セキュリティとガバナンス › 情報の入れ方・機密管理活用案

「AIに何を渡したか」の記録を四半期ごとに棚卸しして、渡してはいけないものが渡っていなかったかを確かめる

作業ごとに残している「AIに何を渡したか」の記録(作業/渡したものの種類/置き換えの有無/確認者)を四半期ごとに集め、ルールで「渡してはいけない」とされている種類が記録に出てきていないか、「置き換えあり」なのに置き換えの手順が存在しない資料の種類はないか、記録のない作業がないかをAIに出させ、責任者が確かめて記録を残す方法です。集計と照合はAI、実際に渡ったかの確認は責任者が本人に聞いて、対応の判断は責任者。

AI操作難易度★☆☆☆☆ 経理財務 実務難易度★★☆☆☆ 使う道具チャット型AI+Excel

1. Before ― 手元はどうなっているか

架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。AIに何を渡したかは作業ごとに記録し、ルールの見直しは四半期ごとにしています。記録はある。でも。

  • 記録を「渡してはいけないもの」の観点で読み返した人がいない。四半期の見直しは「使い方」の観点で、「渡ったもの」の観点ではない。
  • 記録の「渡したものの種類」に、ルールで禁じている種類(個人名つきの給与データ)が書かれていた可能性がある。誰も気づいていない。
  • 「置き換えあり」と書いてあるが、その資料の種類には置き換えの手順がない。本人の判断で置き換えたのか、書いただけか。
  • 記録のない作業がどのくらいあるかを、誰も知らない。

責める話ではありません。この記事でやるのは、記録を四半期ごとに「渡ってはいけないものが渡っていないか」の観点で棚卸しして、結果を残すことです。

2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか

(a) 四半期分の記録(日付/作業/渡したものの種類/置き換えの有無/確認者の職位)を集める … 責任者。
(b) ルールの「渡してはいけないものの定義」と、置き換え手順がある資料の種類の一覧を用意する … 責任者。
(c) ①記録の「渡したものの種類」のうち、ルールの禁止の定義に当たる語を含む行、②「置き換えあり」なのに手順のない資料の種類、③「置き換えなし」で禁止の定義に近い種類、④部員ごとの記録の件数(作業の記録から見て極端に少ない人)、を出す … AI。
(d) ①③は責任者が本人に「実際に何を渡したか」を聞き、渡ってはいけないものが渡っていたら対応を決める … 責任者。
(e) 棚卸しの結果(確かめた件数、見つかったこと、対応)を記録し、次の四半期の見直しに使う … 責任者。

ここはAIを使わない

実際に渡ったものを確かめること、対応を決めること。記録の語がルールの定義に当たるかは候補までで、本当に渡ったかは本人に聞きます。対応(ツールの履歴の削除、提供元への連絡など)は責任者。それから、この棚卸しでAIに渡すのは記録の一覧だけ。渡した資料そのものは渡しません。個人名は職位に。

3. AIに任せること/人が判断すること

AIに任せる
  • 記録の「渡したものの種類」と、ルールの禁止の定義を照らして候補を出す
  • 「置き換えあり」なのに手順がない資料の種類を出す
  • 部員ごと・作業ごとの記録の件数の集計
  • 棚卸しの結果の記録の書式(確かめた件数/候補/確認結果/対応/日付)
人が判断する
  • 候補の行について、本人に実際に渡したものを聞く(責任者)
  • 渡ってはいけないものが渡っていた場合の対応(責任者、必要なら情報システム部門と)
  • 手順のない資料の種類に手順を作るかどうか
  • 記録のない作業への対応(責めずに、記録の型の見直し)

4. 実行 ― AIとのやりとり

準備 ― 記録の一覧と定義

四半期分の記録(職位に置き換え)、ルールの「渡してはいけないもの」の定義の本文、置き換え手順がある資料の種類の一覧。渡した資料そのものは渡しません。

用語:チャット型AIだけで完結する使い方です。渡すのは記録の一覧とルールの定義だけで、AIに渡した資料そのものは渡しません。用語集
最初にAIへ出す指示(そのまま貼って使えます)【場面と読み手】 私は経理部門の責任者です。四半期分の「AIに何を渡したか」の記録を、ルールで渡してはいけないとされているものが渡っていないかの観点で棚卸ししたいと考えています。読み手は私です。 【事実/入力】 ・以下に、四半期分の記録(日付/作業/渡したものの種類/置き換えの有無/確認者の職位)を貼ります(約200件) ・以下に、ルールの「渡してはいけないもの」の定義の本文を貼ります ・以下に、置き換えの手順がある資料の種類の一覧を貼ります ・実際に渡ったものの確認と対応は私が行います 【依頼】 ①記録の「渡したものの種類」のうち、定義に当たる語(個人名、口座、給与など)を含む行を出してください ②「置き換えあり」なのに、渡したものの種類が手順の一覧にないものを出してください ③「置き換えなし」で、渡したものの種類が定義に近い(同じ語を含まないが同じ性質)行を候補として出してください ④確認者の職位ごとの記録の件数と、作業の種類ごとの件数を出してください 【出力の型】 ①:表:日付/作業/渡したものの種類/当たる語/確認者の職位 ②:表:日付/作業/渡したものの種類 ③:表:日付/作業/渡したものの種類/近いと考えた理由 ④:表:職位/件数、および表:作業/件数 【禁止事項】 ・違反である・問題であると断定しないでください(候補と明記) ・特定の職位や人を評価する記述を入れないでください ・記録にない作業を推測で足さないでください

往復1回目 ― AIが「違反」と書いた

AIの初稿

①で「給与」を含む行が4件。表の下に「これらはルール違反に該当し、早急な是正が必要です」と付いていた。

ここが問題

4件は見たかったもの。「違反」「是正」は断定で、4件のうち「給与計算の結果の集計(人数だけ)」は個人の情報を含まず、定義に当たりません。語が含まれるだけでは分からない。禁止事項に書いていてもこうなります。

追加で出した指示

「断定の記述を削除し、①は候補の表だけにしてください。」

修正版

①は候補4件。②は「置き換えあり」なのに手順がない種類が2つ(稟議の要旨、議事メモ)。③は候補3件。④は職位ごとの件数で、1つの職位が極端に少ない。

人が最後にやること

①の4件を本人に聞きます。3件は人数の集計だけで問題なし。1件は、個人名の入った給与の一覧をそのまま渡していました。責任者として、ツールの履歴の削除(ツールごとの消し方)と、情報システム部門への報告を決めます。本人を責めず、置き換え手順を一緒に読み直します。

往復2回目 ― 記録が極端に少ない職位

AIの初稿

④で1つの職位の記録が四半期で2件。付記に「当該職位はAIをほとんど使っていないか、記録を残していない可能性があり、確認が必要です」とあった。

ここが問題

2件の事実は大事。「記録を残していない可能性」は人への評価に近いもので、その職位は今期に異動してきたばかりかもしれません。

追加で出した指示

「評価の記述を削除し、④は表だけにしてください。」

修正版

表だけになった。

人が最後にやること

本人に聞くと、使ってはいるが、記録の型が「面倒で」書いていなかったとのこと。記録の型を1行にして書きやすくします(四半期の見直しの議題に)。棚卸しの結果を記録に残します。

5. エラーと例外 ― うまくいかないとき

  • 渡ってはいけないものが渡っていた … 責任者が、ツールの履歴の削除、提供元への問い合わせ、情報システム部門への報告を、会社の決まりに沿って行います。本人を責めるより、手順の側を直します。
  • 記録の「渡したものの種類」が曖昧(「資料」とだけ) … 種類の選択肢を決めて記録の型に入れます。曖昧な記録は、棚卸しで確かめられません。
  • 候補が多すぎて本人に聞ききれない … 定義に当たる語を含む①を優先。③は次の四半期に。
  • AIがまた断定や評価を書く … 削除。毎回。

6. 検証 ― 正しいとどう言えるか

  1. ①③の候補すべてに、本人への確認の結果が記録されているか。
  2. 渡ってはいけないものが渡っていた場合、対応(削除・報告)の記録があるか。
  3. 「置き換えあり」なのに手順がない資料の種類に、手順が作られたか、作らない理由があるか。
  4. 棚卸しの結果に、AIの断定や評価が混ざっていないか。

7. 注意点

棚卸しでAIに渡すのは記録の一覧だけ。渡した資料そのものは渡しません。個人名は職位に。社内ルールで確認してください。
候補は候補です。本当に渡ったかは本人に聞き、対応は責任者が会社の決まりに沿って決めます。
見つかったことを人のせいにしません。手順と記録の型の側を直します。この活用例の設例は架空です。

8. After ― 翌月以降、何が変わるか

  • 記録が、「渡ってはいけないものが渡っていないか」の観点で四半期ごとに読まれます。
  • 渡っていた場合に、四半期以内に対応されます。
  • 手順のない資料の種類が見え、置き換え手順が育ちます。
  • 棚卸しの結果が、監査法人や監査役に「AIの利用をどう管理しているか」を示す記録になります。
明日の仕事で試すこと
  • 自分の「AIに何を渡したか」の記録を開き、先月の分を読み返す
  • 「渡したものの種類」に、ルールの定義に近い語がないかを見る
  • あれば、実際に何を渡したかを思い出す。思い出せなければ、記録の型が粗い

応用 ― 難易度を上げる場合

記録の型はAIに何を渡したかの記録を、作業ごとに残す、置き換え手順はAIに渡す前の置き換え(記号化・丸め・削除)を、資料の種類ごとの手順にするへ。ルールの見直しはAI利用ルールを、四半期ごとに「使った場面・困ったこと・変えること」の一覧で見直す。