻してください。」
2件が空欄に戻った。
同席者に聞くと、1件は「税理士が答えた」(要旨を税理士に確認)、1件は「その場では答えず、宿題にした」。宿題に直します。記録は事実だけ。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 調査が長引いて記録が増える … テーマ別にシートを分けます。②③④は毎日、テーマ別のまとめは週1回。
- 調査官の質問の意図が分からない … 記録には質問の要旨だけを書き、意図の推測は書きません。意図は税理士と考えます。
- 税理士が同席しない日がある … その日の記録を夕方に税理士に送り、翌日の前に確認をもらいます。記録があるから送れる。
- AIがまた回答案や補完を書く … 削除・戻す。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 調査の日ごとに、質問がすべて記録に入っているか。調査官に「先日の件」と言われて記録にない、がないか。
- 宿題すべてに、税理士への相談と回答日があるか。
- 同じテーマの回答が、日をまたいで食い違っていないか。
- 記録に、AIの回答案や補完が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「先日の件は?」に、記録の1行で答えられます。
- 同じテーマの回答が、日をまたいで揃います。
- 宿題が終盤に山にならず、毎日税理士と片づきます。
- テーマ別の記録が、次回の調査と、日々の処理の見直しの元になります。
- 前回の税務調査で聞かれたことを、思い出せるだけテーマで書く
- そのうち「後日回答」にしたものがあったかを思い出す
- 思い出せなければ、それが次回、初日から記録を残す理由
応用 ― 難易度を上げる場合
資料依頼の管理は税務調査の資料依頼リストを、所在・担当・期限の表にする、監査役の質問は監査役からの質問と回答を、テーマ・回答者・根拠資料つきの一覧にして次回に備えるへ。電子データの所在は電子取引のデータが「実際にどこに、どう残っているか」を棚卸しする。