資金繰り表の「予定と実績の差」を毎月記録して、差が出やすい項目と理由の型を作る
月初に作った資金繰り表の予定と、月末の実績を項目ごとに並べ、差の大きい項目と、3か月続けて同じ方向に差が出ている項目をAIに出させ、差の理由を「時期のずれ・金額のずれ・予定になかった」の3つに人が分類して記録し、翌月の予定の置き方を直す方法です。集計と抽出はAI、理由の分類と予定の直し方は財務担当と責任者。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。資金繰り表は月初に作り(シナリオ試算)、税金の納付予定も載せています。月末になると。
- 予定と実績がずれる。ずれるのは当たり前だが、どの項目がどのくらいずれたかを、翌月に持ち越していない。
- 毎月同じ項目がずれている気がする。売上入金は毎月予定より少なく、外注費の支払は毎月予定より遅い。気がするだけで、数えていない。
- 予定になかった支払が出る。出たあとで「予定に入れておけば」を言う。
- 責任者に「来月は大丈夫?」と聞かれて、「たぶん」と答えている。予定の精度を示すものがない。
予定の立て方そのものは別記事の話。この記事でやるのは、予定と実績の差を毎月記録して、差の出やすい項目と理由の型を作り、翌月の予定を直すことです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 月初の資金繰り表(項目/週ごとの予定額)を保存しておく … 人。月末に上書きしない。
(b) 月末に、同じ項目・同じ週の実績を並べる … 人。
(c) 項目ごとに差(額と、予定に対する率)を出し、①差の大きい項目(上位5)、②3か月続けて同じ方向(実績が常に少ない・常に遅い)の項目、③予定になかった実績の項目、を出す … AI。
(d) ①②③の理由を「時期のずれ/金額のずれ/予定になかった」の3つに分類し、1行で記録する … 財務担当。
(e) 翌月の予定を置くとき、②の項目は記録を見て置き方を変える … 財務担当と責任者。
差の理由を決めること、翌月の予定をいくらにするか。「売上入金が予定より少ない」の理由は、顧客の支払の遅れかもしれないし、営業の見込みが強気なのかもしれません。AIに理由を推測させず、担当者が営業や購買に聞いて分類します。それから、実際の金額はAIに渡さず、丸めた金額か率にします。取引先名は出しません(項目名だけ)。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 予定と実績を項目・週で突き合わせ、差の額と率を出す
- 差の大きい項目、3か月続けて同じ方向の項目、予定になかった項目を出す
- 過去の記録から、項目ごとの「理由の分類」の件数を集計する
- 翌月の予定を置くときに見る1枚(②の項目と過去の記録)の書式
- 差の理由の分類(営業・購買に聞いて)
- 翌月の予定の置き方(財務担当と責任者)
- 予定になかった支払を、次からどう予定に入れるか
- 責任者への報告の内容
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 項目・週・丸めた金額
月初の予定と月末の実績を、項目/週/金額(万円単位に丸め)で。過去3か月の記録(項目/差の方向/理由の分類)も。取引先名と実際の金額は渡しません。
往復1回目 ― AIが「理由」と「翌月の額」を書いた
①の上位に「売上入金」(実績が予定より2割少ない)。表の下に「顧客の支払遅延が主因と考えられます。翌月の売上入金の予定は今月の実績水準に下げることを推奨します」と付いていた。
2割少ない、は見たかったもの。「支払遅延が主因」は推測、「実績水準に下げる」は翌月の予定の判断で、実際には大口の入金が週をまたいで翌月初に入っただけでした。禁止事項に書いていてもこうなります。
「理由と翌月の予定に関する記述を削除し、①は表だけにしてください。」
①の上位5項目は売上入金・外注費支払・賞与・システム利用料・仮払金。②で週がずれているのが4項目。③で3か月以上同じ方向が「売上入金(少ない)」「外注費支払(遅い)」の2項目。④で予定になかったのが「システムの追加ライセンス」1項目。
売上入金の差は、営業に聞くと大口1件の週ずれ。「時期のずれ」と分類。外注費の支払が遅いのは、購買に聞くと請求書の到着が遅い。「時期のずれ」。記録に1行ずつ。翌月の予定は、売上入金は入金予定日ベースに変え、外注費は請求書の到着実績の週に置く、と責任者と決めます。
往復2回目 ― 「予定になかった」項目
④の「システムの追加ライセンス」について、「予定に含めるべき項目の管理が不十分です。稟議との連携を推奨します」と付いていた。
予定になかった項目が出たのは、これが見たかったもの。「管理が不十分」は評価、「稟議との連携」は仕組みの提案で、この会社では稟議は予定に反映する運用があり、今回は稟議を通らない少額の購入でした。
「評価と提案を削除し、④は表だけにしてください。」
表だけになった。
「予定になかった」と分類して記録。責任者と、「少額でもシステム関係の購入は情報システム部門から月初に予定をもらう」と決めます。仕組みの話は人が決める。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 月初の予定を月末に上書きしてしまった … 比較できません。今月は諦めて、来月から月初の版を別名で保存します。
- 項目の粒度が粗くて(「その他支払」)差の理由が分からない … 差の大きい「その他」は、翌月から項目を分けます。
- 差がいつも小さく、記録する意味がない気がする … それは予定の精度が高いということ。記録は続けて、責任者に「精度」として示します。
- AIがまた理由や翌月の額や評価を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 差の大きい項目すべてに、理由の分類(3つのどれか)と1行の記録があるか。
- 3か月以上同じ方向の項目について、翌月の予定の置き方を変えたか。変えた翌月に差が減ったか。
- 「予定になかった」項目が、翌月以降は予定に入っているか。
- 記録に、AIの理由の推測や予定額の提案が混ざっていないか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「来月は大丈夫?」に、「この項目は毎月これくらいずれるので、その分を見ています」と答えられます。
- 続けてずれる項目の予定の置き方が変わり、差が減ります。
- 予定になかった支払が、翌月から予定に入ります。
- 記録が、資金繰り担当の引き継ぎで「この会社の予定はここがずれる」を伝える資料になります。
- 先月の月初の資金繰り表が残っているかを探す
- あれば、実績と並べて、差の一番大きい項目を1つ見つける
- その差の理由を「時期・金額・予定になかった」のどれかで言えるか試す
応用 ― 難易度を上げる場合
予定の立て方は資金繰り表の作成を補助し、シナリオ試算を行う、入金の差の分類は入金予定と入金実績の差を、月次で「早い・遅い・分割・過不足」に分けて営業に聞く一覧にするへ。外貨の予定は外貨口座の入出金予定を通貨ごとに並べて、「両替が要る日」と「余る通貨」を出す。