「AIに何を渡したか」の記録を四半期ごとに棚卸しして、渡してはいけないものが渡っていなかったかを確かめる
作業ごとに残している「AIに何を渡したか」の記録(作業/渡したものの種類/置き換えの有無/確認者)を四半期ごとに集め、ルールで「渡してはいけない」とされている種類が記録に出てきていないか、「置き換えあり」なのに置き換えの手順が存在しない資料の種類はないか、記録のない作業がないかをAIに出させ、責任者が確かめて記録を残す方法です。集計と照合はAI、実際に渡ったかの確認は責任者が本人に聞いて、対応の判断は責任者。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。AIに何を渡したかは作業ごとに記録し、ルールの見直しは四半期ごとにしています。記録はある。でも。
- 記録を「渡してはいけないもの」の観点で読み返した人がいない。四半期の見直しは「使い方」の観点で、「渡ったもの」の観点ではない。
- 記録の「渡したものの種類」に、ルールで禁じている種類(個人名つきの給与データ)が書かれていた可能性がある。誰も気づいていない。
- 「置き換えあり」と書いてあるが、その資料の種類には置き換えの手順がない。本人の判断で置き換えたのか、書いただけか。
- 記録のない作業がどのくらいあるかを、誰も知らない。
責める話ではありません。この記事でやるのは、記録を四半期ごとに「渡ってはいけないものが渡っていないか」の観点で棚卸しして、結果を残すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 四半期分の記録(日付/作業/渡したものの種類/置き換えの有無/確認者の職位)を集める … 責任者。
(b) ルールの「渡してはいけないものの定義」と、置き換え手順がある資料の種類の一覧を用意する … 責任者。
(c) ①記録の「渡したものの種類」のうち、ルールの禁止の定義に当たる語を含む行、②「置き換えあり」なのに手順のない資料の種類、③「置き換えなし」で禁止の定義に近い種類、④部員ごとの記録の件数(作業の記録から見て極端に少ない人)、を出す … AI。
(d) ①③は責任者が本人に「実際に何を渡したか」を聞き、渡ってはいけないものが渡っていたら対応を決める … 責任者。
(e) 棚卸しの結果(確かめた件数、見つかったこと、対応)を記録し、次の四半期の見直しに使う … 責任者。
実際に渡ったものを確かめること、対応を決めること。記録の語がルールの定義に当たるかは候補までで、本当に渡ったかは本人に聞きます。対応(ツールの履歴の削除、提供元への連絡など)は責任者。それから、この棚卸しでAIに渡すのは記録の一覧だけ。渡した資料そのものは渡しません。個人名は職位に。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 記録の「渡したものの種類」と、ルールの禁止の定義を照らして候補を出す
- 「置き換えあり」なのに手順がない資料の種類を出す
- 部員ごと・作業ごとの記録の件数の集計
- 棚卸しの結果の記録の書式(確かめた件数/候補/確認結果/対応/日付)
- 候補の行について、本人に実際に渡したものを聞く(責任者)
- 渡ってはいけないものが渡っていた場合の対応(責任者、必要なら情報システム部門と)
- 手順のない資料の種類に手順を作るかどうか
- 記録のない作業への対応(責めずに、記録の型の見直し)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 記録の一覧と定義
四半期分の記録(職位に置き換え)、ルールの「渡してはいけないもの」の定義の本文、置き換え手順がある資料の種類の一覧。渡した資料そのものは渡しません。
往復1回目 ― AIが「違反」と書いた
①で「給与」を含む行が4件。表の下に「これらはルール違反に該当し、早急な是正が必要です」と付いていた。
4件は見たかったもの。「違反」「是正」は断定で、4件のうち「給与計算の結果の集計(人数だけ)」は個人の情報を含まず、定義に当たりません。語が含まれるだけでは分からない。禁止事項に書いていてもこうなります。
「断定の記述を削除し、①は候補の表だけにしてください。」
①は候補4件。②は「置き換えあり」なのに手順がない種類が2つ(稟議の要旨、議事メモ)。③は候補3件。④は職位ごとの件数で、1つの職位が極端に少ない。
①の4件を本人に聞きます。3件は人数の集計だけで問題なし。1件は、個人名の入った給与の一覧をそのまま渡していました。責任者として、ツールの履歴の削除(ツールごとの消し方)と、情報システム部門への報告を決めます。本人を責めず、置き換え手順を一緒に読み直します。
往復2回目 ― 記録が極端に少ない職位
④で1つの職位の記録が四半期で2件。付記に「当該職位はAIをほとんど使っていないか、記録を残していない可能性があり、確認が必要です」とあった。
2件の事実は大事。「記録を残していない可能性」は人への評価に近いもので、その職位は今期に異動してきたばかりかもしれません。
「評価の記述を削除し、④は表だけにしてください。」
表だけになった。
本人に聞くと、使ってはいるが、記録の型が「面倒で」書いていなかったとのこと。記録の型を1行にして書きやすくします(四半期の見直しの議題に)。棚卸しの結果を記録に残します。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 渡ってはいけないものが渡っていた … 責任者が、ツールの履歴の削除、提供元への問い合わせ、情報システム部門への報告を、会社の決まりに沿って行います。本人を責めるより、手順の側を直します。
- 記録の「渡したものの種類」が曖昧(「資料」とだけ) … 種類の選択肢を決めて記録の型に入れます。曖昧な記録は、棚卸しで確かめられません。
- 候補が多すぎて本人に聞ききれない … 定義に当たる語を含む①を優先。③は次の四半期に。
- AIがまた断定や評価を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- ①③の候補すべてに、本人への確認の結果が記録されているか。
- 渡ってはいけないものが渡っていた場合、対応(削除・報告)の記録があるか。
- 「置き換えあり」なのに手順がない資料の種類に、手順が作られたか、作らない理由があるか。
- 棚卸しの結果に、AIの断定や評価が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 記録が、「渡ってはいけないものが渡っていないか」の観点で四半期ごとに読まれます。
- 渡っていた場合に、四半期以内に対応されます。
- 手順のない資料の種類が見え、置き換え手順が育ちます。
- 棚卸しの結果が、監査法人や監査役に「AIの利用をどう管理しているか」を示す記録になります。
- 自分の「AIに何を渡したか」の記録を開き、先月の分を読み返す
- 「渡したものの種類」に、ルールの定義に近い語がないかを見る
- あれば、実際に何を渡したかを思い出す。思い出せなければ、記録の型が粗い
応用 ― 難易度を上げる場合
記録の型はAIに何を渡したかの記録を、作業ごとに残す、置き換え手順はAIに渡す前の置き換え(記号化・丸め・削除)を、資料の種類ごとの手順にするへ。ルールの見直しはAI利用ルールを、四半期ごとに「使った場面・困ったこと・変えること」の一覧で見直す。