計算書類の作成日程を、取締役会・監査役・監査法人の日付から逆算した表にする
株主総会の日から、招集通知の発送・取締役会・監査役と監査法人の監査・計算書類の確定を逆算し、経理の「いつまでに何を渡すか」を表にする方法です。逆算と表化はAI、各日付は総務・監査役・監査法人に確認した実際の予定を人が入れ、法定の期限や記載事項は扱いません。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。株主総会は6月下旬。計算書類(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)と事業報告を、総務と分担して作ります。
- 毎年、日程が「去年と同じくらい」で進み、最後に詰まる。監査法人の監査が終わらないと監査役の監査が始まらず、監査役の監査が終わらないと取締役会にかけられない。その連鎖を、経理が把握していない。
- 総務から「招集通知の印刷入稿が○日なので、計算書類はその5日前に」と言われて初めて、自分の締切を知る。
- 監査役から「監査の期間はこれだけ必要」と言われた日数を、日程に入れていなかった。
- 去年の日程表はあるが、「予定」だけで「実際にいつ終わったか」が書いていない。去年どこで遅れたかが分からない。
やりたいのは、株主総会の日から逆算して、各関係者の日付と経理の締切を1枚の表にし、去年の実績を横に置くこと。法定の期限や記載事項は、法務・監査法人と。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 固定される日付を集める … 株主総会日、招集通知の発送日(総務)、取締役会(総務)、監査法人の監査報告書の日(監査法人)、監査役の監査報告書の日(監査役)。すべて相手に聞く。
(b) 各日付の間に必要な期間を、相手に聞く … 監査法人「監査に○営業日」、監査役「監査に○日」、総務「印刷入稿から発送まで○日」。
(c) 逆算して、経理が計算書類の案を渡す日を出す … AI。
(d) 去年の実績日付を横に置く … 人。
(e) 経理の中の作業(決算整理・注記の下書き・部長確認)を、その締切から逆算する … AI。
法定の期限と、各手続に必要な日数を決めること。AIに「株主総会の何日前までに計算書類を確定すべきか」と聞くと、法令の一般論で答えます。それが貴社の定款や監査役・監査法人との取り決めに合っているかは、AIには分かりません。日付と日数は、総務・監査役・監査法人・法務に聞いた実際の予定を入れます。AIに任せるのは、聞いた日付から逆算して表にするところまで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 人が集めた固定日と必要期間から、逆算して各締切を出す
- 経理内の作業(決算整理・注記の下書き・部長確認・修正)を、締切から逆算して並べる
- 去年の予定と実績を横に置いた表にする
- 各関係者に「この日程でよいか」を確認する文の下書き
- 固定日と必要期間(総務・監査役・監査法人・法務に聞く)
- 去年の実績日付
- 経理内の作業の順番と担当
- 法定の期限・記載事項(法務・監査法人と)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 日付と日数を集める
総務・監査役・監査法人に、固定日と必要期間を聞きます(メールでよい)。去年の日程表と、去年の実績(各資料の最終更新日やメールの日付)も用意します。
往復1回目 ― AIが「法定の期限」を入れた
表に「法定:株主総会の○週間前までに招集通知発送」「監査役の監査報告は受領から○週間以内」という行が追加され、その日数で逆算されていた。
それは法令の一般論からAIが作った日数で、貴社の定款や取り決めと合っている保証がありません。しかも一般論の日数で逆算すると、総務・監査役から聞いた実際の予定とずれます。法定の期限は法務と監査法人に確認するもので、日程表には「聞いた日付」だけを入れます。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『法定』の行と、その日数による逆算をすべて削除してください。私が貼った日付と日数だけで逆算してください。」
聞いた日付だけの表になった。経理が計算書類の案を監査法人に渡す日は、株主総会の7週間前。
この表を法務と監査法人に見せて、「この日程で法定の期限に問題がないか」を確認します。法定の期限を守っているかの判断は、法務・監査法人。表を作るのは経理。
往復2回目 ― 去年の遅れ
③で、去年は「注記の下書き→部長確認」が予定より6日遅れ、その後の全工程が押していた。「原因:注記の作成に想定より時間がかかったため」と書かれていた。
6日の遅れの特定は、これが見たかったもの。ただし「原因」は去年の資料にはなく、AIが日数から作った文です。実際は、注記に必要な資料が他部署から届かなかったのが原因かもしれません。
「原因の記述を削除し、遅れた区間と日数だけにしてください。」
「注記の下書き→部長確認:予定5日、実績11日、遅れ6日」だけになった。
去年の担当者に、6日の理由を聞きます。この架空例では「関係会社の情報が総務から届くのが遅かった」でした。今年の表に、「関係会社の情報:総務から○日までに」という行を足します。去年の遅れが、今年の締切に変わりました。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 監査法人・監査役から日数の回答がない … 去年の実績日数を仮置きして表を作り、「仮」と書いて確認を求めます。仮のまま進めない。
- 株主総会の日が動く … 表の固定日を変えれば、逆算はやり直せます。AIに「株主総会日を○日に変えて再計算」と頼みます。
- 経理内の作業の日数が読めない … 去年の実績日数を使います。実績がなければ、今年は日付を記録することから。
- AIがまた法定の日数を入れる … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 表の日付と日数が、すべて関係者に聞いたものか。AIの一般論が残っていないか。
- 法務・監査法人に表を見せ、法定の期限に問題がないことを確認したか。
- 去年の遅れた区間について、理由を聞き、今年の表に対策の行を足したか。
- 今年、実績日付を表に記録しているか。来年の「去年の実績」になる。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 経理の締切が、総務に言われて知るのではなく、自分で逆算した表で分かります。
- 監査役・監査法人の必要日数が日程に入り、最後に詰まらなくなります。
- 去年の遅れが、今年の対策の行になります。
- 実績日付を記録することで、来年の表が精度を上げます。
- 今年の株主総会の予定日を総務に聞く
- 去年の計算書類の最終版のファイルの更新日時を見て、「案を渡した日」を推定する
- その2つの日付の間が何週間あるか数える
応用 ― 難易度を上げる場合
計算書類の下書きと去年の確定版の比較は去年の事業報告・計算書類と今年の下書きを比べて、変わった箇所だけ洗い出す、注記の前年比較は注記の前年比較と、改正対応が必要な箇所を洗い出すへ。監査役への月次の報告は監査役への月次報告を、「変わったこと」と「経理が判断したこと」に絞る。締めの詰まりを見る型は月次のどこが詰まっているかを見つけると同じです。